今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『脳腫瘍』をご紹介させて頂きます。

とても刺激的なタイトルを見付けました。ズバリ「脳腫瘍は怖くない」です。これが個人のブログや、テレビの番組名であればそれほど驚きはないのですが、このタイトルを掲げたのは、大阪医科大学脳神経外科なのです。

私たちの感覚からすると「怖い病気ベスト3」に入る脳腫瘍が、治療の最前線にいる専門の医師たちにはなぜ怖くないのでしょうか。じっくり見てみましょう。

「怖くない」と言い切ってしまう根拠は、脳腫瘍患者の実に42.5%が、「手術で取り出してしまえば治癒」してしまうからです。
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脳腫瘍には、2つのタイプがあります

脳腫瘍には、2つのタイプがあります。「原発性脳腫瘍」は頭蓋骨(ずがいこつ)の中におさまっている器官に発生した腫瘍です。「頭蓋骨の中の器官」には、「脳」だけでなく、「髄膜(ずいまく)」「脳神経」「下垂体(かすいたい)」「血管」などがあります。いずれの器官でも、腫瘍が発生します。
2つめのタイプは「転移性脳腫瘍」といい、脳以外で発生したがんが脳に転移するタイプです。患者数の割合は「原発性」85%、「転移性」15%となっています。
原発性脳腫瘍」の半数以上は良性で、手術で取り除いて治癒します。また、最近では放射線による治療も、好成績を上げています。

原発性脳腫瘍85%×良性半数以上=42.5%以上というわけです。この数字は、医学の進歩によるものであるといえます。
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脳腫瘍の症状

脳腫瘍は「できもの」ですので、体積を持ちます。それが頭蓋骨の中にできるわけですから、頭蓋骨に元々おさまっている器官の「脳、髄膜、脳神経、下垂体、血管」などが圧迫されます。そのことで頭痛と嘔吐が起きます。これを「頭蓋内圧亢進(とうがい・ないあつ・こうしん)」といいます。「頭蓋」骨の「内」部の「圧」力が「進」むという意味です。
脳腫瘍による頭痛の特徴は、朝起きたときに発症し、午前中に軽くなります。脳腫瘍による嘔吐の特徴は、吐き気を催さずに突然噴出します。そして一度嘔吐すると、すぐに改善します。食事もすぐに摂ることができます。
頭痛と嘔吐のタイプを把握しておく必要があります。
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脳腫瘍による圧迫で脳が壊されると、運動麻痺や視野障害が起きます。
運動麻痺は、「右側の手と足」や「左側の手と足」に生じることが特徴です。つまり、「右手だけ」や「左足だけ」が麻痺する症状は、脳腫瘍ではない証拠のひとつになります。ろれつが回らなかったり、舌が動かない症状も、脳腫瘍の運動麻痺の特徴です。
視野障害は脳腫瘍だけでなく、偏頭痛でも生じます。診断が難しい症状といえます。

さらに圧迫された脳が異常に興奮してしまうこともあります。脳が興奮すると、けいれんやてんかんを起こします。
けいれんは、脳内の電気信号が無秩序に発生することで生じます。手や足が震えたり、喋れなくなったりします。意識を失ったり、全身が硬直したりすることもあります。
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脳腫瘍の治療の進化について

それでは脳腫瘍の治療の進化をみてみましょう。以下に紹介するのは、いずれも大阪医科大脳神経外科で行われている治療です。

脳腫瘍が疑われると、CTやMRIといった、画像診断検査が行われます。「腫瘍があるかどうか」はそれで分かりますが、その腫瘍が良性か悪性かは、腫瘍の一部を摘出して、組織を顕微鏡で見て判断するしかありません。

脳腫瘍のひとつに「髄膜腫(ずいまく・しゅ)」があります。良性の場合、手術で腫瘍を除去すれば治ります。しかしまれに発生する悪性の髄膜腫で、なおかつ、脳の深い位置で発症すると、治療が困難になります。大阪医科大脳神経外科は、世界で初めて「ホウ素中性子捕捉療法」の有効性を証明しました。

この記事の前半で、脳腫瘍には「原発性脳腫瘍」と「転移性脳腫瘍」があり、「怖くない脳腫瘍」は「原発性」であると紹介しました。
では「転移性脳腫瘍」はというと、発見後の余命は6カ月と言われていました。「とても怖い」脳腫瘍「だった」のです。
そうです「過去形」です。この病気の治療でも、「ガンマナイフ」「エックスナイフ」「サイバーナイフ」という新しい治療法が確立されました。さらに最近は、機器の性能が向上し、「ガンマ線」や「エックス線」などの放射線を当てる精度が1ミリ以下になったそうです。正常細胞をほとんど傷つけることなく治療ができることを意味します。このような医療の進歩で、転移性脳腫瘍の生存率が格段に上がりました。
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薬も進化しています。2006年に「テモゾロマイド」という薬が、医療保険の対象になりました。脳腫瘍の薬としては「1980年以来の進歩」と言われています。
とはいえ、もちろん脳腫瘍は「怖い病気」です。しかし、医師や研究者たちは次々と画期的な治療法を開発し、少しずつ「怖さ」を減らしているのです。

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