今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『脳出血 虫歯細菌による脳内の炎症が関係?!』をご紹介させて頂きます。

お口と健康の深いつながり

口腔細菌と全身疾患との関係がいろいろ解明されるようになってきました。そのため「口腔内の環境を整えることは、健康維持と病気予防につながる」という考えが、日本にも広まりはじめています。

脳出血

予防歯科の先進国といわれるスウェーデンは、口腔内を健康に保つ大切さを1970年代から理解し、国家的な一大プロジェクトとして、積極的に口腔内のケアに力をいれています。たとえば、20歳未満の人はプラークコントロール(歯垢除去)や治療が無料で受けられます。
スウェーデンは、国費を使い予防歯科に力を注いだ結果、いまでは世界でもっとも口腔疾患が少ない国となっただけでなく、口腔以外の疾患の減少にも絶大な効果をあげ、医療費は削減されたといいます。

脳出血に関与する虫歯菌、日本人の8%が保有

いまから4年半ほど前のことになります。
2011年9月、イギリスの科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ電子版に「脳出血を引き起こす危険性が高い特殊な虫歯菌を発見した」という記事が掲載されました。

大阪大・浜松医科大・横浜市立大らのチームによって発見されたこの虫歯菌は、日本人の約60%が保有するといわれる「ミュータンス菌」のうちの、さらに特殊なタイプの菌で、日本では約8%の人が保菌しているといわれるものです。

脳出血

ミュータンス菌は虫歯の原因菌とされるものですが、そのなかに特定の遺伝子を持つタイプが存在し、脳出血の患者では約30%の人がそのタイプを保菌していたという事実が発表されたのです。
つまり、ある特定の口腔細菌を持つことで、脳出血の発症リスクは約4倍に増える可能性が示されたわけです。

血管の止血を妨害する、特殊な遺伝子

そして再び、2016年2月、ミュータンス菌が脳出血の発症にも関与していることを、国立循環器病研究センター・京都府立医大・大阪大のチームが、イギリス科学誌ネイチャーの電子版「サイエンティフィック・レポート」に発表しました。

ミュータンス菌のなかのうち「cnm遺伝子」を保有するタイプの口腔細菌は、血管壁のタンパク質であるコラーゲンと結合することで、血管の傷口に集まって血小板の止血作用を低下させるという性質を持っています。そして脳内で炎症を引き起こし、脳出血を発症するとみられています。

脳出血

これまで脳出血は、高血圧糖尿病など生活習慣病の持病がある人ほど発症しやすいと言われてきました。そして今後は、もう1つの原因として、虫歯や歯周病の原因菌が口のなかの血管から血流に乗り、脳の血管まで到達し、脳出血の発症を引起こすことが疑われるようになります。

脳出血の新しい予防法に期待

脳出血はその症状が重篤となりやすい疾病です。そのため予防対策として、食生活の改善・適正飲酒・禁煙など一般の認知は進んでいます。しかし、脳出血を発症する患者数はあまり減少していません。日本人は、脳卒中における脳出血の割合が欧米の3倍であるという数字もでています。

虫歯菌が脳出血と関係することが明らかになったことで、脳出血の新しい予防法、治療法に大きな期待が集まります。医療現場で、病原性の高い特定の細菌だけを選んで除去する方法が確立されれば、脳出血の新しい予防につながるでしょう。

そして私たちは、日常的な予防歯科の重要性を考えるようになるでしょう。また、乳幼児期の口移しなど、口腔細菌の母子感染予防も心がけが大事です。

さきに述べたスウェーデンでは、約70%以上の国民が虫歯や歯周病に対する「予防歯科」を実践しているようです。PMTCと呼ばれる歯科医師・歯科衛生士による歯のクリーニングを80%以上の人が定期的に受けています。日本ではまだ25%程度といわれています。

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