今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『 女性に多い「橋本病」とは?(慢性甲状腺炎)』をご紹介させて頂きます。

橋本病の「橋本」って人の名前?

橋本病は、海外でも「Hashimoto’s thyroiditis」という呼び名が定着している甲状腺の病気です。何年もかけてゆっくりと甲状腺が炎症を起こします。別名「慢性甲状腺炎」ともいいます。

この病気は、九州大学の外科医であった橋本策(はしもと・はかる)博士が、1912年(大正元年)、ドイツの外科雑誌に発表した「甲状腺リンパ節腫症的変化に関する研究報告」のなかで紹介したことにより、のちにアメリカで「Hashimoto’s thyroiditis(橋本病)」と命名され、国際的に評価されるようになります。

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「甲状腺」はどこにあって? 何をする?

甲状腺は「のど仏」のすぐ下の「気管」の手前にある小さな臓器です。正面から見ると、羽根を広げた蝶のような形をしています。

甲状腺ホルモンの役割は、心臓や肝臓、腎臓、脳など全身の臓器に作用して代謝を盛んにするなど、大切な作用を持つホルモンです。食べ物(おもに海藻)に含まれる「ヨウ素(ヨード)」から「甲状腺ホルモン」を作って血液のなかに分泌します。

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手足がむくむ、体重が増えるなどの症状

橋本病は自己免疫疾患の一つです。自己免疫疾患とは、細菌やウィルスなどから体を守るための免疫が、自分の臓器・細胞を標的にしてしまうことで起きる病気の総称です。橋本病では、免疫の異常によって甲状腺に慢性的に炎症が生じていることから、慢性甲状腺炎とも呼ばれます。この慢性炎症によって甲状腺組織が少しずつ壊され、甲状腺ホルモンが作られにくくなると、甲状腺機能低下症が生じます。強いストレスや妊娠・出産、ヨード過剰摂取(海藻類、薬剤、造影剤など)等をきっかけとして免疫異常が起こり、発症するのではないかと考えられています。特に30~40代の女性に発症することが多く、男女比は「約1:20~30」くらいといわれています。

橋本病では、甲状腺が腫れてきて、くびの圧迫感や違和感が生じることがあります。腫れがあっても気管が圧迫されることはなく、呼吸や食事にほとんど影響はありません。のどに多少の違和感がある程度です。

橋本病患者の約70%は、甲状腺機能は正常です。一方、約30%の患者に甲状腺機能の低下が見られ、次のような症状があらわれます。

・皮膚がカサカサする
・顔や手がむくむ
・食欲はないのに体重が増える
・髪の毛が抜けやすい
・寒がりになる
・便秘がちになる
・無気力になる
・疲れやすい

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甲状腺ホルモン濃度が戻れば、運動も旅行もオーケー

これらの症状や「首の前が腫れている」「のど仏の下あたりを触るとゴツゴツした感じがする」など気になるときは、内科・内分泌内科・甲状腺科を受診しましょう。医療機関では、
(1)血液中の甲状腺ホルモン濃度や抗体の検査
(2)甲状腺の超音波検査

などによって、診断が確定します。

甲状腺機能が正常であれば、治療の必要はなく、経過観察が一般的です。甲状腺機能低下が見られたときは、甲状腺ホルモン薬の投与が行われます。

適切な治療を続ければ、次第に血液中の甲状腺ホルモンの濃度は正常になり、症状はとれて、甲状腺の腫れが小さくなります。甲状腺ホルモンの濃度が正常に戻れば、日常生活を送るうえで制限することは特にありません。運動をしたり、旅行を楽しんだりもできるようになります。

【この記事の監修医師】

やまもと内科・外科クリニック
医学博士 山元 弘桜 (やまもと さくら) 先生

〒528-0042
滋賀県甲賀市水口町虫生野中央111

TEL:0748-62-9559

<参考>
やまもと内科・外科クリニック公式ホームページ

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