今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『「電気をつけて寝ると太る」?睡眠と体重の関係は?』をご紹介させて頂きます。

Yahoo!やGoogleで「電気」「寝る」「体重」で検索すると、
「明るい部屋で寝ると太りやすくなる!」
「電気を付けたまま寝ると2倍も太りやすくなる」
といった見出しが山ほど出てきます。大抵は「~ということらしい」という表現を使っていて、その証拠は不明瞭です。
しかし仮にこの説が「都市伝説」だったとしても、何か根拠があるはずです。探してみたら、ありました。
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イギリスの研究

イギリスのオックスフォード大学が2014年に発表した論文が、この話題の「元ネタ」になっているようです。夜間にライトの下で眠ると、体重が増加することが分かったのです。この調査ではまず、16歳以上の女性10万人に対し、普段の「寝るときの部屋の明るさ」を尋ねました。明るさの段階は次の4つです。
「本が読めるほど」
「部屋の中は見えるが本は読めない」
「ようやく自分の手が見える程度」
「真っ暗かアイマスクを着用している」
10万人をこの4段階に分けて、肥満度とウエストサイズを調べたのです。その結果、「本が読めるほど」明るい部屋で寝ている人は、「真っ暗かアイマスク」の人より肥満傾向があることが分かったのです。

注意喚起にはなるが

しかしこうした「ちゃんとした論文」と「都市伝説」の関係は、かなり微妙なものがあります。
オックスフォード大の研究は、「明るい部屋で寝る人に太った人が多い」ということをいっているだけです。
つまり、「明るい部屋で寝ると太る」ことも「暗い部屋で寝ればやせられる」ことも証明しているわけではないのです。

せっかくの楽しい話題に水を差しているようで申し訳ないのですが、なぜこのようなことを指摘するかというと、まったく逆の結論を導いた研究が存在するからです。
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睡眠時間は肥満と関係しない

「部屋の明るさ」に関する実験ではないのですが、東北大学医学部の研究チームが2012年、睡眠時間と体重についての調査をまとめました。
結論はこうです。
「睡眠時間が短い人は体重が増えて肥満になるリスクが高いといわれてきたが、われわれが10年にわたって調査した結果、睡眠時間と肥満とは関連しない」

調査では被験者を、「睡眠5時間以下」グループと、「睡眠9時間以上」グループに分けました。平均的な睡眠時間の人が5kg以上太る「肥満リスク」を「1」とした場合、「5時間以下」は「0.93」、「9時間以上」で「1.05」でした。なんと、長時間寝た方が、太りやすい傾向が見られたのです。

ただ、その差は「誤差の範囲」ということでしたので、結論としては「睡眠時間は肥満と関係しない」となりました。
いずれにしましても、「電気を付けて寝ると太る」とか「真っ暗にして寝るとやせられる」といった説は、医学的にはまだ証明できていない、といえるでしょう。
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睡眠の質と体重

それではなぜ、「電気を付けて寝ると太る」という説が、まことしやかに信じられてしまったのでしょうか。それは「ストレスが肥満を引き起こすことがある」ことと関係していると考えられます。
よく「ストレス太り」といいますが、これは医学的に正しい現象です。人がストレスを感じると「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。コルチゾールは脂肪を貯め込む作用があるのです。
ストレス→コルチゾール増加→脂肪が貯まる→太る、という構図です。
また、睡眠の質が低いと「グレリン」というホルモンが増えます。グレリンは、食欲を刺激するホルモンなのです。
よく眠れない→グレリン増加→食欲増える→太る、という構図です。
このことから、「うまく眠れない」というストレスを受け続けるとホルモンバランスが崩れ、体重が増えやすい体質になってしまいます。

よく寝よう!

電気を付けて寝ると深い眠りが得られないことがありますよね。そうした自身の体験があるところに、オックスフォード大学という権威が「明るい部屋で寝る人に太った人が多い」という研究結果を発表したので、人々は「明るい部屋で寝ると太る!」と曲解してしまったのでしょう。
電気を付けることだけでなく、体形に合わない枕を使ったり、寝る時間と起きる時間がまちまちだったりすることは、睡眠の質を低下させます。生活全体を見直す中で「寝ること」に気を配ってください。