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今回は『遺伝しやすい皮膚の病気「尋常性魚鱗癬」について』をご紹介させて頂きます。

赤ちゃんに見られる「皮膚」の遺伝病

尋常性魚鱗癬(じんじょうせいぎょりんせん)は、皮膚の角質が硬くなり、皮膚の表面の角質細胞が、細かくはがれ落ちる病気です。その様子が、まるで「魚の鱗(うろこ)」のような状態になることから、この名前が付けられています。

乳幼児からおよそ10歳までの子どもの多く見られ、現在の日本では、約250〜300人に1人の割合で発症しています。それほど珍しい病気ではありません。魚鱗癬は、大きく「先天性」と「後天性」に分けられます。尋常性魚鱗癬は、先天性に属しますが、そこにもいくつかの種類が存在しています。区別するために、通常の(患者数の多い)タイプを「尋常性」と呼んでいます。

皮膚が「魚のうろこのように」はがれ落ちる

皮膚のいちばん外側の部分が、乾燥によって
(1)厚くなり
(2)硬くなり
(3)ひび割れて魚の鱗のような鱗屑(りんせつ:皮膚の表面が、細かくはがれ落ちること)
が起こる病気です。

自覚症状はほとんどなく、ときどき痒みが起こります。手のひらのシワが増えるといった特徴もあります。症状は、湿度の高い夏に軽くなり、空気が乾く冬場に悪化する傾向があります。アトピー性皮膚炎と合わせて、発症する場合があります。

尋常性魚鱗癬は、乳幼児に多く見られる病気です。生まれてすぐは症状があらわれず、生後2ヶ月~4歳ごろに、手足・腕・体の皮膚にカサカサした症状が見られます。特に、背中、肘、膝の外側に魚鱗癬はよく起こります。魚鱗癬のなかでも、尋常性はもっとも軽症とされる病気です。多くの患者は、成長するに伴い症状が緩和されていきます。

肌の「バリア機能を作る遺伝子」の異常

尋常性魚鱗癬は、「常染色体準優性遺伝」が原因です。常染色体準優性遺伝とは、両親からもらう遺伝子の一方に特徴的な遺伝子(優性)が存在したときに、その遺伝子によって何らかの変化が体にあらわれる、というものです。

尋常性魚鱗癬の場合、皮膚の角質層の形成、肌の保湿など、皮膚のバリア機能に影響する「フィラグリン」と呼ばれるたんぱく質を作る遺伝子に異常が見られます。そのため、両親のうちのどちらかに、この遺伝子が見られると、子どもは約50%の確率で、尋常性魚鱗癬の病気にかかります。遺伝に男女の差はありません。兄弟によっては症状にばらつきが出ます。

肌のカサカサが見られたら「皮膚科」へ

特に乳幼児に、肌のカサカサや皮膚の角化が見られたら、早めに「皮膚科」を受診し、専門医に相談しましょう。尋常性魚鱗癬は、手のひらのシワ、患部のあらわれ方や症状を見て、さらに家族に同じ病気の人がいたかどうかを確認したうえで診断が確定します。一般的に、特別な検査を行うことはありません。

乾燥を防ぐために、
(1)ワセリン
(2)保湿剤
(3)軟膏などを1日に数回使う「塗り薬」での治療を行うことになるでしょう。
日常生活では、エアコンや加湿器などを用いて、乾燥を防いだ適切な「保湿管理」を十分に心がけます。

「入浴時」は特に注意して!

尋常性魚鱗癬は、皮膚の乾燥が大敵です。日常生活では、入浴時にもっとも注意を払いましょう。皮脂の落とし過ぎには注意して、
(1)低刺激性の石けんを使う
(2)石けんの利用は最小限に抑える
(3)体を洗いすぎない
(4)長い時間、湯船に浸からない
などを特に気をつけます。

入浴後は肌が乾燥しやすいため、水気をとったら、すぐに「保湿剤」を塗るようにしましょう。遺伝性の病気であるため、確立した予防策はまだありません。皮膚の保湿に気を配ることが大事です。適切な治療を進めることで、ほとんどのケースで、青年期や成人するあいだに症状は軽快して治ることが多いでしょう。

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