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時間の速度

 私たちは3次元の空間に時間という4次元の自空間に存在しています。ところが、この4つの次元のうち、時間は他の次元とかなり異なっています。私たちは3つの次元、縦、横、高さにおいては正負のいずれの方向にも自分の意思で移動することができます。ところが時間軸だけは負の方向には動くことができません。未来に向かってしか動けません、しかも、この移動は自分の自由にできるわけではありません。自分の意思とは無関係に一定の速度で未来へ未来へと動かされるだけです。時間とは巨大なベルトコンベアであり、私たちはそこに載せられた荷物のような存在です。
このベルトコンベアの速度は一定です。生まれてからこのかた、1秒は1秒、1日は1日で、時の流れが速くなったり遅くなったりした経験はありません。時間は太古の時代から一定不変の速度で滔々と流れていると考えるのが常識です。 
 ところで、物理学で速度とは一定時間に進む距離(空間)のことです。したがって「時間の速度」という言葉は矛盾した概念で、あり得ない表現と思われる方もいらっしゃるでしょう。確かに以前はそう考えられていましたが、ところが実はそうではなさそうです。
アインシュタインの相対性理論によればすべての事象は相対的ですから、3次元の空間軸だけでなく、時間軸もまた相対的なのです。
実際に光速に近い速度で動くと空間が縮んで時間の流れは遅そくなります。 亜光速速度で飛ぶことができる宇宙船に乗って一年間、宇宙を旅して帰還したとすると、地球上では数百年過ぎているというようなことが想定されます。
この現象は日本のお伽噺、「浦島太郎」で、主人公の浦島太郎が竜宮城で数日間楽しい日々を送って帰ってみたら、地上では何百年もの時間が過ぎていたという話とそっくりです。そこから、こういう現象を「ウラシマ効果」と呼びます。
 現実には今の科学ではウラシマ効果を体験することはできません。なぜならば光速に近い速度で飛ぶ技術を持っていないからです。しかし、素粒子レベルの現象では確認されています。
また、重力が働くと同じ原理で時空が歪んで時間の流れが遅くなります。したがって何もない宇宙空間に比べて地球などの星の上の時は遅くなります。この理由でGPS衛星の内臓時計は毎秒当たり4.45/10億秒だけ遅く進むように補正されています。
 
 今説明した物理学的な時間の流れの変化は極限的な状況でないと現われません。しかし日頃私たちは、もっと劇的な時間の流れの変動を体験しています。それは私たちが体験する時間、心理学的な時間です。
 東日本大震災で被災した方は言うまでもありませんが、首都圏で帰宅難民となり、深夜やっとの思いで自宅に辿り着いた方も、3月11日の24時間はいつもより格段に長かったのではないでしょうか。それに比べて、無為に過ごす日曜日の24時間ははるかに短く感じます。つまり、3月11日は多くの人の心理学的な時間速度が有意に遅くなった日だったと言えます。
 非日常的な出来事があった時には、必ず時間の流れが遅くなるかというとそうではありません。長年思い続けていた女性とやっと念願がかなっての初デートは震災に優るとも劣らないビッグイベントです。それにもかかわらず皮肉なことに、こういう場合の心理学的な時間はスピードアップします。もっと一緒にいたいと思ってもあっけなくタイムアップです。
 特別なことがない日の時間の流れも、年齢によって大きく変化します。誰でも、子供の頃の一日が現在の一日よりもはるかに長かったという実感を持っているのではないでしょうか。加齢とともに時間の速度は速くなるのです。
 年齢と心理学的な時間の関係について、単位時間の長さは生きてきた年数の逆数であると言う心理学者がいます。すなわち1歳の時の一日を1とすると、10歳における一日は1/10、20歳では1/20になるというのです。
 私は今61歳ですから、私の体験的な時間の速度は10歳の時の6倍速くなっていることになります。さすがに、それほどの差は感じませんが、この説は当たらずと言えども遠からずではないでしょうか。それでは、この心理学的な時間速度の変化はどうやって生み出されるのでしょう。この問いには未だ誰も答えを出していません。そこで、以下に私の勝手な仮説を述べてみます。
 
 前回のコラムで10歳過ぎると、私たちの脳の大半は二度と再生しないと言いましたが、神経間の情報交換の主な部位であるシナプスは時々刻々生成、消滅を繰り返しています。むろん、10歳までは神経細胞自体が増殖していますから、シナプスの増加が10歳以降と比較にならないほど多いのは言うまでもありません。
一方、初老期から老年期になると、シナプスは新生されるよりも消失していく方が多くなります。子供の時間がゆっくりと流れて、加齢とともに時間がせわしく流れる理由はこのシナプスの増減過程に起因しているのではないでしょうか。
 シナプスの数の問題の他に、一つのシナプスにおける神経伝達物質の放出量の問題も考える必要があります。脳は課題を与えられるとシナプスでの神経伝達物質のやりとりが急増します。わくわくするデートの間と、つまらない授業を受けている時とは神経伝達物質の放出量が大きく異なっているはずです。さらに詳しく、報酬系、抑制系というように機能系別にみると量だけでなく、放出パターンも異なっているはずです。
 こういったことから私は、ヒトが体感する時間の速度はシナプス生成数と神経伝達物質の放出パターンのバランスによって決定するのではないかと考えます。
 物理学的に同じ年数を生きたとしても、どのような日々を生きるかによって心理学的寿命は大きく異なってくるのではないでしょうか。ただ生きながらえるのでなく、豊かな寿命をまっとうしたいものです。

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