今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『薬の副作用』をご紹介させて頂きます。
薬には副作用が必ずある。というより、副作用のない薬は、薬ではない、サプリメントだ。薬に必ず副作用がある証拠に、医者は「その病気」が治れば「その薬」の服用を止めるよう、患者に指示する。
つまり、薬は、健康な状態であれば飲まない方がよいものなのだ。なぜなら、副作用があるからだ。

毎日新聞が2016日1月31日、気になる記事を掲載した。タイトルは「がん新治療薬、糖尿病7人発症、厚生労働省が注意喚起」。要約するとこういうことだ。

がんの治療は、手術と放射線療法と抗がん剤が3本柱であるが、最近注目されているのは「第4の治療法、がん免疫療法」だ。がんそのものを攻撃するのではなく、がんを攻撃する免疫細胞を「パワーアップ」させるのが特徴だ。

今回問題になった「オプジーボ」という薬品は、2014年7月4日に、製造と販売が承認された。手術が不可能だった「悪性黒色腫」と「非小細胞肺がん」の治療に効果が期待できるという。
ところが、それまで「副作用」として想定されていなかった1型糖尿病が、この薬を使った人に発症したことが分かったのだ。発症が確認されたのは7人で、死亡例はないという。
この薬のメーカーは、医師や薬の服用患者に対し、1型糖尿病の早期発見と早期治療に努めてほしいと呼びかけている。

薬の副作用

悪性黒色腫」も「非小細胞肺がん」も、放置すれば死亡する。そこで、今回のような報道を聞くと、どうしても「副作用の重さ」が気になる。つまり「がん死」という絶対的な重さに対し、副作用の「1型糖尿病」はどれくらいの重さがあるのだろうか。
「がん死」に匹敵する重さなのか、それとも「がん死」を回避するためには、我慢しなければならない重さなのか。

糖尿病の種類

糖尿病には1型2型がある。成人した人が、肥満などの悪習慣によって発症することが多いのが2型である。

一方の1型は、先天的にすい臓の重要な細胞が壊れていて、体内でインスリンを作ることができず、糖尿病を発症する。テレビや新聞などで、小さな子供が自分で注射器をお腹に刺すシーンを見たことがある人もいると思うが、その注射がインスリンである。インスリンの自己注射は一生続けなければならない。
これが1型糖尿病の患者の姿である。相当重い病気といえる。

もちろん、製薬メーカーとしては、治験の段階で1型糖尿病のリスクを発見し、発売と同時に注意喚起することが理想だ。
ここで、「しかし」と考え込んでしまう。もし私に、がんが見つかって、医師から、この薬を使おうと提案されて、「でも1型糖尿病を発症するかもしれませんよ。もし発症したら、一生、インスリン自己注射をしないとならないですよ」と言われたとしよう。しかし私は、新薬の使用をためらうことはないだろう。

――と、ここまで考えて、再び「しかし」が浮かんできた。しかし、この新薬によって、がん治療を開始した患者が、いまになって「副作用の追加」を知らされたら、どのような心理状態に陥るだろうか。がんの発見の衝撃、治療開始の負担、毎日の不安、そこに今回の事実が加わるのである。

薬の副作用

天秤は、左右にモノを乗せて、下に傾いた方が重いと計測するだけの、単純な構造だ。しかし、「本来の病気の重さ」と「副作用の重さ」を量る天秤は、かなり複雑な計測をしなければならない。

(資料)毎日新聞2016年1月31日
がん新治療薬、糖尿病7人発症 厚労省が注意喚起
 厚生労働省は29日、新しい仕組みで免疫細胞ががんを攻撃する力を強める治療薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)の投与を受け、1型糖尿病を発症する副作用が7人報告されているとして、日本医師会や日本糖尿病学会、自治体などに注意喚起したと明らかにした。
 注意喚起は28日付。オプジーボの添付文書は2015年11月に改訂済みだが、同12月に肺がんにも適用が拡大され使用患者の増加が見込まれ、医師に適切な対応を求めた。

(資料)東洋経済
1回投与で73万円!大型新薬のウソと本当、患者は何に注意すべきか
2014年9月に小野薬品工業が国内で上市した、がんで初の抗体医薬品「ニボルマブ(製品名オプジーボ)」は1回の投与で約73万円。がん治療のあり方を変える可能性もある新薬だが、こちらも「これまでの常識からは考えられない薬価」(業界関係者)だ。