心臓の弁の治療に新手術が登場!

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心臓には4つの部屋があり、4つの弁があります。とても複雑な構造をしています。握り拳より少し大きいだけの小さな臓器である心臓が、5リットルもの血液を全身にくまなく送ることができるのは、この構造があるからです。
心臓には様々な「大きな病気」がありますが、そのひとつに弁が壊れる病気があります。弁が開きにくくなったり、閉まりにくくなったりする「弁膜症」です。弁膜症は突然死の原因になりうる恐い病気です。2016年、弁膜症の治療において画期的な治療がスタートしました。患者自身の組織を活用する全く新しい手術で、副作用が小さいのが特徴です。

2016年に治療開始

肺で酸素を吸収した新鮮な血液が、心臓に入るときに最初に通過する弁を「僧房弁(そうぼうべん)」といいます。左心房と左心室の間にある弁です。
新しい手術では、患者自身の組織を使って僧房弁を作ってしまうのです。人工的に作り出した僧房弁を、壊れた本物の僧房弁と交換するのです。
新しい僧房弁の「材料」になる「患者自身の組織」とは、心臓を覆っている「心膜」です。リンゴをビニール袋で包装したとします。リンゴが心臓で、ビニール袋が心膜です。手術で心膜を切り取り、それをシート状にのばした上で、切ったり縫ったりして僧房弁と似た形に作るのです。
この治療を開発したのは、榊原記念病院の心臓血管外科医、加瀬川均医師たちのグループです。2016年から本格的な治療が開始しました。

僧房弁は耐えている

なぜ僧房弁が壊れるのかというと、僧房弁はたえず強い「水圧」にさらされているからです。僧房弁を通過した血液は全身の血管を通過しないとならないので、心臓はものすごい勢いで血液を追い出します。このとき、僧房弁はしっかりと閉じきって、血液の逆流を防がなければなりません。
僧房弁は長年この「水圧」に耐え続けているので、だんだん劣化していきます。劣化の結果、僧房弁の一部が切れたり伸びたりしてしまい、十分に閉じなくなってしまいます。この状態では、全身に向かって心臓から吐き出されるはずの血液が逆流してしまいます。これを「僧房弁閉鎖不全症(そうぼうべん・へいさ・ふぜんしょう)」といいます。
逆に、劣化して僧房弁が固くなって開かなくなる病気を「僧房弁狭窄症(そうぼうべん・きょうさくしょう)」といいます。
いずれも「弁膜症」の仲間です。

発達しすぎた筋肉は危険

弁膜症は血液が全身にうまく流れない病気ですので、そのままだと体がまいってしまいます。そこで心臓は本来の力以上に頑張ってしまいます。心臓は筋肉ですから、筋肉が頑張ると筋肉が大きくなります。それを「心臓肥大」といいます。
筋肉が発達するので良いことのように感じるかもしれませんが、そうではありません。心臓の筋肉が大きくなると、心臓の内側の空間が小さくなってしまうからです。その空間は血液をためておく場所です。空間が狭くなるということは、全身に送る血液量が少なくなるということです。血液量が少なくなるということは、全身に届く酸素の量が少なくなるということです。

恐い病気が目白押し

ですので、弁膜症の患者は、最初に動悸、息切れ、疲れやすいという症状を起こします。悪化すると「心不全」に陥り、最悪「突然死」します。
また、脳の病気も引き起こします。心臓の中で血液が停滞するので、血液が固まりやすくなるからです。そうやってできた血液の塊が脳に届くと「脳梗塞」を起こします。これも死に至る病気です。

中程度までの治療

軽症の弁膜症は、薬で様子を見ます。中程度になるとカテーテルを使って、動きが鈍っている弁を動きやすくします。カテーテルは血管の中に人工の管を通すので、大掛かりな治療といえますが、しかしメスで胸を開く手術よりは体への負担は小さいです。

これまでの手術

カテーテルでも治らないと、開胸手術になります。医師が直接手で心臓の弁に触れるわけですから、心臓が動きっぱなしでは治療できません。そこで血管を人工心肺装置につなげて心臓と肺を止めて手術します。
手術は「弁形成術」と「人工弁置換術」の2つがあります。弁形成術は、痛んだ部分を修復する手術です。人工弁置換術は、修復が不可能な弁を切除して、人工弁に置き換えます。

従来型の人工弁の欠点が大きい

人工弁にはこれまで「機械弁」と「生体弁」がありました。機械弁は金属と炭素繊維で作られたものです。見た目は工業製品のようです。生体弁は牛や豚の組織で作られています。いずれも大きな欠点があります。
機械弁は壊れにくいのですが、血液が金属や炭素繊維に触れると血が固まりやすくなります。ですので、生涯にわたって血液を固まらせない薬を飲み続けることが必要です。
一方で生体弁は血が固まることはないのですが、壊れやすいのです。7~15年で交換しなければなりません。つまり60歳で生体弁に置き換える手術を受けたら、早ければ67歳、遅くても75歳のときに再びあの大手術を受けなければならいのです。
つまり、機械弁も生体弁も大きなデメリットが残っているのです。

耐久性が増して薬の心配もない

これに対して冒頭で紹介した最新の「患者自身の心膜で作った人工僧房弁の置換手術」は、機械弁と生体弁にデメリットを解消しました。弁の劣化がなく耐久性が増しています。血液を固まらせない薬を飲む必要もありません。
ただこの治療はまだ「先進医療」という段階なので、誰でも受けられるわけではありません。受診できる条件は次の通りです。
・僧房弁閉鎖不全症であること
・手術が必要なほど悪化していること
・弁形成術では効果が期待できない
・16歳以上70歳未満

治療を受けられる病院も限られています。2016年7月現在では、榊原記念病院だけです。ただ近く、大阪大学、京都府立医科大学、東京慈恵会医科大学慶應義塾大学東北大学でも受けられるようになります。

まとめ

心臓の病気は、生活習慣病であり現代病です。多くの人が苦しんでいます。医療の進歩が著しい分野のひとつです。このような新しい手術が生み出されることは、とても心強いです。しかし、生活習慣病の多くは、生活を改善することで回避できます。治療の大変さに比べたら、生活の改善は簡単ですよ。
(資料提供:榊原記念病院心臓血管外科)

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