今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『なに? どこにある? 意外と知らない「脾臓(ひぞう)」のこと…』をご紹介させて頂きます。

スポンジのように軟らかい「隠れた働き者」

脾臓(ひぞう)は、胃の左側の肋骨のすぐ下にある臓器です。握りこぶしほどの大きさで、コーヒー豆のような形で、スポンジのように軟らかく、約2〜3倍の伸縮幅があると言われています。長さ10cm、幅6.5cm、厚さ2.5cm、重さ100g、が日本人成人の平均的サイズですが、加齢とともに萎縮します。

肺炎球菌やインフルエンザ菌などの感染に対して防御する抗体をつくったり、血液の若さを保ったりするのが、主な働きです。小児期に活躍し、成長するにしだがって、脾臓の仕事は、リンパ節・肝臓・骨髄などに取って代わられます。

そのため、存在感が薄く、馴染みのない臓器であるのかもしれません。しかし、英語表記の「spleen(脾臓)」はもともと「気力・勇気・感情の宿るところ」という意味です。たしかに、気力にあふれた動きは「隠れた働き者」といえるでしょう。
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大事な「3つ」の働き

脾臓は「赤脾髄(せきひずい)」と「白脾髄(はくひずい)」という2種類の組織からできています。赤脾髄には赤血球がたくさんあり、白脾髄はリンパ球の集まりです。脾臓を見ると、暗赤色の赤脾髄のなかに、白い斑点状の白脾髄が散在しています。主な働きは次の3つです。

・古くなった赤血球を壊す
・血小板を貯蔵する
・抗体を作る
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古くなった赤血球を壊す

脾臓は赤血球の状態を監視し、古くなった赤血球を破壊して取り除きます。赤血球は肺から得た酸素を取り込んで、血液循環によって全身を巡り、体中の細胞に酸素を運ぶ役割を担っています。

赤血球の寿命は約120日といわれています。約4ヶ月間のあいだ体を巡り、多くの細胞に酸素を届けています。もともと血小板は、形を自在に変化させながら、毛細血管などの狭い血管を通ります。

ところが、老齢化して古くなった赤血球は柔軟性がなくなり、狭い血管を通ることができなくなります。そうなると、赤脾髄の網目構造によって、古い赤血球は「ろ過」され、最後は処理分解されるのです。毎日約2000億個の古い赤血球が破壊されています。同時に約2000億個の新しい赤血球が誕生しています。脾臓は赤血球を監視することで、血液の若さを守っています。
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血小板を貯蔵する

血小板は、血液に含まれる成分の1つで、出血したときに集って凝固することで傷口をふさぎ止血します。脾臓の赤脾髄には、体内の血小板の約3分1を貯蔵する働きがあります。

出血時以外にも、多くの酸素が必要になるようなとき、たとえば運動時などに、脾臓に貯蔵されている血小板を血液に放出します。
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抗体を作る

脾臓の白脾髄は「リンパ球」と呼ばれる白血球を作っています。リンパ球は、細菌・雑菌・ウイルス・異物・がん細胞などの侵入から体を守るための「特殊なタンパク質(抗体)」を生成します。

脾臓には全身のリンパ球の約4分の1が集まっています。「脾臓は免疫機能の要」といわれるのはそのためです。実際、体内で最大のリンパ器官といえるでしょう。多くのリンパ球によって、細菌や異物をすみやかに処理します。
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脾臓に関する病気

事故やケガなどによって、もし脾臓を摘出しても問題は起こらない、とこれまで言われていました。しかし近年、脾臓を摘出することで、重い感染症にかかるリスクが高まるという事実が見つかったようです。

脾臓は痛みを感じない臓器ですが、炎症を起こすと、腹部の左上や背中が痛みはじめます。痛みのない部位に「痛みがでる」ということは、脾臓がはれて神経を圧迫していると考えられます。できるだけ早く「消化器内科」を受診しましょう。脾臓には次のような大きな病気があります。

<脾腫(ひしゅ)>
脾臓が約2〜3倍に腫れる病気です。呼吸困難を起こすことがあります。

<脾腫瘍(ひしゅよう)>
脾臓に腫瘍ができる病気です。脾腫瘍の約50%は悪性です。