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今回は『「アトピーと大気汚染」神経がニョキニョキ伸びてかゆくなる!?』をご紹介させて頂きます。

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子供から大人まで年齢に関係なく発症するアトピー性皮膚炎は、皮膚に強いかゆみが生じ、かけばかくほど悪化します。症状を抑える薬はありますが、「これを飲み続ければほとんど治る」という特効薬はありません。
そんななか、東北大大学院医学系研究科(医科学)が、大気汚染とアトピー性皮膚炎の関係を解明しました。なんと、患者の体内の神経がニョキニョキ伸びてきて、それがかゆみを引き起こしているというのです。どういうことなのでしょうか。

大気を汚す汚染物質が免疫の過剰反応を引き起こす

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そもそも大気汚染とは「空気が汚れる」ということですが、空気を構成している窒素や酸素や二酸化炭素などが「汚れる」わけではありません。工場の排煙や自動車の排気ガスなどに含まれる「汚染物質」が、窒素や酸素や二酸化炭素などにまざっている状態のことを、大気汚染というのです。
一方のアトピー性皮膚炎は「異物に対する体の過剰反応」と考えられてきました。大気を汚している汚染物質が体に付着すると、人の体の中に備わっている「免疫という機能」がこれを取り除こうとします。この「取り除こうとする反応」が過剰になると「かゆくてかゆくてたまらない!」という症状が現れるのです。

皮膚の表面にトラブルが発生すると神経が「監視」に来る?

今回、東北大大学院医学系研究科(医科学)が解明したのは、免疫の過剰反応とは別の原因です。「神経」が、かゆみを引き起こしていることが分かったのです。
私たちの皮膚の表面には「AhR」というタンパク質があり、このAhRは、大気汚染物質の「ダイオキシン」と結合する性質を持っています。そしてこのAhRは、ダイオキシンと結合すると「異様に元気」になってしまうのです。
「異様に元気」になることを、医学用語で「活性化する」といいます。

AhRの説明を続ける前に、ここで「神経の形」について説明します。神経は「1本の木」のような形をしています。1本の木は、まずは太い幹があり、そこから幹より細い枝が出てきて、その枝からさらに細い枝が出てきて、さらにその枝からさらに細い枝が出てきて…を繰りかえす形をしています。
神経も脳から出ている神経は最も太く、そこから細い「枝状」の神経が出てきて、さらにそこからさらに細い神経が出てくる…という形をしています。

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AhRが異様に元気になると、皮膚の下の方にあった神経が、皮膚の表面に向かって、あたかも木の枝が伸びてくるように、ニョキニョキと伸びてくるのです。
見方を変えると、大気汚染物質とAhRが皮膚の表面でトラブルを起こすので、神経が自ら伸びて「監視」にくる、といったイメージです。
神経が皮膚の表面近くまで伸びてくると、少しの刺激でも強いかゆみを生じます。これがアトピー性皮膚炎の症状です。

新薬の開発に期待

東北大大学院医学系研究科(医科学)はさらに、AhRがトラブルを起こすと、別のタンパク質「アルテミン」が増えることも見つけました。このアルテミンが神経を成長させるのです。
そこでマウスを使った実験で、アルテミンを減らしてみると、ネズミの引っ掻き行動が減ったのです。またそもそもAhRを持たないマウスは、AhRを持つマウスに比べてアルテミンが少ないことが少ないことが分かり、AhRを持たないマウスの体表に大気汚染物質を塗っても引っ掻き行動は出なかったそうです。
つまり、アルテミンを減らすとアトピー性皮膚炎の症状が治まることが分かったのです。まだ実験段階なのですが、将来的には画期的な治療薬が生まれるかもしれません。多くの日本人が抱える悩みが、一気に解消するかもしれません。期待したいです。

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