今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『口腔心身症』をご紹介させて頂きます。

「病気の原因が分からない」ことは、3つの苦しみがあるといわれています。ひとつは、治療が進まないことです。症状を和らげる治療を受けても、原因を除去できていないので、いずれ苦痛がぶり返します。

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2つめの苦しみは、あきらめの気持ちです。長時間の検査や、病院を代えて検査をし直しても「原因不明」と言われると、「自分は、本当は病気ではないのではないか」と考えてしまうのです。
3つめの苦しさは、周囲の目です。「あの病気」ということが分かっていると、周囲は気遣ってくれるのに、「よく分からないけど体調不良」では、心配されるどころか、怠けているのではないかと疑われてしまいます。

口腔心身症とは?

原因が把握しづらい病気のひとつに、「口腔心身症」があります。聞きなれないのは当然です。「口の中の病気」であり、なおかつ、「心と身体の病気」なのですが、つい最近まで、この病気を知らない歯科医や内科医が少なからずいたのですから。

それもそのはずです。「歯が痛い」「舌がしびれる」「冷たいものが歯にしみる」「温かいものが歯にしみる」こうした症状が出たら、当然、歯医者に行くでしょう。そして、虫歯や歯槽膿漏が見つかったら、歯科医はその治療を始めます。ところが、虫歯と歯槽膿漏の治療が進んでも、一向に症状が改善しないのです。

口腔心身症では、歯の痛み以外に、不眠耳鳴りやめまいといった症状も起きます。そこで、歯科医に通いながら、内科医にかかるわけです。しかし、口腔心身症のことを知らない患者が、目の前の内科医から症状を尋ねられたとき、「不眠耳鳴りとめまいがします」とは答えられたとしても、果たして「歯の痛み」まで伝えるでしょうか。
「歯の痛み」は、口腔心身症の診断には貴重な情報なのですが、患者の方で「歯の痛みは、内科の先生には関係ないか」と自主規制してしまうのではないでしょうか。

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また内科医の方でも、「不眠耳鳴りとめまい」を発症する病気はたくさんあるわけで、その中から患者数が少ない口腔心身症を拾い上げることは簡単ではありません。口腔心身症は、血液検査やレントゲンや脳波の検査でも、異常を示さないので、散々検査を受けた結果「不定愁訴でしょう」と判断されかねません。

口腔内心身症の原因!

口腔内心身症の原因はいくつか分かっていて、そのひとつは、脳の一部である「視床下部」の変調です。そこでまず、「視床下部とは」について解説します。

人の体が「普通」の状態を保っていられるのは、体温や血液の流れ、血圧、呼吸などが一定に保たれているからです。実はこれ、すごいことなのです。人は、外の環境の変化にさらされて生きています。外が変化しているのに、体の内は変化せず「普通」のままなのです。

なぜこんなことができるのかというと、視床下部が、血液の成分を読み取り、体温や血圧などを調整する器官に指令を出しているからなのです。例えば、血圧が高くなれば、視床下部は腎臓に「血圧を低くするように」と指令を出します。腎臓はその指令を受け、血液中の水分量を調整して、血圧を「普通」に戻すのです。

つまり、視床下部が何かに障害され、血液の成分を「読み誤る」と、体は「普通」でいられなくなるのです。口腔心身症は、視床下部の不調で引き起こされると考えられています。

視床下部の変調以外の、口腔心身症の原因としては、歯並びの悪さや噛みあわせのずれ、唾液分泌の異常、貧血糖尿病が指摘されています。過度な緊張や、うつ病といった精神疾患も関連しているといわれています。完璧主義や悲観的な性格の人もなりやすいです。

また、更年期障害を患っている人が、口腔心身症を併発する事例も報告されています。これは、どちらも視床下部が関連しているからと考えられています。

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口腔心身症の治療は、歯科医が行います。しかし、口腔心身症の治療は、「削る」「詰める」といった、一般的な歯科治療とはまったく異なります。専門的な治療が必要ですので、口腔心身症の治療を行える歯科医を探す必要があります。
ホームページでこの病気を紹介している歯科医があるので、チェックしてみてください。また、直接電話するか、メールで問い合わせてみるのもいいでしょう。

治療法

次に、具体的な治療法を解説します。
この病気を発症した人は、眠っているときに歯ぎしりをしていることが多いので、それを解消する治療を行います。歯ぎしりは、一種のストレス発散法と考えられています。日中にストレスを解消できないと、無意識のうちに睡眠時に歯ぎしりをしてしまうのです。
「ナイトガード」というマウスピースのようなものを装着して眠ることで、歯ぎしりが減ります。

また、スーパーライザーという機器を使うこともあります。「星状神経ブロック療法」といいます。特殊な光を神経に当てて、神経の緊張を解いて、血行を良くします。血行が良くなることで、視床下部の働きが正常に戻るのです。

また、口腔心身症では、薬物療法も有効です。精神安定剤や抗うつ薬、抗不安薬といった精神疾患向けの薬のほか、漢方薬や医療用サプリメントといった、マイルドな「薬」も治療に用いられます。美白で使われるプラセンタでも、効果が期待できるといいます。

この病気は、現代医療の「落とし穴」みたいなものです。苦しい症状が体の多くの場所で起きているのに、ひとつひとつの症状が軽い病気は、特定しづらいのです。特定しづらいのは、そういった病気に対応した検査機器がないこともあります。研究が進んでいないこともあります。また、医師や患者本人が「ストレスだろう」で片付けてしまうこともあります。

繰り返しになりますが、歯の治療を進めていても痛みが軽減されず、同時に不眠耳鳴り、めまい、頭痛が発症していたら、口腔心身症を疑ってみてください。

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