今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『アクリルアミド』をご紹介させて頂きます。
「発がん物質」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。「恐い」でしょうか。「猛毒」でしょうか。「苦痛」でしょうか。
しかし、発がん物質は、私たちの日常生活に「やっかいものだけど、避けようがない」存在として、浸透してしまっています。

さらにやっかいなのは、発がん物質を避けようとすると、別の危険が襲ってくることです。後で詳しくみますが、発がん物質のアクリルアミドは、ある食材を加熱すると発生しますが、加熱しないと食中毒になるリスクが高まる食材もあります。こうなると、「発がん物質と食中毒では、どちらがよりましか」という比較になります。進化し過ぎた社会の皮肉のようにも感じます。

アクリルアミド

さて、結論を先に言いますと、「アクリルアミドのような『懸念ややあり』発がん物質は、極力とらないようにする」しかないようです。
それでは詳しくみてみましょう。

恐ろしい記事・・

最近、とても恐ろしい記事がありました。見出しは「少女雑誌の付録から発がん物質」(読売新聞2016年2月19日付)
大手出版社2社が、少女向けの雑誌に付録として「マニキュア」を付けたところ、成分にホルムアルデヒドが含まれていることが分かったのです。
ホルムアルデヒドは、大人の化粧品にすら配合が認められていない、猛毒の発がん物質です。今回は微量だったため、健康被害は発生しませんでした。ただ、出版社は回収と廃棄を呼びかけました。

このホルムアルデヒドだけに限らず、ヒ素やダイオキシンなどは、「絶対に避けなければならない」発がん物質です。こうした化学物質は「入れなければいい」ので、国が規制強化することで、健康被害を防ぐことができます。

アクリルアミド

しかし、最近話題になっている「アクリルアミド」は、まさに「懸念ややあり」発がん物質なのです。
例えば、パンですが、常温ではアクリルアミドは存在しません。しかしパンを120度以上の高温で調理すると、パンに含まれる成分が化学反応を起こし、アクリルアミドが発生してしまうのです。パンだけでなく、野菜でも、高温加熱すると、同様に発生します。

アクリルアミドは、大量に摂取すると・・

アクリルアミドは、大量に摂取すると神経がやられ、手足が震えたり、感覚麻痺が生じます。さらに動物実験で、がんを引き起こすことが証明されています。しかし、農林水産省によりますと、「食品などからのアクリルアミドの摂取量と、人の発がんとの因果関係は、多くの調査研究では確認されていない」というのです。

アクリルアミド

つまり、「摂らない方がいいに越したことはないが、さりとて、絶対摂るなとは、農林水産省としては言えない」ということなのです。それはそうだと思います。私たちとしても、「トーストしたパンや、野菜炒めは、がんのリスクを高める」ということが完全に証明されない限り、食べるのを禁じられたら困ります。

アクリルアミドを極力抑える調理法!!

そこで紹介したいのが、アクリルアミドを極力抑える調理法です。これは2016年2月22日付の東京新聞に紹介されていました。
①野菜は調理前に常温にしておく
②切った野菜は、しばらく水にさらす
③加熱するときは焦がさない
④炒めるときは弱火で食材をよくかきまぜる
⑤下ゆでや、蒸し煮をすることで、炒め時間を減らす

下ゆでや蒸し煮では、120度に達することがないので、アクリルアミドの発生を抑えることができます。こうした調理法である程度熱を通しておくと、120度以上になる炒め調理にかける時間を減らすことができるのです。

ちなみに、魚や肉は、120度で加熱しても、アクリルアミドはほとんど発生しないそうです。

「懸念ややあり」発がん物質は、アクリルアミドだけではありません。チーズや清酒、食肉製品に含まれる「硝酸塩」や、バターやマーガリンに含まれる「3-MCPD脂肪酸エステル」も、その仲間です。
食の安全を監視している農林水産省もこれらの成分には微妙な表現を使って、注意を呼びかけています。
「『3-MCPD脂肪酸エステル』は、動物実験において、腎臓への影響や、精子運動能の低下が報告されているが、現在の日本人の摂取量においては、健康への懸念は低い」
かなり微妙な言い回しですね。

どうやら食の安全を確保するには、自ら情報を集めて自衛することが求められているようです。