今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『呼吸が苦しいのは、肺から空気が漏れている?(自然気胸)』をご紹介させて頂きます。

肺から空気が漏れて、肺が小さくなる

人間の肺は、肋骨と筋肉によって囲まれた「胸腔」と呼ばれる空間にあり、酸素と二酸化炭素の交換を行なう「肺胞」と、それを包み込む2枚の「胸膜」で構成されています。

気胸は、内側(臓器側)の胸膜に何らかの原因で穴が開いて、空気が漏れてしまう疾患です。漏れた空気は、2枚の胸膜のあいだ(胸膜腔)に溜まります。外側の胸膜は肋骨があるため、それ以上外側に膨らむことはできません。その代わり胸膜腔に空気の量が増え、肺は押されて小さくなります。つまり、肺から空気が漏れて、肺が小さくなるのが「気胸」です。
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理由がなく、突然発生する胸の痛み

肺胞にできるブラ(あるいはブレブ。放射線学的にはのう胞)と呼ばれる風船のような袋に、あるとき何らかの理由で穴が開いて症状は起こります。ブラとは、肺胞の入口付近(気管支の末端)に炎症などが原因で起こる直径1センチほどの異常気腔です。

突然発症し、胸に大きな痛みを感じ、呼吸困難になるほか、チアノーゼ(酸素不足で唇や爪先が青紫色になる症状)、動悸、咳といった症状があらわれます。両方の肺が同時に発症すると命の危険性があると言われますが、滅多に起こりません。たいていは片方の肺だけに起こります。

運動や事故といった明らかな理由もなく発生するため「自然気胸」と呼びます。医学的には「特発性自然気胸」という呼び方をします。医学用語では、理由がよく分からない病気には「特発性」というカンムリを付けることがよくあります。

自然気胸は、10~20歳代の若い人、特に(1)痩せ型で(2)胸が薄く(3)長身の男性に多く発症する傾向にあります。喫煙習慣のある人にも多く起こります。なぜ男性に多く女性に少ないかは分かっていません。
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軽度なら、1~3週間で穴はふさがる

息を吸っても吸った気がしない・息苦しい・咳がよく出る・背中や肩甲骨が痛くなるという症状を感じたら、まず椅子などにすわって安静を保ちましょう。胸痛や呼吸困難は数分で治まることがほとんどです。

あわてず、近くの病院(できれば呼吸器内科)を受診し、胸部レントゲン検査で気胸かどうかを診断してもらいます。気胸が軽度であれば、安静にして様子をみます。自然に穴がふさがるのを待つよう指導されるでしょう。漏れた空気は自然に血液に溶けて消失し、1~3週間で元に戻ります。
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胸腔に溜まった空気を外に出す治療

自然気胸の治療は・・・
(1)胸腔に溜まった空気を取り除く
(2)肺を元の状態に膨張させる
(3)再発を予防するが目的です。

症状が中等以上の場合は「胸腔ドレナージ」による処置を行います。肋骨と肋骨の間から細いチューブ(チェストチューブ)を胸腔のなかに挿入し、漏れた空気を体の外に出す方法です。胸腔ドレナージを行って空気の漏れが止まらない場合は、胸腔鏡下手術を選択することがあります。

自然気胸は、再発率が高い疾患です。自然治療の場合、再発率は約50%といわれています。一方、胸腔鏡下手術を行った際の再発率は約0.5~3%という低さです。いずれにしても、自然気胸を経験した人は、管楽器演奏、スキューバダイビング、飛行機の搭乗など肺に負担のかかるような行為は注意が必要です。

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