今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『発症率が低いが、恐い副腎がんとは…』をご紹介させて頂きます。

まず「副腎」という臓器をご存じでしょうか。一般の人の理解は「『腎』の『副』と書くのだから腎臓の近くにある臓器?」ぐらいではないでしょうか。しかも「副腎」の「腫瘍」は、ほとんどが良性です。良性ということは、がん化しない単なる「できもの」という意味なので、大抵は見つかっても治療しません。
つまり「副腎がん」は、マイナーな臓器に生じる、とても珍しいがんなのです。目立たない人が突然怒り狂うような恐さがある、がんなのです。
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どんぐりの帽子

副腎は、腎臓の上に乗っています。例えるなら、腎臓が「どんぐり本体」で、副腎は「どんぐりの帽子」のようです。副腎があまり有名でないのは、血液を運ぶわけでもなく、体内の毒を解毒することもないからです。ただ、地味ながらとても重要な働きをしています。それはホルモンを作る仕事です。

副腎が作っているホルモンは「アルドステロン」「コルチゾール」「デヒドロエピアンドロステロン」「アドレナリン」「ノルアドレナリン」などです。
これらのホルモンは、体の水分を調節したり、血圧を上げたり、体の具合をコントロールするのにとても大切な物質です。
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なぞの病気…

副腎がんの発症率は、50万人に1人です。極めてまれです。女性は男性の2倍程度の発症率です。年齢別では、10歳前後と50歳前後に多いという、これまた珍しい現象が起きています。
副腎がんの原因については、国内がん治療の最高峰のひとつで、国内最初のがん専門病院でもある「がん研有明病院(東京都江東区)」でさえ、そのホームページで「まれながんであり、よくわかっていません」としか記述していません。
それくらい、なぞのがんなのです。

初期症状はない

初期症状はほとんどありません。悪化すると腹痛や便秘、吐き気が頻繁になりますが、このような症状が出るころには、がんは5センチ以上に成長しています。それでも放置していると、発熱、食欲不振、体重減などに襲われます。

なにしろ「がん研有明病院」ですら「まれ」な症例なので、一般の病院の医師が意図して見つけることはまずないでしょう。別の病気の検査を行っていて偶然見つかることがほとんどだそうです。
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手術しかない、しかも危険な手術しかない

副腎がんの治療は、手術しかありません。副腎を摘出します。悪化していると腎臓も一緒に取らなければなりません。腎臓は命に関わる臓器なので、危険な手術になります。
手術のリスクはそれだけではありません。腎臓には血液が集中していて、その近くを切るわけですから、大量の輸血が必要になります。出血多量により手術を中断することもあります。
また、血圧をコントロールするホルモンである「アドレナリン」や「ノルアドレナリン」を作っている場所に触れると、脈拍が大きく乱れたり、ショック状態に陥ることがあります。
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抗がん剤すらない

手術の後は、「ミトタン」という薬の投与や、放射線治療を行う場合があります。ただ「ミトタン」はいわゆる「抗がん剤」ではありません。副腎がんを治療する抗がん剤はまだないのです。
またミトタンには強い副作用があります。食欲不振や吐き気が起きたり、肝臓の機能が低下することもあります。しかも副作用の発生率は80%とかなり高率です。
とにかくそれくらい、治療方法の選択肢が少ないがんなのです。
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ステージ4は1年未満で死亡

国内では症例数が限られるため、副腎がんの5年生存率データはありません。ただ、がん研有明病院は、フランスのデータを公開しています。
ステージⅠ:がんが5センチ以下:60%(治療した人の60%が5年後に生存している)
ステージⅡ:5センチ超:58%
ステージⅢ:周囲に転移:24%
ステージⅣ:遠隔転移:0%(1年未満で死亡)

まだ恐い数字があります。国内でステージⅠやⅡで副腎がんが見つかることは極めてまれなのだそうです。つまり、発見されたときはステージⅢまたはⅣのことが大半だということです。

まとめ

副腎がんは、原因不明、治療は手術しかない、しかも手遅れのケースが大半という、なんともやるせない病気です。どんな病気も残酷ですが、それでも極めて残酷な病気です。

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