今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『もやもや病』をご紹介させて頂きます。

もやもや病」を、漠然と「もやもやした気持ちになる精神の病気」ととらえていませんでしょうか。それはまったく間違った認識です。
もやもや病」は、脳に血液を送るとても重要な血管の病気です。苦しい症状を引き起こします。そして、原因が分からない、国指定の難病です。
もやもや病は、歌手の徳永英明さんが発症して、世間に知られるようになりました。しかしその特徴的な病名は記憶に残っても、病気の内容まで調べる人は少ないので、偏見が生まれているようです。
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徳永さんに関する報道記事を読むと、この病気のつらさが理解できます。以下に記事の要約を掲載します。
徳永さんが最初にもやもや病と診断されたのは、2001年でした。そこから1年8カ月間も療養生活を余儀なくされました。もちろん音楽活動は休止です。
その後、復帰を果たしますが、再発してしまいます。2016年2月、自宅で突然倒れて、救急搬送されました。病院で検査したところ、脳梗塞を発症するリスクが高まっていることが分かり、手術に踏み切りました。徳永さんの手術は成功したそうです。
もやもや病脳梗塞のリスク要因になるのです。

脳は多くの栄養と酸素を必要とする臓器です。それで、「内頚動脈」という太い血管で、脳に大量の血液を送るのです。内頚動脈が「なんらかの要因」で詰まると、その先には血液が届かなくなります。こうした事態に陥ると、「血管が血管を作る」現象が起きます。「新しい血管」ができて、「その先」に血液を送ろうとするのです。

「なんらかの要因」といいましたが、現在でもそれは解明されていません。病気の原因が分からないので、根本的な治療法も開発されていません。徳永さんが受けた手術は「もやもや病を治す手術」ではなく、「もやもや病が引き起こす脳梗塞を予防する手術」でした。

「新しい血管ができる」のであれば、血液は脳に届きそうなものです。しかしそううまくはいきません。「新しい血管」といっても、「内頚動脈」のような立派な血管ができるわけではないのです。極細の血管が無数にできるのです。その様子をX線で撮影すると、まるでタバコの煙が漂っているように見えるので、それで「もやもや病」と呼ばれるようになりました。「ウィリス動脈輪閉塞症」という別名もありますが、「もやもや病」という名称も正式名称として使われています。

「内頚動脈」の代わりにできた「新しい細い血管」は、当然のことながら、脳に同じ量の血液を送らないとならないわけです。異なる表現をすると、「同じ量の血液が心臓から送られてくる」のです。内径動脈であれば耐えられても、細い血管だと耐えられない、ということが生じます。耐えられなかった細い血管は破裂します。そうです、脳内出血です。

また、脳内出血を起こさないまでも、脳に届く血液の量が減ってしまえば、脳が機能しません。それでろれつが回らなくなったり、手足が麻痺したりすることがあります。
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徳永さんのように意識を失うこともあります。歌を歌うと酸素が必要になり、心臓は血液の循環を良くしようとします。それが引き金となってしまうのです。
子供の患者の場合、ラーメンを食べようとして「ふうふう」しただけで虚脱状態になることもあるそうです。

そのほかの症状としては、けいれんや手足ががくがくする、記憶力や注意力が落ちるといったものもあります。子供の場合は発達障害を起こすことも知られています。

国内のもやもや病の患者数は、約2万人です。10万人に6~10名ほどの割合です。「確実に遺伝する」または「遺伝することが多い」ということは証明されていないそうですが、家族内で発症している事例も無視できない数だそうです。
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治療は、「積極的には何もしない」という人もいます。もやもや病と診断されても、症状はある程度は薬で緩和できるからです。血管の詰まりが進行しない人は、定期的な検査を受けるだけで普通の生活を送れるそうです。

徳永さんのように脳梗塞のリスクが高まるほどの重症になると、脳の血管の手術をしなければなりません。徳永さんが受けたとされる手術は「左複合バイパス手術」といいます。詰まっている血管を別の血管につなげるのです。こうすることで、脳が必要とする血液量が、安定的に確保できるのです。

原因不明ということは、予防法も確立していないということです。もやもや病の対策としては、疑わしいときにすぐに医者にかかることしかなさそうです。

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