今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『子宮が落ちる!出産後の女性に多い「骨盤臓器脱」に新手術!』をご紹介させて頂きます。

下腹部に納まっていなければならない子宮が、膣から落ちる病気があります。「骨盤臓器脱(こつばん・ぞうき・だつ」といいます。子宮だけでなく、直腸や膀胱も体の外にはみ出すことがあります。出産を経験した中高年に多く発症し、排尿や排便に障害が起きて日常生活が大きく損なわれてしまいます。
2016年4月、この病気の新しい手術が医療保険の適用になりました。病気の基礎知識と最新治療法を紹介します。
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臓器が落ちることは不思議ではない

日本医科大学産婦人科の明樂茂夫教授によると、国内の骨盤臓器脱の発症頻度は不明ですが、スウェーデンでは出産経験のある女性の44%がこの病気を発症しているそうです。
女性の骨盤の中には、膀胱、子宮、直腸の3つの臓器が入っています。これら3臓器は膣という「出口」の近くにあります。膣は普段は閉じていますが、出産のときには赤ちゃんの頭が出るほど大きく広がります。ですので、膀胱や子宮、直腸といった赤ちゃんの頭よりかなり小さな臓器が膣からこぼれ落ちることは、物理上なんら不思議なことではないのです。
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ロープとセメントがゆるむ

それでも3臓器が体の外に出ないのは、「ロープ」や「セメント」で支えられているからです。ロープのことを「靭帯(じんたい)」といい、セメントのことを「筋膜」または「骨盤底筋」といいます。
つまり靭帯や筋膜、骨盤底筋が力を失うと、3臓器は膣の内側から外へと落ちていきます。落ちた状態のことを「子宮脱」「膀胱脱」「直腸脱」といい、総合して骨盤臓器脱と呼びます。

ピンポン玉が挟まっている感じ

63歳の女性は、3人の子供を産み、年齢とともに太ってきました。骨盤臓器脱と診断される2年前に、初期症状が現れました。「股の間にピンポン玉のようなものが触れる」と感じました。歩くときにも、股の間に何かがぶら下がっているような違和感が取れません。医師は、骨盤臓器脱の1つ、子宮脱と診断しました。
女性は活発な人でした。それでお腹の中に「腹圧」という圧力が常に生じている状態でした。この腹圧が子宮を押していたのです。
そのほかの症状では、おりものが増えたり、膣からの出血もありました。

排尿・排便障害も

膀胱が落ちる「膀胱脱」では、トイレが近くなったり、逆に排尿しにくくなる症状が現れます。直腸が落ちる「直腸脱」では、排便が滞るといった症状が出ます。骨盤臓器脱によって死亡することはありませんが、著しく生活の質を落とします。
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原因ははっきりしている

この病気の原因はかなり限定されます。次の通りです。
・出産経験
・加齢
・重いものを持つことが多い
・肥満
・咳をすることが多い
・便秘

「出産」により、3臓器を支えている靭帯や筋膜、骨盤底筋が傷ついてしまうのです。若いうちは支えることができていても、「加齢」とともに支える力が衰えてしまいます。
「重いものを持つこと」や「咳」は腹圧を急激に高めますし、「便秘」でいきむことが多くなってもお腹の圧は高まります。「肥満」の人は骨盤を含む下半身に耐えず負荷がかかっているので、骨盤臓器脱を誘発しやすいのです。
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特別な体操をしよう

これを治す薬はありません。
治療は下記の3つになります。
①生活を見直す
②「ペッサリー」という装具を膣の中に装着する
③手術

①の生活の見直しでは、肥満、咳、便秘につながる生活をあらためることが必要です。ダイエット、咳の治療、そして食物繊維を多く摂って自然なお通じを心掛ける必要があります。
また高齢の女性が重い荷物を持つ仕事をしていたら、残念ながらそういった仕事はあきらめた方がよいでしょう。
また冒頭で紹介した明樂教授がすすめるのは「骨盤底筋体操」です。名前は難しそうですが、簡単です。3臓器を支えている筋肉の骨盤底筋を鍛えるのです。
仰向けに寝ながら、膝を立ててお尻を空中に浮かせます。これを1日30回やってください。次に椅子に座ったまま、肛門と膣を閉めて5秒数えます。これも1日30回程度でかなり効果が期待できます。

ペッサリーは負担が小さい

②ペッサリーという装具は、直径10センチ程度の「太い輪ゴム」です。これを膣の中に挿入し、膣を縛るのです。体への負担が小さい治療法です。手術を回避できるのであれば、この方法が良いでしょう。
ただこの治療には、違和感、炎症、おりもの、出血といった副作用があります。3カ月に1回程度、ペッサリーを交換する必要もあります。

最新手術はこれ!

③下仙骨膣固定術(ふくくうきょう・か・せんこつ・ちつ・こていじゅつ)」といいます。

「腹腔鏡」手術は、お腹を切らない手術です。切る代わりに、お腹の4カ所に穴を開けて、腹腔鏡という器具を挿入します。お腹を切るより手術後の回復が早く、入院期間が短くて済むメリットがあります。
子宮の上半分を切除し、子宮に「網」を被せます。そしてその網の先端を「仙骨」という腰の骨に取り付けるのです。子宮がハンモックのように網でぶら下がっている状態になるので、膣の下に落ちることがないのです。
手術後の違和感が少ないことに加えて、これまでの手術より効果が確実で、痛みも少ないというメリットがあります。ただ新しい手術なので、2016年7月現在では、この手術ができる医療機関は限られています。

まとめ

骨盤臓器脱は、とても恥ずかしく感じる病気です。それで我慢してしまう女性が多いです。しかし病気に恥ずかしさは必要ありません。違和感を持ったらすぐに産婦人科にかかってください。

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