今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『血管力』をご紹介させて頂きます。
突然ですが問題です。
Q:交通渋滞を引き起こすのは「時速20kmしか出ないポンコツ自動車」でしょうか、それとも「時速200kmの新車のスポーツカー」でしょうか?

A:正解は、どちらでもありません。時速差が10倍もある車が同じ道路に走っていても、渋滞を起こすことはありません。

交通渋滞を引き起こすのは、「車の台数に比べて道路が少ない」ときか、「十分な道路はあっても、路面がボコボコで車が立ち往生してしまう」ときです。

血管

人の生命を維持するために欠かせない、栄養と酸素は、「血液」と「血管」によって、数十兆個のすべての細胞に送られています。栄養と酸素が届かなければ、細胞は死にます。その状況が心臓で発生すれば、心臓の細胞が死ぬ病気「心筋梗塞」になります。それが脳の血管で起きれば、脳細胞が死ぬ「脳梗塞」と呼ばれます。
いずれも死の病です。つまり、血液と血管が、人の命を握っているといっても過言ではありません。

血液を自動車に例えると・・

血液を「自動車」に例えると、血管は「道路」となります。自動車の「渋滞」はイライラするだけで済みますが、血液の「渋滞」は、死を意味することがあります。つまり、血液の渋滞は、絶対に起こしてはいけないのです。
血液の渋滞が起きるのは、長らく「血液がドロドロになるから」と考えられてきました。車で例えると「車がノロノロ走るから、渋滞が起きるのだ」という考え方です。
ところが2010年ごろから、心臓と血液を診る医者の間で「血液のドロドロよりも深刻な問題が、他にあるのではないか」と言われ始めました。ドロドロ血液より深刻な問題とは、「血管の傷」です。
また車で例えると、渋滞が起きるのは車の性能のせいではなくて、道路が少なかったり、道路の状態が悪かったりするためではないか、ということです。

血管

「血液」が「サラサラか、ドロドロか」ということより、「血管」が「ツルツルで弾力性があるか、それとも、ボコボコでカッチカチに硬いか」の方を重視しなければならない、ということです。

「ドロドロ血液」とは?

そもそも「ドロドロ血液」とは、どのような状態のことをいうのでしょうか。
血液の成分のひとつに、血小板があります。血小板は、血管の傷の補修剤と考えてください。例えば、ひびが入ったコンクリートは、その上に補修材を塗って、強度を保ちますよね。それと同じで、血小板は、血管の傷の上に乗っかって傷を補修するのです。

血小板が増えると、血液が濃くなり、血液中の水分の割合が減るわけですから、血液が固まりやすくなる――つまりドロドロ状態になるのです。「血液流動性検査」という特殊な検査で、「サラサラ」か「ドロドロ」かが数値で分かります。

血管

このような説明を受けると、直感的に「ドロドロの液体は流れにくいし、ホースの中を通そうとすれば、詰まりやすい」と感じると思います。
しかし、実際の患者さんの観察をしていくと、「血液流動性検査」の数値は「サラサラ」を示しているのに、血液の詰まりである「血栓」ができる人がいることが分かったのです。そして、サラサラなのに血栓がある人には、ある共通点が見つかりました。
それは、プラークが多いということでした。

プラークとは

プラークとは、「血管のこぶ」です。人は、食生活が乱れたり、アルコールを飲みすぎたり、ストレスがかかったりすると、血管の中に脂肪がたまることがあります。その脂肪の量が多くなると、血管内に「こぶ」ができるのです。

血管内は空洞ですので、こぶができれば、空洞が狭くなります。ところが、その空洞を通過する血液の量は一定です。こぶは、血液の通過の障害物となるわけです。血液は、絶えず、こぶにぶつかります。するとある日、そのこぶに傷ができます。
傷ができると、血液は「補修しなければ!」と判断します。そうです、血小板という補修材が、プラークのこぶにできた傷に塗りたくられるのです。空洞はさらに狭くなります。そしていつしか、空洞は完全に封鎖されてしまい、その先に血液は流れません。それは、その先に栄養と酸素が届かないことを意味し、その先にある細胞はやがて死んでしまうのです。

確かに、「ドロドロ血液」も、健康には良くないことは、良くないのです。しかしプラークによって「ボコボコになった血管」が健康に及ぼす被害の大きさと比較すると、「ドロドロ血液」による健康被害は、とても小さいのです。そこで、心臓と血管の医師たちは「血液より血管の状態に注意しよう」と言うようになったのです。

それでは「その2」では、血管をどのように改善するかをみてみます。「血管力」を高める4つの方法を紹介します。

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