抗菌せっけんは抗菌していなかった!?

今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『抗菌せっけんは抗菌していなかった!?』をご紹介させて頂きます。

「消費者は抗菌せっけんは細菌の増殖を防ぐのにより効果があると考えがちだが、通常のせっけんより有効だという科学的根拠はない」
これはアメリカの食品医薬品局という役所が発表した見解です。同局は日本の厚生労働省や保健所のような部門です。アメリカでは抗菌せっけんの販売禁止が決まりました。

これがアメリカの話にとどまらず、日本にも飛び火しました。厚生労働省は2016年10月、せっけんや洗剤の製造販売会社に「抗菌せっけんを1年以内に代替品に切り替えよ」と要請しました。
みなさんが普段何気なく使っている抗菌せっけんは、実は抗菌作用がないということなのです。
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抗菌せっけんは医薬部外品

スーパーやドラッグストアで購入できる「抗菌せっけん」や「薬用せっけん」は、薬事法で規定された医薬部外品といいます。ボディーソープや洗顔料も「抗菌」とか「薬用」と付いた商品は医薬部外品です。
医薬部外品は、「体に対してなんらかの作用はするが、その効き目がおだやかなもの」と定義されています。効果も「吐き気、口臭、体臭、あせも、脱毛などの防止」に限定されています。つまり、それ以上の効果を発揮してしまうものは、医薬部外品ではなくなってしまうのです。

トリクロサン、トリクロカルバン

今回、アメリカ食品医薬品局や厚生労働省が問題にしたのは、トリクロサンやトリクロカルバンなど、抗菌作用があるとされてきた成分19種類です。この19種の抗菌成分を含む商品は、アメリカには2000品目、日本には800品目あるそうです。
抗菌せっけんはアメリカでは40年以上前から流通し始めました。「潔癖」「清潔」といえば、日本のお家芸のように感じますが、アメリカ人の方が菌に対して敏感なようです。
国内では1990年代に流行した病原性大腸菌O157をきっかけに、抗菌せっけんが流行しました。

この19種の抗菌成分について、厚生労働省は「健康被害は報告されていない」としていますが、アメリカ食品医薬品局はかなり問題視していて、「殺菌剤は長期的に利点よりも有害となりうる可能性があるとの指摘もある」と警告しています。
またある研究では、抗菌せっけんを使い続けると、耐性菌が増えるリスクが高まることが分かっています。耐性菌とは、19種の抗菌成分に打ち克つためにパワーアップしてしまった菌のことです。
また、抗菌成分が人のホルモンの働きを阻害する、と指摘する専門家もいるそうです。
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ちょっと恐い話…

最後に、耐性菌についてもう少し詳しく解説します。
抗菌せっけんに含まれる抗菌成分はマイルドな効果しかないので、健康被害が発生したとしても、ごくごくわずかです。だから厚生労働省も「抗菌せっけんをすぐに販売停止しろ!」と「命令」するのではなく、「1年ぐらいかけて代替品に切り替えてくださいね」と「要請」したのです。

しかし医療現場で使われている抗菌薬は、同じ抗菌でも抗菌せっけんとはレベルが違います。菌をやっつける力がとても強いのです。菌をやっつける「薬」には、抗菌薬の他に抗生物質があります。抗生物質も抗菌薬も、菌を殺す点では同じです。微生物から作るのが抗生物質で、人工的に化学的に作り出すのが抗菌薬です。

抗菌薬はあまりに効果が大きいので、医療現場でかなり大量に使われてきました。またそのお蔭でたくさんの命が救われてきました。しかし、そうなんです、耐性菌ができてしまったのです。耐性菌とは、抗菌薬に負けないようにパワーアップした菌のことです。つまり、抗菌薬が効かない菌です。

この問題は世界的規模で議論されていて、世界保健機構(WHO)が2015年に、日本を含む加盟各国に「2年以内に耐性菌に対する国家行動計画を作るように」と求めました。
厚生労働省はこれを受け「国内でも抗菌薬の不適切な使用があったため、病院を中心に新たな耐性菌が増えている」と認め、耐性菌の拡大を防止するプランを作成しました。
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まとめ

「抗菌せっけん問題」は「問題」と呼ぶには小さな問題ですが、しかし「抗菌薬問題」というより深刻な問題を考える上でとても良い「教材」だと思います。菌はときに人を死に至らしめる「恐怖」そのものですが、菌はやっつければやっつけるほど強くなるという性質があるのです。人は菌と上手に付き合っていかなければならないんですね。

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