今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『肉は大腸がんの危険性を増す』をご紹介させて頂きます。

例えば、車による交通事故の予防には、2段階あります。ひとつ目は、運転を見直すことです。スピードを出さないようにしたり、運転技術を磨いたりすることで、事故のリスクが減ります。
2つ目は、車に安全機能を搭載することです。自動ブレーキシステムや、一定スピードに達するとエンジンへのガソリン供給が止まるリミッター機能などがそれに該当します。人の能力が及ばない領域を機械にカバーしてもらう、という発想です。

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「予防」は「悪いこと」から、私たちを守るための手段です。できればすべての予防を実施したいところですが、一部しか着手できないこともあります。そこで「予防」を、「すぐに着手できる予防」や「将来に着手すべき予防」といったように段階ごとに分けると、確実に実行できます。

がん予防にも段階がある

さて「がん予防」にも段階があり、「1次予防」と「2次予防」と呼ばれています。
がんにおける2次予防は、早期発見と早期治療です。この時点ですでに、がんは発生してしまっているのですが、がんの場合、がん死を回避する取り組みも「予防」としてカウントされます。がんを早期発見と治療をすることで、がん死が予防できます。
2次予防で具体的に行うことは、血液検査や画像検査などの検査を受けることや、内視鏡による病変切除です。

さて、今回、詳しくみてみるのは「大腸がんの1次予防」です。そもそも、がんを発生させないようにする取り組みです。または、がんができにくい生活を送ることです。
結論をいいますと、大腸がんの1次予防は「肉の摂取量を減らす」ことです。

国立がん研究センターが、全国的な「大腸がんと肉」の調査を行いました。対象者は、①1995年の時点で45~74歳、②がんと心臓の病気を発症したことがない――の2条件を同時に満たす8万人です。これらの人が2006年までに、大腸がんを発症したかどうかを調べました。結果は、1145人が大腸がんを発症していました。

この8万人を、「肉全般の摂取量」「牛肉と豚肉の摂取量」「ハムやソーセージなど加工肉の摂取量」ごとにグループ分けしました。その結果、次のことが分かりました。

・牛肉と豚肉の摂取量が多い(1日80g以上)女性は、大腸がんのリスクが高くなる
・肉全般の摂取量が多い(1日100g以上)男性は、大腸がんのリスクが高くなる
・加工肉の摂取量が最も多い男性グループは、大腸がんのリスクが高くなる

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この調査結果は、「肉を多く食べると必ず大腸がんになる」ということはまでは証明していません。しかし、「肉を多く食べると大腸がんになりやすい」ということが、明白に分かったのです。これは、画期的なことなのです。

肉を食べると、大腸がんは発生しやすくなる?!

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それではなぜ、肉を食べると、大腸がんは発生しやすくなるのでしょうか。
メカニズムその1は、多くの肉が、多くの発がん物質を多くつくってしまうことです。肉に含まれる動物性脂肪が体内で消化されるときに、胆嚢に「二次胆汁酸」という物質ができます。二次胆汁酸は、少量であれば問題ありませんが、量が増えると、発がん物質になります。二次胆汁酸は、胆嚢から十二指腸に送られ、十二指腸につながる小腸では吸収されずに、その次に現れる大腸で吸収されてしまうのです。つまり、大腸が発がん物質を持ってしまうことになるのです。
また、肉を食べると、「内因性ニトロソ化合物」という物質が腸内にできます。これも発がん物質と考えられています。

体のメカニズム

メカニズムその2は、体が錆びることです。肉には鉄分が含まれています。鉄分それ自体は、人の体にとって重要なミネラルです。なので、ある程度の鉄分は、健康のために必要です。しかし鉄分を過剰に摂り過ぎると、今度は、酸化作用を引き起こしてしまうのです。「酸化」とは「錆びること」です。錆が発生した場所は、とても弱くなります。人の体の酸化は、大腸がんに限らず、がんのリスクを高めます。

さらに、次に紹介する原因は、「肉のせい」ではありません。しかし、人が肉を食べるときに、ほぼ必ず発生してしまうのです。それは「焼きこげ」です。こげの中には、ヘテロサイクリックアミンという発がん物質が含まれているのです。

いかがでしょうか。これが、「過剰な肉≒大腸がん」の仕組みです。
大腸がんの1次予防には、肉を食べ過ぎないこと以外にも、禁煙する、禁酒する、肥満を解消する、運動する、野菜を多く食べることも含まれます。これら5項目も、医学的に大腸がんのリスクを低下することが証明されている予防法です。
肉を多く食べ過ぎないことを含め、大腸がんを回避するには、たった6つのことを心掛けるだけでいいのです。ぜひ明日から実践してみてください。

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