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金の斧

イソップの寓話に「金の斧」というお話があります。皆さんよくご存じだと思いますが、改めてあらすじを述べます。

あるきこりが川辺で木を切っていましたが、手を滑らせて斧を川に落としてしまいました。きこりが困り果てていると、そこにヘルメス神が現われて川から金の斧を拾ってきて、「お前が落としたのはこの金の斧か?」と尋ねました。きこりが「違います」と答えると、ヘルメスは次に銀の斧を拾ってきて、「それではこの銀の斧か?」と尋ねます。きこりはそれも違うと答えます。ヘルメス神が最後に鉄の斧を拾ってくると、きこりは「これが私の斧です」と答えました。ヘルメスはきこりの正直さに感心して、金、銀、鉄、すべての斧をきこりに与えました。
これを知った欲張りのきこりは、わざと斧を川に落として途方にくれたふりをしました。ヘルメスが前の時と同じように金の斧を持って現れると、欲張りきこりは「それが私の斧です」と答えました。ヘルメスは呆れて何も渡さずに去ってしまいました。おかげで欲張りきこりは金の斧どころかもともと自分が持っていた鉄の斧も失ってしまいました。

この話は無欲と正直を美徳とする寓話として解釈されていて、同じような話は日本の民話にも存在するとのことです。欲張りを戒める日本の民話は「瘤取り爺さん」、「舌切雀」など枚挙のいとまがありません。それだけ、昔から欲張りで嘘つきが多かったということだと思います。
さて、この「金の斧」をよくよく考えてみると、このきこりが単なる無欲な正直者だとは思えません。むろん大嘘吐きの業突く張りだとは思いませんが、きこりという仕事に誇りを持った職人気質の男であり、物の本当の価値を知っていたことが重要なポイントではないかと考えます。
彼が金の斧や銀の斧を断ったのは、金や銀は値が張って、飾るにはよいかもしれませんが、そんな柔らかい材料でできた斧は木を切り倒すという本来の目的には適さないということが大きな理由であったのではないかと思うのです。
値段の高低と有用性の高低とが無関係であることは斧に限らずあらゆるものに言える自明のことです。ところが、すべてを金の尺度でしか判断しなくなった現代では、そんな当たり前のことが分からない人(欲張りきこり)が増えています。

タレントが単に料理を食べて、「う~~~ん 美味しい」と言って見せるだけの何の意味もないグルメ番組とやらがあります。そこで供される料理のほとんどは確かに美味しいのでしょうが、中には「この人たちは舌で食べているのか?」疑いたくなる料理もあります。たとえば、世界三大珍味のフォアグラとキャビアとトリュフをてんこ盛りにした丼。確かに材料費からいって目玉が飛び出るような高価な一品かもしれませんが、ごちゃまぜにされてしまったらそれぞれの風合いが失われてしまって美味しいはずがないと思います。それなのに、そう仕事の多くないタレントはこう言います。「美味しい 最高です 究極の丼です」と。一方、「わあ 美味しそう 私も食べてみたい」という視聴者が少なくないのですから困ったものです。こういった食べ物は食欲を満たすのではなく、金銭欲を満たす料理です。味覚が退化して金銭感覚だけが肥大した現代人にぴったりの一品なのかもしれません。
衣料装飾品もそうです。もともと大型のトランク作りで定評のあるフランスブランドのスカーフを気取って身に纏ったり、馬具製造から始まって革製品に定評のあるブランドのセーターを得意げに着たり。本当の物の価値を知っている人が見たら吹き出すような価値観の人がたくさんいるのです。

スポーツの世界に「名選手必ずしも名監督ならず」という言葉があります。むろん、ある程度以上の技量が備わっていなければ人を指導することはできませんが、人を指導、育成するにはプレイする能力とはまた質のちがう能力を要求されるのです。ところが先の名言があるにもかかわらず、スポーツの技量が優れていると何でもできると錯覚する人は少なくありません。元スポーツ選手の国会議員が大量に排出される理由です。ちょっとサッカーが上手かっただけで、「旅人」とか称してあちこちに顔出す勘違いまで出てくる始末です。
一般の社会においてもそうです。売り上げナンバーワンの名営業マン=名課長ではありませんし、名部長=名社長ではありません。逆に、課長時代にはさしてうだつのあがらなかった人が重役に就任したとたんに大活躍することも稀ではありません。適材適所。営業に向いた人と、人や組織をマネージメントすることに向いた人がそれぞれいるのです。
それに、多くの人のトータルの能力はそれほど差がありませんから、むしろ何かに優れていれば、何か欠点があると考える方がよいのです。それなのに、営業売上で好成績をあげると、人よりもすべてに優れていると錯覚しがちです。周囲も同じように錯覚します。質や特性を考慮しないで何か一つの軸における優劣でしかものを判断できない人が多くなってしまったのです。

人々から物を多面的に深く考える能力が衰えていった原因は一つではないと思います。一つには、何でも単純に分かりやすくしてしまった方が楽だからだと思います。一つの軸で定量的に判断する方が労力が要りません。
こうして、小学校に入る前から学力という人間の能力のごく一部だけを取り上げて何年にもわたって競争させられます。会社に入っても営業収益という数字に追いまくられます。その結果、傍から見れば出世したと見えるのに、実際には自分に向かない仕事や職責を背負いこんであくせく苦労する。そしてその苦労の割に成果が上がらず、自らも幸せ薄く、空しさだけが残る人生を送る人が後を絶たないのです。
見かけ倒しの金の斧ではなく、切れあじ鋭い鉄の斧の人生もいいもんですよ。

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