今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『副鼻腔炎が失明や脳腫瘍を引き起こすって!?』をご紹介させて頂きます。

「副鼻腔炎(ふくびくうえん)」は近年よく知られるようになりました。ただその理解が「やっかいな鼻の病気」ぐらいでとどまっているようです。しかしこの病気、悪化すると失明や脳腫瘍を引き起こします。そして一般的な副鼻腔炎よりはるかに治りにくい「新型」の存在も分かってきました。最新治療とともに紹介します。
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激しい頭痛も

まずは一般的な副鼻腔炎を紹介します。症状は鼻づまりから始まり、においが分からなくなったり、味覚がしなくなったりします。もっと悪化すると激しい頭痛に襲われます。数カ月に及ぶことがあります。「鼻の奥から脳天に抜けるような痛み。まったく眠れない」と表現する患者もいます。

CTや内視鏡で膿を確認

副鼻腔炎が疑われると、CT検査を行います。「鼻の奥の空間」に膿が溜まっていることが分かります。
さて、鼻の奥には「鼻の穴」よりはるかに広い空間が広がっています。これを副鼻腔(ふくびくう)といいます。「腔」とは空間のことです。口の中は「口腔」といい、鼻の奥の空間は「鼻腔」というのです。鼻腔と「壁」を隔てた隣に存在するのが「副鼻腔」です。
副鼻腔は声を響かせたり、顔面に受けた衝撃を脳に伝えにくくする働きがあります。
CTの次に行う検査は、鼻から内視鏡を入れて、医師が「目」で確認します。膿は小指の先ほどぐらいまで成長していることもあります。
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風邪が脳腫瘍に!?

風邪のウイルスが副鼻腔に侵入すると、鼻の表面が炎症を起こし、空間の「出入り口」をふさいでしまいます。そうなると副鼻腔は「ウイルス天国」になり、ウイルスは増殖し放題になり大量の膿を作ります。副鼻腔は目や脳に近いので、膿を放置すると失明したり脳腫瘍を作ったりしてしまうのです。
患者は30代から増え始めます。年代別では60代が最も多いです。国内の患者数は200万人に達します。
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最新器具による手術

副鼻腔炎が悪化すると、内視鏡を使った手術になります。そしてもうひとつ秘密兵器があります。副鼻腔炎の膿を除去する「マイクロデブリッター」です。外見は、金属棒に取っ手とコードが付いただけですが、金属棒の先端に、カッターと吸引器の2つの機能が備わっています。
手術はまず、内視鏡とマイクロデブリッターを鼻の穴から差し込みます。内視鏡で鼻の中をのぞきながら、マイクロデブリッターで膿の表面を切り、そして中身の膿を吸い取るのです。従来はメスを鼻の奥に挿入していました。マイクロデブリッターのお蔭で手術時間が大幅に短縮され、30分で終わることもあります。
新兵器はまだあります。「磁場発生装置」です。患者の顔の正面で磁場を発生させると、マイクロデブリッターの先端がどこにあるのかが、鼻の外から分かるのです。医師はモニターで確認できます。つまり医師は、内視鏡で鼻の内側から、そして磁場発生装置で鼻の外側からマイクロデブリッターの位置を確認できるので、より正確で安全な手術が行えるのです。
正確で安全な手術は、手術後の回復にも大きなメリットがあります。手術は体を傷つける治療ですから、手術自体による体へのダメージも相当大きいのですが、最新機器の使用により治りが早くなるのです。
治療は保険適用で、3割負担で約10万円です。

免疫の暴走により再発

手術を行っても再発する副鼻腔炎があります。それが「新型」です。正式名称は「好酸球性副鼻腔炎(こうさんきゅうせい・ふくびくうえん)」といいます。
好酸球は、実は「正義の味方」です。体内に入ってきた細菌やウイルスをやっつけてくれる細胞です。しかし好酸球性副鼻腔の患者は、好酸球が増え過ぎてしまうのです。
ここで思い出してください。そもそも副鼻腔炎は、風邪によってウイルスが侵入して膿を作る病気です。好酸球はそれを退治しようと活躍するのですが、ところが頑張りすぎてしまい今度は好酸球があらたな副鼻腔炎を作ってしまうのです。正義の味方が悪事を働くのですから、その被害は甚大になります。

吸引式だからじかに効く

これは免疫の暴走のひとつです。炎症と免疫の暴走を抑える薬としては、ステロイド薬が有効です。これまで好酸球性副鼻腔炎の治療では、「飲み薬」のステロイド薬が使われてきました。しかしステロイド薬は長期間使用すると、副作用が懸念されます。
そこで登場したのが「吸入式」のステロイド薬です。商品名は「ボルテックス」といいます。口から吸入するので、副鼻腔に直接ステロイド薬が届きます。副作用が小さくなることが期待できます。
ただ吸入式のステロイド薬は、まだ臨床試験の段階です。保険適用されることが期待されます。
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まとめ

耳鼻科医は、「鼻づまりが1カ月以上続いたら一度耳鼻科にかかってほしい。どの病気も同じだが、副鼻腔も悪化すればするほど、治療は大掛かりになり、苦痛が増え、なおかつおカネもかかります」と呼びかけています。

資料提供:東京慈恵会医科大学附属病院、福井大学、関西医科大学付属病院

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