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日本の乳児の10%ほどは、なんらかの食物アレルギーを持つといわれています。一般の人が普通においしく食べている食物が、ある人には「猛毒」になるのが食物アレルギーです。最悪、ショック死します。
赤ちゃんを苦しませたくないと、親は食べ物に敏感になります。しかし医師は「過保護になりすぎるとかえって健康を害する」と警鐘を鳴らしています。食物アレルギーの正しい対策を覚えておいてください。
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3つの新常識を知って!

「乳児の10%が食物アレルギー」これはかなり衝撃的な数字です。しかしそのほとんどは自然に治ります。ところが幼児や学童になっても食物アレルギーに苦しむ子供がいます。
国立成育医療研究センターアレルギー科、大矢幸弘医長は「子供の食物アレルギー対策は変わってきた」と述べています。そのポイントは次の3点です。
①母乳から離乳食への移行を遅らせない
②「子供に食べさせない食材」を増やさない
③食物アレルギーはアトピー性皮膚炎との関係が深い

③は理解しやすいと思います。食物アレルギーもアトピー性皮膚炎も、過度な免疫反応で引き起こされるので、「仲間の病気」というイメージがあるからです。しかしこれもそう単純な話ではありません。後で詳しく述べます。

ママやパパの目線からすると、①はとても抵抗があります。離乳食こそ、「アレルギー反応食物の宝庫」のように感じるからです。離乳食に何を選んだらよいのか、とても悩むと思います。
また②の実行もとても難しいでしょう。アレルギーを引き起こす食物はある程度特定されています。「それさえ食べさせなければいい」親ならそう考えるでしょう。しかしそうではないのです。

0歳と1歳が多い

食物アレルギーを起こす子供の数は、0歳と1歳が最も多いです。国立成育医療研究センターの2015年度の調査では、0歳児は603人、1歳児は752人でした。ところが2歳は304人にまで減ります。10歳では71人となり、1歳児の10分の1となります。
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卵、牛乳、小麦がトップ3

食物アレルギーを引き起こす食材もかなり特定されています。トップ3は卵39%、牛乳22%、小麦12%で、この3品で7割以上を占めます。次いでピーナツ5%、キウイなどの果物4%、魚卵4%、エビやカニなどの甲殻類3%となっています。
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じんましん、かゆみ、そして死も

じんましんとかゆみが、食物アレルギーの代表的な症状です。その他、口の違和感やくしゃみ、咳、目のかゆみといった「顔」の症状があります。また腹痛や吐き気は重症患者に現れます。
最悪は、アナフィラキシーショックです。血圧低下や意識を失うといった重症に陥ります。すぐに救急車を呼ばないと命にかかわります。救急車でも間に合わない場合があるので、食物アレルギーによるアナフィラキシーショックのリスクがある子供には、ショックを起こしたときに自分で注射を刺せるようにしておかなければなりません。とてもつらい治療です。

食べた方が発症しない

それでママやパパは離乳食を遅らせてしまうのですが、最近の研究では、こうした対応を否定する結果が出ているのです。それは、
①離乳食を遅らせても食物アレルギーの発症を防げない
②いろいろな食べ物を食べた子供の方が食物アレルギー発症率は低い
というものです。

ただし、アナフィラキシーショックを持つ子供が、離乳食によってアナフィラキシーショックを引き起こすことはあります。ですので、いろいろな食べ物を食べさせる場合、「耳かき1杯」から試してください。

またアトピー性皮膚炎を持つ子供は例外です。食物アレルギーを引き起こしやすいことが分かっているので、アトピー性皮膚炎の子供には、離乳食は慎重にならざるを得ません。医師と相談しながら取り組んでください。

食べ物は異物、アレルギーは当然の反応

ではそもそもなぜ、人が生きるために欠かせない食物が、人を攻撃するのでしょうか。それは食べ物は「異物」だからです。体内には、異物を排除する機能が備わっています。それを免疫機能といいます。免疫機能があるから、ウイルスや細菌を殺すことができ、人は生きることができるのです。

しかし人の体は、「異物」の中に「問題のない異物」や「体にとって良い異物」があることを見分ける力があります。それを「免疫寛容」または「学習」と呼びます。つまり栄養価の高い卵に対しては、多くの赤ちゃん体は、一口食べただけで「これは異物だが成長に必要なものだ」と受け入れることができます。
しかし少数の子供の体は「異物だから拒否反応を示そう!」と判断し、じんましんやかゆみを起こしてしまうのです。
つまり子供は、食べることで「学習」するのです。親が子供に卵や牛乳、小麦などを食べさせないことは、まさに「学習」の機会を奪っているのです。
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医師ですら「NGかOKか」は難しい

心配な親は、子供に「食物経口負荷試験」という検査を受けさせることができます。子供に「卵黄1g」「牛乳1滴」「うどん2㎝」を食べさせて、反応を見ます。これは家庭でもできそうですが、絶対にやらないでください。というのは、医師でないと正確にどの食物でアレルギー反応が見られるか判断できないからです。こんな事例があります。

ある医師が子供に血液検査を行い、医師は親に「卵と牛乳と小麦を食べさせないように」と指示しました。しかしその後、親がセカンドオピニオンで別の医者に子供を受診させたところ、この医師は食物経口負荷試験を行ってくれました。
その結果、「牛乳と小麦は食べられる」「卵は黄身は食べられる」「卵の白身も加熱すれば1個分の10分の1まで食べられる」ことが分かったのです。つまりこの親がセカンドオピニオンを受けなかったら、その子は牛乳と小麦という重要な食材を長く食べないで過ごしていたかもしれないのです。
医師ですら、「NG食べ物」と「OK食べ物」の判断ができないことがあるのです。

原因と結果が真逆になった新常識

子供を持つ親の中では長らく「食物アレルギーがアトピー性皮膚炎を引き起こす」と考えられてきました。そのように考える医者も少なくありませんでした。
しかし、最近の研究では、「アトピー性皮膚炎が食物アレルギーの原因になっている」という説が有力であることが示されたのです。

アレルギー性皮膚炎の人は、肌のバリアが弱いので、食物アレルギーの成分が肌に付着しただけで食物アレルギーを引き起こすことが分かったのです。食物アレルギーの成分は、実は空気中の埃の中にも含まれています。また、親が卵料理を作った後に、手を洗わずにアトピー性皮膚炎の子供に触れ、食物アレルギーを引き起こしてしまったケースも報告されています。
つまり「食物アレルギーを引き起こす食物は、口からだけでなく、肌からも入ってくる」ことが分かったのです。

まとめ

食物アレルギーが見つかった子供には、まずスキンケアを行ってください。きちんと医者にかかり、保湿剤の使用方法を教わってください。
そして「食べ物がすべて悪い」という間違った常識は捨ててください。「NG食べ物を科学的に、医学的に探す」これが親が取るべき正しい行動です。

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