今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『まったくやる気が起きない?「アパシーシンドローム」!?』をご紹介させて頂きます。

勉強や仕事には無気力、でも趣味には積極的

アパシーシンドロームは、別名「無気力症候群」あるいは「意欲減退症候群」と呼ばれる症状です。その人のいちばんの「本業」に対して、慢性的な無気力・無感動・無関心になる状態をいいます。

学生であれば「学業」、社会人であれば「仕事」にまったく身が入りません。学業や仕事をすることの意味が失われ、自ら選んで決めた学校や職場であっても、決定した動機すら分からなくなるといいます。そして「危機感の欠除」もあわられることが多く、症状が長引くと登校拒否や出社拒否に至ることがあります。

一方、趣味や遊び、社会活動、学生であればアルバイトなど、本業以外のことには、これまでどおり関心が高く、熱心で積極的に活動するのが特徴です。うつ病や神経症(不安障害)などのように、明確な病気とは考えられていません。しかし、いつも必ずいくつかの症状があらわれるため、病名に準じた「症候群」として扱われています。
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本人はまったく困っていないのが特徴

無気力の対象が「本業」に限定されているため、アパシーシンドロームであることに本人が気づきにくく、さらに周囲からは「甘えてる」「たるんでる」などと誤解されてしまうことが多いようです。ところが、本人はまったく困った様子もなく、不安・焦り・危機感すらないのが特徴です。

これまでの傾向をみると、アパシーシンドロームは、次のようなタイプの人に突然発症しています。

・物事に、一生懸命まじめに取り組む
・几帳面な性格で、頑張り屋さん
・完璧主義の傾向がある
・白か黒など、価値基準が極端なところがある
・もともと、勝ち負けに敏感な性格である
・どちらかというと、物事を自分で決められない
・挫折や屈辱に対して警戒心がとても強い

したがって、本人が性格的にだらしないわけではないのです。むしろ、だらしない性格と言われてきた人に、アパシーシンドローム患者はほとんどいないといわれています。
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もとはハーバード大学の学生に見られた症状

アパシーシンドロームは、もともとハーバード大学の学生に起こる症状がはじまりです。ウォルターズ教授が、学生の心理状態や行動傾向などを研究して作った概念「スチューデント・アパシー(学生の無気力)」が元になっています。

それは五月病のような症状で、「なんとしても志望校に合格する」という明確な目標を持って熱心に勉強をしていた学生が、入学した途端、生き甲斐を失くして無気力になってしまうものです。

その後の研究で、スチューデント・アパシーは、一部の中高生、新社会人、主婦などにも起こっていることが分かりました。大学生(スチューデント)に限らない、ということで「アパシーシンドローム」という名前が付けられています。現在のところ、特に10代後半~20代前半の男性に多く発症しています。
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「うつ病」と大きく違うところ

アパシーシンドロームは、無気力で無関心で、何をしても楽しくない状態が続いていても、不安や焦り、後悔を感じることがほとんどありません。そこは、うつ病と大きく違うところです。

本人が苦しくないため「他人に分かってほしい」などの助けを求めることもなく、自発的に精神科などの病院で相談する人はごくわずかです。家族や周囲が、異変に気づいて治療を勧めるケースが多いようです。

精神科・神経科・心療内科などで相談ができます。有効な治療薬はないため、カウンセリングなどの精神療法が治療の中心です。「これをすれば治る」という方法はなく、専門医やカウンセラーとともに精神療法を続けるなかで自分を見つめ直し、意欲を取り戻します。時間がかかる人もいるようですが、治らない症状ではありません。諦めず治療を続けましょう。

アパシーシンドローム患者には、生活リズムを崩している人が多いようです。次のようなことに注意して、生活を見直すことも大事です。

・毎朝、自分が決めた時間に起きる
・食事は、三食規則正しく摂る
・1日1回、外に出て体を動かす
・夕食は軽めにして、早く寝る
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アパシーシンドロームは予防できる

アパシーシンドロームは、生活がかわる節目になるとは限りません。(1)物事に一生懸命まじめに取り組む(2)几帳面な性格で頑張り屋さん(3)完璧主義の傾向がある、といったことに自分が当てはまるようなら、日ごろから次のことに気をつけておきましょう。

・最初から大きな目標は立てない
・失敗を気にするより、できていることに注目する
・勉強や仕事のなかにもユーモアを取り入れる
・辛いときにはプライドを脇において、素直に助けを求める
・ときには、家族に甘える

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