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かわいそうなうんこ

 タンパク質、脂肪、炭水化物、ミネラル、特に食物繊維を大量に含み、タンパク質は消化しやすい形に分解されているもの、それはうんこ(糞)である。また、うんこはまた穀物栽培に欠かせない窒素やリン酸が豊富なので、植物の重要な栄養源である。
以前は私たちも有機肥料として牛糞、鶏糞の他に人糞を重用していた。しかし、水洗便所の普及とともにうんこを回収することが困難になって、今では人糞を肥料として利用することができなくなった。因みに、西武池袋線は都心部で回収した人糞を練馬以遠の百姓に輸送することで発展した路線である。
うんこは動物の栄養源でもある。うんこがいかに滋養豊富かは小さい頃にファーブルの昆虫記を読んだ方なら第1章に登場するフンコロガシを思い出せばお分かりになるであろう。フンコロガシの属するコガネムシ類以外でも糞を食料とする昆虫は多い。グルメで有名な蠅も糞を見つけると我先に飛んでくる。
昆虫よりも高等な生物でもうんこを食べる。ウサギは自分のうんこを食べる。一定量の食物から無駄なく栄養を吸収するために繰り返し腸管を通過させるのだ。哺乳類の中には子育て期間中、子供のうんこを食べる動物、反対に自分のうんこを子供に食べさせる動物もいる。
人以外のうんこはいろいろな場面で利用されている。乾燥地帯では家畜のうんこを乾燥させて燃料や壁材にしている。鶯のうんこは昔から美白のための化粧品として重用されてきた。この美白効果は鶯のうんこに含まれる消化酵素の働きによると考えられる。アフリカでは象のうんこに含まれる未消化の食物繊維を利用して紙を作る部族がある。また象のうんこを原料とするお茶を飲む習慣もある。世界最高のコーヒーとされているコピ・ルアクはコーヒーの豆を食べたジャコウネコが排泄した種子を取り出して加工した逸品である。ジャコウネコの消化酵素の働きと香水にも利用されるジャコウネコの会陰部から分泌される香り物質の作用によって独特の風味が生み出される。
挙げればきりがないほど、うんこはとても有用な再生資源なのである。食べて排泄してそれが土に戻り植物を育て、その植物を草食動物が食べ、その草食動物を肉食動物が食べるという食物連鎖の原点でもある。何の利用もしないままに海に流してしまう現代都市社会のシステムはこの自然の連関システムを破壊する罰当たりな行動と言える。
以前、モンゴルを旅行したことがある。我々が宿泊しているゲル(テント)の周囲では彼らが飼っている馬が排泄し放題。隣のゲルに行く時も相当用心しなければ馬糞を踏んでしまう。初めのうちはおっかなびっくりつま先立って歩いていた。しかし2日もするとその自分の行動がいかに馬鹿馬鹿しいか気付いた。モンゴルの乾燥した草原では、馬糞があっという間に土に還元されてしまうからだ。こんもり排泄された馬糞が翌日にはもう周囲の土との区別がつかない状態になってしまう。見方を変えれば、それまで広大な大地と思っていた物は実は膨大なうんこの塊だったとも言える。つまり、ちょっとした肉眼的な違いや匂いでうんこと土とを区別すること自体が浅はかであることを思い知らされたのである。

太古の時代から私たち地球上の生物の生命の連鎖の重要な役割を担ってきたうんこ。しかし、世の中で私たちから最も嫌われる存在でもある。私たちはどうしてうんこを忌み嫌うのであろうか。
理屈好きな人は「不衛生だから」と言うだろう。確かに、私たちのうんこの構成成分を見ると、60%は水分。残る40%のうちの1/3は腸内細菌(大腸菌や乳酸菌など)とその死骸である。コレラ、赤痢、O157といった伝染病の有力な感染源であることは確かだ。
しかし、これは特殊な病原菌を持った人のうんこについての話である。健康体のうんこには病原性のある細菌は含まれていない。常在する腸内細菌はむしろ病原性細菌の侵入・増殖を食い止める強力なガードマンの働きをしている。また、私たちの代謝に欠かせないビタミンの一部の補給源でもある。私たちとその腸内細菌とは共生関係にあるのだ。他人のうんこはともかく己が生み出したうんこを不衛生と恐れる理由はない。
私が考えるに、うんこがこれほど嫌われる理由は病原性云々といった科学的な根拠以前に、本能的に色と匂いを不快と感じるという点にあるのだと思う。
うんこは消化液である胆汁中のビリルビンが腸内細菌によって代謝された生成物、ステルコビリンによって黄土色あるいは茶色をしている。爽やかな 色とは言えない。これがピンクかゴールドであったらうんこに対する印象がはるかに違ったのではなかろうか。
悪臭の元はインドール、スカトール、硫化水素などである。もしこれが芳しい香りであったらうんこの待遇は改善されていたかもしれないが、実は先ほど出てきたジャコウネコの分泌物から採られる香水の原料、ムスクの成分の一つがスカトールなのだ。さらには、やはり香りの王様と言われるジャスミンの成分にはインドールが含まれている。
人が快と感じる匂いと不快と感じる匂いには実は化学的にあまり大きな差がない。濃度とバランスで快にも不快にもなる。それくらい嗅覚はとてもデリケートで理不尽なのだ。
我々がうんこの匂いを悪臭と感じる理由は動物としての本能に由来すると考える。動物は自分の縄張りを誇示するために境界域に排泄物をまき散らす。一方、天敵からの攻撃を受けないためには自分の隠れ家に排泄物をためないようにする。私たち人間も、遠い種の記憶によって排泄物を遠ざけるように仕組まれているのではないかと考える。

病原性、見栄えの悪さ、悪臭などが嫌われることは理解できる。それでもなお、私はうんこがあまりにも不平等かつ不当な扱いを受けていると感じる。なぜならば肛門括約筋を境に内と外とで私たちの扱いが豹変するからだ。
自分の恋人に「君のすべてが好きだ」と言っておきながら、ついさっきまでその愛する人の一部であったうんこなのに、日の目を見たとたんに嫌悪すべき異物として扱う(稀に外へ出たうんこをこよなく愛する性癖の方もいるがそれは例外)。
自分のうんこにさえ手のひら返しをする。それまで自分の一部であったのに、外へ出たとたん、お前など自分とは縁もゆかりもない化け物だとばかりに忌み嫌う。
 私はことさらうんこを好きなれと言っているのではない。しかし、私たち自身がうんこを作り、排泄し続けること、そしてうんこが命の連環の重要なバトン役であることを忘れてはいけないと思うのだ。水洗トイレが普及し、うんこを肥料として使用しなくなった頃から急増した花粉症やアトピーは、もしかすると迫害されたうんこからの仕返しなのかもしれない。

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