今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『ロー・ビジョンケア』をご紹介させて頂きます。

生きる気力を削ぐ病気のひとつに、「見る力」が落ちる病気があると思います。視力が徐々に落ちてくると、「失明するのではないか」という恐怖に襲われます。失明は、その人の生活を不便にするだけでなく、暗闇の世界に一生過ごさなければならないことも意味します。

そこで眼科医たちは、この苦しさを少しでも緩和しようと「ロー・ビジョン・ケア」に取り組み始めました。英語でlow vision careと書きます。眼科医療の力で「低視力や視野狭窄の人の生活を快適にする」取り組みです。
患者に、「治す」治療を提供するだけでなく、「生活の質を高める」工夫も提案するのです。

「ロー・ビジョン・ケア」の説明に入る前に、「ロー・ビジョン(低視力・視野狭窄)」を引き起こす病気を紹介します。
まず緑内障です。「目ん玉」は球体をしていて、中は液体で満たされています。この液体の量が増えると、水圧が上がります。この状態を「眼圧が高い」といいます。緑内障は、眼圧が異常に上がってしまう病気です。
緑内障になると、「視野」が狭くなります。ただ、視野の狭まり方は徐々に進み、さらに初期では中心部分はよく見えるため、本を読むことには支障がありません。病気に気付かない人も多いのです。しかし医者にかからず放置し続けると、最終的には失明してしまいます。18歳以降に視覚障害を負う人の原因のトップは、緑内障なのです。

ロー・ビジョン・ケア

視力は維持されているのに、歩いているときに物にぶつかることが多くなったら、緑内障を疑いましょう。また、本を読んでいるときに、次の行に移ろうとしたのに、同じ行を読んでしまうことも、緑内障の初期症状です。

ロー・ビジョンを引き起こす病気とは?

そのほか、ロー・ビジョンを引き起こす病気には、「糖尿病網膜症」「網膜色素変性症」「加齢黄斑変性」などがあります。ひとつひとつみてみましょう。

◆「糖尿病網膜症」は、糖尿病が悪化して発症します。網膜という「眼球のパーツ」がはがれ落ちたり、眼球内で出血したりします。突然、視力も視野も失われる恐い病気です。30代40代といった比較的若い人でも発症します。

◆「網膜色素変性症」の特徴は、昼間はよく見えているのに、夜や暗い場所では見えにくくなる「夜盲」という症状です。視野が少しずつ狭くなっていきます。10代から高齢者に至るまで、幅広い年齢で発症します。

ロー・ビジョン・ケア

◆「加齢黄斑変性」は、「黄斑(おうはん)」と呼ばれる眼球のパーツが、加齢によって異常をきたす病気です。黄斑は、視力に深く関わっていて、発症すると視野の中心部分がぼやけるようになります。視野は狭まりません。進行が速いのが特徴です。

ロー・ビジョンのケアとは・・

次に「ロー・ビジョン」の方を、どのように「ケア」していけば、その方の生活の質は保たれるのでしょうか。具体的な取り組みをみてみましょう。

視力が低下した方には、拡大鏡やルーペを使うように促します。――と、これだけ聞くと、「当たり前過ぎる」と感じるかもしれません。しかし、それほど単純な話ではないのです。

拡大鏡もルーペも「凸レンズ」を使っています。凸レンズは、モノを大きく見せるようとすると、一度に見える範囲が狭まる、という性質があるのです。極端な例で説明すると、いくら新聞の文字が大きくなっても、一度に1文字しか映し出さないと、記事の内容を理解することは困難を極めるでしょう。つまり、患者の症状とニーズに合致したルーペを探す必要があるのです。

視野の中心部分の「見え」は悪くなったが、周辺はかろうじて見えるロー・ビジョンのケアでは、患者にある練習をしてもらいます。「見え」が正常な人は、「見たいもの」を視野の中心に置こうとします。そのために、わざわざ姿勢を変えたり、首を動かしたりします。それは、「見たいもの」を視野の中心に置く方が、良く見えるからです。
しかし、視野の中心がぼやけてしまう人が、見たいものを中心に置いてしまったら、見えなくなってしまいます。そこで「癖」を修正するのです。見たいものを、視野の周辺に置くのです。これを「中心外固視(ちゅうしんがこし)」といいます。

また、視野が狭くなった人でも、狭くなった範囲内に、見たいものを置けば、見ることができます。見たいものの面積が広い場合、目を少しずつずらして全体を把握します。これは「スキャニング」という練習法です。

ロー・ビジョン・ケア

視野が狭窄したために、外を歩くといろいろなものにぶつかってしまう人には、歩行訓練をしてもらいます。ぶつかっても体のダメージが少なくなる防御姿勢を学んだり、杖の使い方を教わります。

つまり、こういうことです。これまでは、「ひと目見る」という一瞬の動作で、周辺の情報を100個得ていたとします。しかし、ロー・ビジョンの状態になり、「ひと目」では10個の情報しか得られなくなったとします。そこで、「見方」を工夫したり、時間をかけたりすることで、100個の情報を集めよう――これがロー・ビジョン・ケアの考え方なのです。

さらに、ハードの開発も進んでいます。「拡大読書器」という機械は、小型カメラで本を撮影し、それをテレビ画面に映し出すのです。文庫本が、大画面で読めるのです。
最近のコピー機には、白黒反転コピーという機能が搭載されています。これを使って文章を印刷すると、文字が白くなり、地が黒くなります。視覚障害を抱えた方の中には、このような「特殊印刷」の方が読みやすい人がいるのです。

老眼にしろ、近眼の進行にしろ、「見え方の衰え」は仕方がない、と考えがちです。まして病気を発症したとなれば、「運命と思って受け止めなければならない」とあきらめてしまうかもしれません。しかし専門家の力を借りることで、生活の質を維持できるかもしれないのです。
これは眼科領域に限ったことではないのですが、超高齢社会を迎える日本では、「完全に治らないけど快適」というゴールを目指す医療が、次々開発されているように思えます。

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