今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『「夏風邪だから」と軽く考えないで。ヘルパンギーナは重症化する!?』をご紹介させて頂きます。

夏風邪のひとつヘルパンギーナは、患者の90%が5歳以下の子供に集中しています。1週間以内に改善する病気ですが、口の中に水ぶくれができるので子供はとても苦しい思いをします。
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7月にピークを迎える

ヘルパンギーナはコクサッキーウイルスA群というウイルスに感染して発症します。急性ウイルス性咽頭炎ともいいます。いずれも耳慣れない長い単語なので、医師ですら「夏風邪」と片付けていることが多いです。
国内では5月ごろから流行し始めて7月には患者数がピークを迎えます。8月にはもう減少傾向に転じ、10月にはほとんどみられなくなります。
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水ぶくれが破れる

ヘルパンギーナは、コクサッキーウイルスA群に感染してから2~4日後に発症します。突然38度から40度もの熱が出て、ほぼ同時期に喉が痛み始めます。口の奥から喉にかけて、直径1~2ミリほどの水ぶくれができます。大きいものだと5ミリに達することもあります。

水ぶくれは1~2日以内に潰れます。このとき強い痛みを発します。患者のほとんどが小さな子供なので、大きく泣き叫ぶこともあります。食欲は減退し、赤ちゃんの場合、母乳を飲まないこともあります。脱水症状やけいれんを伴うこともあるので、早めに小児科を受診しましょう。
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治っても注意が必要

ただ、脱水症状やけいれんといった症状まで進展しなければ発症から2~4日で熱は下がります。ここで気を付けたいのは、症状が軽くなってもウイルスは体内にとどまっている、ということです。症状が治まってから4週間後に便を検査したところ、ウイルスが見つかったこともあります。

大人が感染したり、発症したりすることは珍しいのですが、子供が複数人いる家庭の場合、1人の子がヘルパンギーナにかかって治っても、しばらくは警戒する必要があります。そうでないとほかの子供が感染してしまうからです。
手洗いとうがいを積極的に行い、かわいそうですが感染した子供に極力触れないようにします。特に患者のきょうだいが、患者に接触しないようにすることは重要です。
このウイルスは飛沫感染や糞口感染をします。赤ちゃんに発症した場合、オムツ交換した際に便に触れてしまったら、すぐに水洗いと消毒をしてください。交換したオムツはほかのゴミと一緒にせず、それだけをビニールで包み封をしてください。口と口のキスもしばらく中止してください。

まれに心臓病に進んでしまうことも

けいれんよりまれにしか起きないのですが、ヘルパンギーナが悪化して、無菌性髄膜炎や心臓の病気を引き起こすことがあります。髄膜炎とは、脳や脊髄を覆う保護膜である髄膜に炎症が生じる病気です。放置すると命の危険が生じます。
発熱や口と喉の水ぶくれに続いて、頭痛やおう吐が始まった場合は救急車を呼んでください。
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治療法はない

ヘルパンギーナに効く薬はまだ存在しません。ヘルパンギーナの診断が下ったら、医師は対処療法を行います。熱には解熱剤を使います。脱水にならないよう点滴を処方することもあるでしょう。

届出が必要な病気

ヘルパンギーナは夏風邪という扱いですが、診断した医師は保健所に届け出なければなりません。そういった意味で、決して軽い病気ではないのです。

ポリオも仲間のひとつ

ヘルパンギーナを引き起こす「コクサッキーウイルスA群」は「エンテロウイルス」というウイルスの仲間になります。かつて「小児麻痺」と呼ばれた「ポリオ」を発症させるポリオウイルスもエンテロウイルスの仲間です。ただポリオは、国際的な取り組みが進み、近い将来、地球上から消滅するといわれています。
また手口足病を引き起こすのもエンテロウイルスの仲間です。

まとめ

風邪は寒いからひくのではありません。ウイルスに感染するから風邪の症状が出てくるのです。そういった意味では、軽い夏風邪もインフルエンザもそしてヘルパンギーナもまったく同じメカニズムで人を苦しめるのです。

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