今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『増加する「すい臓がん」を早期発見!最新検査・EUS-FNA』をご紹介させて頂きます。

すい臓がんは、男女ともに増加傾向

独立行政法人・国立がん研究センターは、日本での「がん」に関する統計を取りまとめています。昨年(2015年)の数字はまだ出ていないようですが、同センターの発表によると、新たにがんと診断された人(がん罹患)の予測数は、年間約98万例と考えられています。

部位別の罹患数では(1)大腸、(2)肺、(3)胃、(4)前立腺、(5)乳房、(6)肝臓、(7)すい臓、(8)子宮という順序です。

そして、がん罹患数うち、37万人のがん患者が死亡するとの見込みです。こちらも部位別にみると(1)肺・(2)大腸・(3)胃・(4)すい臓・(5)肝臓という順序です。近年、すい臓は男女ともに増加しています。
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すい臓がんは、早期発見が難しい

すい臓がんは、全がん(全種類のがん)のなかでも、診断と治療がいまだに難しいことで知られています。日本では年間約3万8000人がすい臓がんと診断され、年間約3万2000人がすい臓がんで亡くなっています。

新たにすい臓がんにかかる患者の数と、すい臓がんによって死亡する人の数がかなり近いことから分かるように、すい臓がん患者の、5年生存率は5~10%と低い数字です。

死亡率の高い原因は早期発見が難しいためです。(1)すい臓は体の深い部分に位置するため検査で見つけにくい、(2)特徴的な症状があまりみられない、(3)胃・十二指腸・小腸・大腸・肝臓などに囲まれ、早い段階から転移しやすいなどが挙げられます。

「すい臓がん」と診断されたときには、かなり進行していることがあります。根治させるには、病巣部位と周囲のリンパ節を切除する以外に有効な治療法が確立されていません。しかし、手術ができるのは患者全体の約15〜20%といわれています。そして、手術ができない人の1年生存率が10%と完治がきびしい疾患です。
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早期発見を実現する、検査方法が登場

すい臓は、タテ約15センチ、ヨコ約3センチの小さな臓器で、食べ物の消化を助けるすい液の産生と、血糖値の調節に必要なホルモンの産生を行っています。

すい臓がんの90%はすい液を運ぶ「すい管」にあらわれます。腫瘍が10ミリ以下で発見されると5年生存率は約80%ですが、20ミリの大きさになると5年生存率は約50%に低下します。

これまでは、ほとんどが20ミリ以上で発見されていたため、約80〜85%の人は手術ができない状況にありました。ところが、3〜5ミリ程度の腫瘍を確認できる検査方法が見つかっています。
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早期の腫瘍を発見する「EUS-FNA」

それは、超音波内視鏡下穿刺吸引検査(EUS-FNA)と呼ばれる方法です。

内視鏡の先端に、非常に小さくした超音波検査(エコー検査)の観測装置を付けて、胃や十二指腸内腔から、すい臓に高周波の超音波を当て解像度の高い画像を撮影します。すると、すい臓全体が観察でき、早期の腫瘍が発見しやすくなります。

すい臓がんが見つかったときは、内視鏡を通して針をすい臓に刺し、病変を少し採取(生検)します。この一連の検査が「EUS-FNA」です。日帰りまたは一泊程度の日程で検査が行えます。
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患者に合わせた治療が選べる

すい臓は周囲の臓器に隠れているため、最近まで「生検」がうまく行われていません。生検をすることによって、手術のまえに遺伝子解析などを行うことができ、手術方法や薬の種類など、患者に合わせてもっとも有効で副作用の少ない方法を選ぶことができます。

すい臓がんも、胃がんなどと同様に早期であれば生存率は高くなります。EUS-FNAは、2010年4月から保険適用がはじまっています。実施する医療機関が増え、治療分野への応用が進むなど、EUS-FNAの臨床上の重要性はますます増えるでしょう。

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