今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『治る認知症といわれる「特発性正常圧水頭症」とは?』をご紹介させて頂きます。

認知症は、病気の名前ではない

年齢とともに、もの覚えがわるくなる、名前が思い出せないが起こるのは脳の老化によるものです。忘れっぽくなったと自覚症状があるなら認知症ではありません。「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」は違います。

昨日の夕食は何を食べたのか思い出せない、は加齢による物忘れですが、認知症は、夕食を食べたことすら思い出せないのです。なかには「家族が食べさせてくれない」と妄想をいだいて訴える行為は、認知症特有の症状です。

認知症は、病気の名前ではなく、物忘れ・注意力低下・幻視・妄想など認知特有の症状を示す総称です。もっとも多いのは、「アルツハイマー型認知症」で、認知症の約50%がこの疾患です。約20%が「レビー小体型認知症」、約15%が「血管性認知症」と続きます。これらは「三大認知症」といわれます。

認知症には、治療によって治るものと、根本的に治せないものがあります。治すことができない認知症は「早期発見」と「適切な治療」で症状を緩和させること、症状の進行を遅らせることが大事です。本人もさることながら、その家族にとっては、介護の負担を軽くすることにつながります。
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「治る」といわれる認知症とは?

三大認知症以外、残りの約15%の認知症には、治療によって治る認知症があります。「正常圧水頭症」と「慢性硬膜下血腫」です。特に、正常圧水頭症は、認知症の三大症状といわれる(1)歩行障害、(2)尿失禁、(3)認知症様症状があらわれるため、認知症と診断されますが、正常圧水頭症をいわゆる認知症の枠に入れるには疑問を持つ人もいるようです。

正常圧水頭症は、認知症患者のなかに約7〜8%いると考えられています。認知症の症状を起こしてはいますが、症状によっては「正常圧水頭症」と診断されることで、 “治る認知症” としての治療をはじめることができます。
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脳脊髄液の量が増えて、脳室が大きくなる

正常圧水頭症は、まず脳のなかにある「脳脊髄液」という水分のことから説明しなければなりません。脳脊髄液は、大脳の中心あたりにある「脳室」のなかの「脈絡叢」というところで毎日作られます。その役割は次の3つです。

(1)頭蓋のなかを循環して、脳や脊髄を衝撃から保護する
(2)脳・脊髄・神経に、ブドウ糖・たんぱく質などの栄養素を供給する
(3)頭蓋のなかを循環して、老廃物(古い細胞)などを浄化除去する

脳脊髄液は、頭の中を巡り脊髄から神経末端まで流れ、それぞれの組織で吸収されます。頭のなかには約110〜170mlの脳脊髄液が存在し、これは5〜7時間で入れ替わります。24時間で4〜7回入れ替わるといわれています。

この脳脊髄液が異常に増えて、頭に溜まってしまう病気が「水頭症」です。脳脊髄液の量が増えると、脳室は大きくなります。時間をかけて(慢性的に)脳室が大きくなる状態が「正常圧水頭症」です。脳脊髄液の増え方がゆっくりで、少しずつ脳室が大きくなるため水圧が上昇しないので「正常圧」と呼ばれます。脳室が大きくなると、脳は圧迫され、歩行障害・尿失禁・認知症様症状があらわれるのです。

特発性正常圧水頭症の「突発性」とは、「原因がはっきりとしない」という意味です。つまり、わからない原因によって、脳室に脳脊髄液が異常に増え、脳が圧迫された状態が「特発性正常圧水頭症」です。
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早期に出やすいのは「歩行障害」

症状の早期発見を見逃さないためには、家族が日常の行動に注意を払うことが大事です。特発性正常圧水頭症の特徴的症状である「歩行障害」は、早期に出やすい症状です。(1)歩幅が小さく、(2)がに股で、(3)すり足に歩くようなら、歩行障害の疑いがあります。

その他にも、次のような様子が見られるときは、精神科・神経内科・脳神経外科・老年病内科・老年内科の専門医に相談しましょう。

・以前より集中力や注意力がない
・意欲の低下が見られる
・声をかけても反応が遅い、あるいは鈍い
・以前からの趣味をしなくなった
・尿の回数が多く、間に合わず失禁することがある

認知症と診断されたときは「特発性正常圧水頭症」の疑いを質問してみましょう。CTやMRIの検査で、脳室が大きくなっているか確認してもらいます。腰椎から髄液を30ml採取して、症状が改善するかどうかをみる「髄液タップテスト」も有効です。タップテストから2〜3日でわずかでも歩行障害が改善されると「水頭症」の診断がなされます。
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余分な脳脊髄液を流す手術で、症状は改善する

医師から「脳室腹腔シャント術」の手術がすすめられます。頭蓋骨に孔(あな)を開け、シリコン製の管を入れて余分な脳脊髄液を頭からお腹、頭から心臓、腰椎からお腹のいずれかに流します。

術後、歩行障害は約90%の患者が改善します。認知や失禁は、約50〜60%の改善と言われますが、1年以上の経過観察で症状は大分改善するそうです。歩行ができるとリハビリが行えます。無理せず、おだやかに散歩をすることで脳や身体機能は向上してくるでしょう。

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