今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『植物のパワーは偉大だった!「園芸療法」の効果! 』をご紹介させて頂きます。

アメリカ建国の父が作った精神療法

アメリカ精神医学会が設立されたのは、1921年(大正10年)です。アメリカ精神医学会の紋章には、ベンジャミン・ラッシュ医師の肖像が、中央に配置されています。ベンジャミン・ラッシュ氏は、アメリカ合衆国建国の父の1人といわれる人道主義者でありながら、医師として医学への貢献も大きく、ラッシュ氏の名前をつけた医科大学や医療センターがあります。

ラッシュ氏の考えや治療法にいくつか異論は出ているものの、精神疾患治療の先駆者として現在も「アメリカ精神科療法の父」と呼ばれています。ラッシュ氏は、治療によって精神の病は癒すことができると考え、アメリカ初の精神病院施設を自分の生誕地(ペンシルベニア)に建設しています。

1812年(文化9年)、アメリカで初めての精神科療法の教科書を出版します。「心の病に関する医学的問診と観察」というタイトルの本です。この本のなかで、園芸療法を紹介しています。そして、出版から1年後にラッシュ氏は他界します。
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ストレス軽減、意欲回復、認知機能の向上などの効果

園芸療法は、草花・果樹・野菜などの栽培によって、穏やかな精神を取り戻し、やがて心と肉体を満たされた状態に近づけるための精神疾患治療です。園芸をとおして、適度に刺激された五感や体性感覚の回復が、神経系、器官系、賦活系など体の各機能に影響を及ぼすとされています。
(1)日々の変化を楽しめる、
(2)コストが安価である、
(3)狭いスペースで行える、など気軽にはじめられる利点から、近年急速に注目を集めています。病院、施設、学校などで行われ、ストレス軽減、意欲回復、認知機能の向上、社会性の向上、食欲回復などの効果がこれまでに確認されています。

うつ病に悩む患者が、植物を育てることによって、季節を感じ、やがて社会参加への関心と意欲が向上したという例が報告されているようです。体の機能が元に戻ろうとするなかで、感情はバランスを持ちはじめ、均衡を保つ方向に少しずつ歩みはじめるのかもしれません。

病気やケガやその他の辛い事情で傷ついた精神や肉体が本当に回復するには時間がかかります。急には治らなくても、体は私たちの目に見えないところで、おそらく着実に回復しようと努めているのでしょう。植物には、現代医学とは別に、生物を回復させるパワーがあるのかもしれません。その科学的根拠などは今後解明されていくことでしょう。
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日本では、医療や介護などの現場で利用

園芸療法は、精神疾患の治療としてはじまっていますが、1950年代から戦争からの帰還兵の戦争後遺症に大きな効果を発揮したことから、精神の回復や心の癒しを目的にアメリカで広まっています。その後、北欧では、障がい者の社会参加を望むノーマライゼーション(障がい者と健常者とが平等に生活する社会作り)の一環として活用されています。

日本では、小児病棟の子供たちのレクリエーションとしてや、ケガや病気で長期入院する患者のリハビリテーションのカリキュラムに取り入れ、意欲回復の効果を得ています。また、高齢者の認知機能の向上に効果があるとして、老人施設や介護施設などで実施されています。ポスピス施設では、心の平穏に役立てる人がいるといいます。

2002年には、兵庫県が全国ではじめて「園芸療法士」の資格を県知事が認定しています。近年では、引きこもりやうつ病によって、社会生活になじめない人たち、育児ノイローゼに悩む女性、家庭内暴力の被害者などが、園芸療法によって健康を取り戻すという実績が挙っています。
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植物と過ごすうちに、心身が健康になる

植物と過ごすうちに、自分以外のことに心を奪われたり、今日より先のことを待ち望んだり、静かに内省したりする時間を持つことができているようです。これは現代医療が目指す心身の健康を維持増進するために必要な要素です。

しかしながら、園芸療法の評価は必ずしも高いとは言えません。医学的・科学的な効果の証明と同時に指導者の育成が、今後の課題といわれています。

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