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がん治療

「がんで死ぬのはもったいない」この言葉を使える機会が、また増えそうな気がした。PET・MRIという、最新のがん画像診断装置が実用化され、がんの発病を心配する人が検査機関に殺到しているという。
2016年1月の産業新聞が、「がん早期発見、1センチの壁崩すPET・MRI」という記事で紹介している。

がん治療において

がん治療において、「1センチ」にこれほどの意味があることに驚いた。「1.5センチ」で発見されるがんと、「1センチ」で発見されるがんでは、治療開始から5年後の生存率が段違いなのだそうだ。それは、1センチから1.5センチに、わずか5ミリ大きくなっただけで、がんの増殖するスピードが格段に速くなるからだ。
PET・MRIは、1センチ以下のがんを見つけるという。

健康に意識が高い人は既に、「がん」と聞いてすぐに「死の病」を想像する人は少ないのではないだろうか。多くの人は「がん」と聞いても冷静に、「転移は?」「臓器は?」「医者はなんと言っている?」といった疑問が浮かぶだろう。それくらい、がんの治療は進歩しているし、最新治療はすぐにテレビや新聞で大きく紹介される。
そういった「がん教育」を受けている人であれば、がん患者から「初期の胃がんだった。内視鏡で切り取って終わり。抗がん剤も使わないで済んだ」と聞かされれば、心配は吹き飛ぶ。つまり、「治るがん」が存在することは、共通認識になりつつあるといっていい。

がん治療

PET・MRIとは

PET・MRIは、文字通り、PETとMRIをくっつけた装置だ。いずれの画像診断装置も、単体で、がん検査で使われてきた。
PETは、患者に「がんのエサ」となるある薬剤を投与し、がんが「エサを食べた」ところを、特殊なカメラで撮影する仕組みだ。特殊なカメラは「エサ」だけを映し出すのだが、「エサがある所」=「がんのある場所」となるので、がんの居場所が分かる。
MRIは磁気を使って、人を輪切りに撮影していく検査機器だ。つまり凸や凹があれば、その形で撮影されるので、ひと目でがんと分かる。
ただ、PETには「がんのおおまかな場所は分かるが、詳しい場所を特定できない」という欠点があり、MRIには「映し出されないがんがある」というデメリットがある。そこで、両者の機能を補完し合い、高性能に仕上げたのが、PET・MRIというわけだ。

ここでひとつ疑問が湧く。MRIと同じように、人を輪切りに撮影していく機器に、CTがあるではないか、と。その通り、CTとPETを組み合わせたPET・CTは存在する。
しかもPET ・CTの登場は、PET・MRIの登場より5年ほど早い2005年ごろだ。がん発見の能力では、X線だけによる検査より4倍も高いという。すごい数字だ。
しかしPET・CTには、「時間のずれ」という欠点があった。画像診断装置をものすごく簡単に説明すると「カメラ」だ。だからPETもCTも「カメラ」である。PET・CTは一体の機器なのだが、PET部分とCT部分が、別々に「撮影」する。つまり実際の検査では、「2枚の写真」ができ、それを重ねあわせて「1枚の写真」にするのだ。医師が見るのは、この「2枚を重ねた1枚」である。
これだと大腸など、患者の意識とは関係なく動いてしまう臓器を撮影するときに「ずれ」が生じてしまうことになる。PETで撮影したときには「ここ」にあったのに、CTで撮影したときには「あそこ」にあった、ということだ。よって、「もっと正確な検査機器を」という要望が生まれることになる。

また、CTは被ばくのリスクがある。そこで今度は、PETと、放射線を使わないMRIを組み合わせて、しかもPETの撮影とMRIの撮影を同時に行うことにした。「時間のずれ」による「がんの位置のずれ」を克服したのだ。
PET・MRIは、メーカー希望小売価格53億円もする。しかし、病院などからの問い合わせはひっきりなしという。また、既にPET・MRIを導入した検査施設は、キャンセル待ちが出るほどの人気ぶりだ。
PET・MRIを使っている医師によると、この機器が活躍できる検査は、脳、骨盤、脊髄、乳腺だそうだ。胃や十二指腸、大腸のがんは、内視鏡の技術が発達したお蔭で、医師が自分の目で直接がんを見て発見できるようになった。しかし、脳や骨盤などを肉眼で見ることは、事実上不可能だ。

がん治療

画像診断装置の歴史は、「病気の見える化」の拡大の歴史でもある。PET・MRIの実用化は、これまで早期発見が難しかったがんの治療に、光明が差したといえそうだ。

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