医療法人社団求林会 クリニック西川 のブログ

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分かりました、ところで

先日、同居している息子夫婦との折り合いが悪くて何週間もの間一睡もできていないと訴える患者さんが来院されました。これまで自分がどれほど家族のためにしてきたか、それに対して嫁の感謝のきもちが見られない、またそれによって自分がいかに眠れない苦しいかを延々とくりかえし述べます。私が、「食事も全くとれていないとおっしゃいますが、体重の変化はないんですね」と話題を変えて質問しても、それには答えず、「先生、私は嫁をいい人だと思っています。でも・・・・・・・」と結局嫁に対する非難をくりかえすのです。
4回ほど同じ話を聞いたので、強引に話を割って「人間の歴史始まって以来、眠れないことが原因で死んだ人がいないこと」、「本当に1週間以上全く眠らないでいることは不可能だからいつか眠っているはずであること」などを説明して、「ここまでは分かっていただけましたか?」と尋ねました。
それを受けて彼女の口から出た言葉は、「ハイ先生良く分かりました。ところで、言い忘れていましたけれど、昔はこんなことはなかったんです。横になればすぐに眠れていたんです。こんなに何週間も全く眠れないなんて始めてで」、「それというのも嫁の帰りが遅いので、私は気になって・・・・・・・・・・・」。私の身体からどっと力が抜けてしまいました。この患者さんは私の話を全く聞いていなかったのです。

こういう患者さんはそれほど珍しくありません。その多くは古典的な診断法による神経症に属する方です。今の自分の苦痛を治してほしいと、言葉では言うのですが、本音(自分でも気付いていない)は自分がいかに苦しい思いをしているかを聞いてもらい、自分の主張を「その通り」と認めてもらいたいだけなのです。
ですから、こちらが、解決法を教えようとしても聞く耳を持ちません。こういう方は往々にして薬に対しても不信感を持っているので、薬を処方しようとすると、「薬は飲みたくありません」とおっしゃいます。話は聴かない、薬は飲まないならば、いったいどうして精神科医のところに来たのだろうと思ってしまいます。私たちは祈祷師ではないのですから。
精神科医がこういうことを言うと必ず、「精神科医なんだから患者さんの話をちゃんと聞いてあげるべきだろう」、「話をしに来たのだから、それを聴いてあげるのが役目だろう」とお叱りを受けます。世の中には、患者さんの話をひたすら聴き続けるのが良い精神科医だと考えている方が少なくありません。この誤った精神科医像が定着したために、保険医療における精神科カウンセリングが時間で評価されるという極めて馬鹿馬鹿しい事態になってしまったほどです。現在、保険診療での精神科カウンセリングは30分未満と30分以上とで点数に差をつけられています。
本当に20分話を聴く精神科医より40分話を聴く精神科医の方が優れているのでしょうか。そんなことはありません。もちろん、必要な話もしないで、ただ処方箋を書く医療は論外ですが、「ふーーん」、「へえー」、「そうですか」と相槌をうちながら延々と同じ話をきいていることが良い精神科医療とも言えません。
精神科カウンセリングとは患者さんが言わんとするところを要領よく汲み取って、整理してあげる。誤ったところを指摘して、良い方向に向くように交通整理して、その方向に進んでいこうとする患者さんの背中をそっと押してあげることです。

「分かりました、ところで・・・・」と切り出す患者さんには、同じ話をしているだけでは良くならないことを説明する所から始めなければなりません。そして、今までとは違った視点から物事を見つめ、これまでとは異なった行動をとってみることによって救われることに気付いてもらう必要があります。
たとえば、過去に人にしてあげたことばかりを思い出すのを止めて、人からしてもらったことを思い返すのも一つの手です。そうして、他人に対する感謝の念が湧いてくると、それに反比例して自分をさいなんでいた恨み辛みの気持ちが薄らいでくるのです。
また、今までとってきた、やろうという気にならなかったから動かないという行動パターンを変えて、気が乗らないままにとりあえず行動してみることも必要です。一般的に気持ちが整わなければ行動できないと考えられていますが、実は行動が気持ちをリードすることもあるのです。
そして何よりも大事なことは、まず他人の話に耳を傾ける姿勢を作ることです。そうでなければ現状を変えることはできません。ところが、完全に神経症の状態に陥ってしまっている方にこういうことを気付いていただくのはそう簡単なことではありません。

「簡単に分かりましたというのではなく、もう少し真剣に私の話を聴いてください」と言いながら、患者さんの顔をみると、もう私の話を遮ってしゃべりだそうとしています。なんとなく悪い予感。その口から「ハイ良く分かりました、ところで・・・・・」という言葉が今にも出てきそうだからです。

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