診療時間外

医療法人
前田内科医院

0
ブログ

科学的根拠に基づく医療(EBM)とは

欧米では1990年代初め頃から科学的根拠(evidence)を元にした医療の必要性が叫ばれ、実践されています。このような医療を『科学的根拠に基づいた医療(evidence based medicine)』と言い、EBMと略して呼ばれています。今ではこのEBMが欧米の医療の大きな本流となっていて、これ抜きでは医療が進まないと言われる程です。
日本では遅れて90年代終わりから2000年過ぎた頃からその概念が知られてきましたが、欧米に比べるとまだ普及度はやや低い面があります。
科学的根拠(evidence)にもさまざまなレベルがあり、最もレベルの高い科学的根拠(evidence)は「ランダム化コントロ−ル研究(無作為化比較試験)」と言われる大規模な臨床試験です。
例えば、あるお薬が本当に効力があるかどうかを見極めるには、本物の薬(実薬)とそれによく似た偽薬(プラセボ)を用意して、被験者にはどちらが当たるか分からない状態にしてある一定の期間(年単位)服薬して頂き、後で実薬のグループと偽薬のグル−プで効果に差があったかどうかを調査して結論を出すという手順が必要です。
この種の研究には正確を期すためには多くの被験者(何千人~場合によっては何万人単位)が必要で、期間も多くかかります。大変な労力をかけて結論を出す訳ですが、それ故にこの種の大規模研究の科学的根拠(evidence)の重みは小さなものではありません。
残念ながら日本ではこれまでEBMに基づいた大規模な臨床試験が多くは行われてきませんでした。そこで多くの場合海外のデータを基にして考えるしかなく、これも日本でのEBMの普及を妨げる要因になっていました。
最近では日本でも少しずつ科学的根拠(evidence)を得ることに努力が払われるようになってきましたので、これからは日本人のデータで考えることのできる時代になってくるものと期待されます。
科学的根拠と言えば、実験室で動物を使った実験を「科学的」だと連想される方がおられるかも知れません。動物実験のデータは確かに科学であり、大事ですが、医療の上では必ずしも動物実験の結果イコール人間での実験結果ではありません。
動物実験で確かめられた結果が人間でも確かめられて初めて医療の上での科学的根拠(evidence)になるのです。動物実験のデータだけではEBMとしての根拠はレベルとしてはまだ低いものになります。
テレビを代表とするマスコミで最近は健康情報が多く流されていますが、このような情報にも科学的根拠(evidence)があるもの、ないもの様々です。皆さんのお一人お一人がよく見極めて、だまされないようにして頂かなければなりません。
例えば、お昼のワイドショーなどでよく見られる「主婦3人の方に○○を1週間食べてもらいました」という実験は、一見科学的に見えるかも知れませんが、科学的根拠(evidence)はこのような実験では証明されません。(被験者の数が少なすぎる上、被験者の選び方にも問題がありますし、対象になった主婦は他の食べ物や運動など日常生活上で無意識のうちに注意してしまう可能性があるためです。)
また、解説で栄養士や医師が「○○は~の働きがあり、~に効果があります」と言っていても、多くは実験室レベルのお話で、実際に人間で確かめられた科学的根拠(evidence)でないことが大半です。
診察室で科学的根拠(evidence)に基づいた医療を行おうとする場合、実際にはどうするのでしょうか。
一番役に立つ道具はインターネットです。インターネットで直接世界中の文献を短時間で検索して調べることができるのです。
さらに科学的根拠(evidence)を基にして日々更新している電子教科書(大半は海外のものですが)もインタ−ネット上で短時間で読むことができます。
当院では海外の有名な電子教科書(複数)と契約しており、瞬時にこれらで最新の科学的根拠(evidence)を調べることができます。