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一目惚れ(fall in love)

「Fall in love」。なんてすごい言葉でしょう。日本語でいえば「一目惚れ」。こちらも素敵な響きの言葉です。
広辞苑によると「惚れる」とは「心を奪われるまでに異性を慕う。恋慕する。」とあります。別な意味としては「ぼんやりする。放心する。」とあります。特定の異性を恋い焦がれて、その人にまつわること以外の思考機能が停止あるいは極端に低下した状態を言います。
この際機能低下するのは思考力だけではありません。その人以外に関することには無感動になりますし、仕事にも集中できず、食事も喉を通らなくなり、眠れなくなります。つまり、思考力以外に、感情、意欲すべての機能が損なわれます。精神医学的にみた場合、相当重度の精神障害です。
さらに、一目惚れとは一目見ただけで、何の前ぶれも無く、一瞬にしてこの惚れた状態になってしまうのですから、統合失調症など及びもつかないほど重症かつ急性の精神障害と言えます。心拍数が一気に増加し、血圧が上昇、瞳孔は散大して呼吸困難感をおぼえる。いったい脳の中はどうなっているのでしょう。
この精神障害のメカニズムを研究するためには一目惚れ状態のカップルを集めなければなりません。ところが、これが相当に困難な作業です。

世の中には数多くのカップルがいますが、一定期間付き合っているうちに相手のことを理解して段々と好きになり、やがて惚れた状態になるというケースがほとんどではないでしょうか。中には、心ときめくものはないけれど、経済的将来性を考慮すればこの辺りで我慢しておこうと考えて繋がっているケースや、空家歴十数年、本来はどうでもいい相手だけれど、これを取り逃がしたら一生独り身で過ごさなければならないという、切羽詰まったケースも少なくないように思います。
お互いが相手に一瞬で恋に落ちるケースは稀有と言えましょう。実際、多くの一目惚れは片想いに終わるようです。片想いは相思相愛よりも却って恋慕の情を強化します。人格が成熟していて自制心が完成している人ならば、自分がしばらくの間病に伏せっているだけで済むのですが、未熟な人格の持ち主であると自分の行動をコントロールできずにストーカーと化します。恋に落ちた時点で大変な病気にかかってしまっているのですが、ストーカーになると相手を巻き込んだ大事件になってしまいます。
ところで片想いの相手を追いかけまわす行為のすべてがストーカー行為かと言うとそうでもありません。初めのうちは好きでなかったのに、相手から繰り返しプッシュされているうちに、情にほだされて次第に好意が芽生えてくることだってあります。昔から「好きになったら押しの一手」とか「嫌よ嫌よも好きのうち」などと言われるように、相手が自分を一目惚れしてくれなかったとしても諦める必要はありません。ドラマ「101回目のプロポーズ」の例もあるではないですか。
ただ、どこまで押してよいのか、どこまで来たら諦めなければいけないのかの見極めは非常に難しいのです。絶対的な指標はありませんが、「嫌」が精神的な「嫌」であるうちは大丈夫ですが、身体症状(頭痛、嘔吐、下痢など)を伴う生理的な嫌悪感になった場合には早晩、警察から呼び出しが来るものと覚悟すべきでしょう。ただ、通常相手のそういう細かい症状を把握することは困難ですから、「嫌い」と言われたら額面通りに受け取って身を引く方が安全です。

閑話休題、今述べたように一目惚れ同士の研究対象が少ない上に、人間は嘘をつくので本当の「一目惚れ」ケースを集めることさらに困難です。当然ながら、動物実験の結果をそのまま人間に当てはめることができませんから、一目惚れの脳内メカニズムは未だに解明には至っておりません。
現時点でまことしやかに言われている説を二つ披露しましょう。一つは似た者同士説です。耳、目、鼻、口の形がお互いによく似ている者同士あるいは配置が似ている者同士が一目惚れしやすいと言うのです。この説は何度も繰り返してみた顔や記号に対して親近感を持つと言う認知心理学、発達心理学における研究に基づいています。
一方、生物学的な遺伝子研究からは対極的な説が出されています。この仮説は細菌やウィルスに対する免疫機能に関連した遺伝子の型が異なっている者同士ほど一目惚れしやすいというものです。免疫機能に関する遺伝子が多様なほど、外来生物からの侵襲に対して安全性が高く、生存に有利です。このために子孫が生き残る確率が高くなるように、免疫系の遺伝子が遠く離れた異性を好きになるようなプログラムを本能として組み込んでいるという仮説です。
確かに、長く夫婦を続けていますと面白いように顔形までもが似てくることは日常的によく目にします。ですから前者は容易に受け入れやすい説ですが、最もよく似ている兄弟姉妹に対して一目惚れはしませんし、出来立てほやほやの熱々カップルがみな似た者同士ではありません。
一方、後者は生物学研究における究極のセオリー「生体機能は合目的的に作られている」という前提から導き出した、やや強引な仮説のように思います。だいたい、一目会った時に遺伝子の型が離れているという情報をどうやって得るのでしょうか。動物の行動の多くが遺伝子によって規定されていると言う考え方にはおおむね賛成ですが、遺伝子と行動との間を橋渡しする因子が解明されない段階では、結論ありきの牽強付会の説の域を脱しないように思います。
二つの仮説を組み合わせると、一目惚れは「似て非なる者同士間で起こりやすい」ということになります。

「一目惚れ」は極めて重篤な精神障害ですが、幸いなことに予後はよいのです。一生、この状態が続くことはありません。どんなに惚れていても、晴れて結ばれると、ほぼ半年以内に寛解状態に回復します。この辺りも「似た者同士説」や「遺伝子説」だけでは説明ができない点です。長く連れ添う夫婦はますます顔形が似てくるのに、病状は快方に向かいます。遺伝子だけで規定されるならば、時間がたっても病状に変化はないはずです。
精神医学的には病気がよくなって喜ばしいのですが、御当人たちは必ずしも幸せになる訳ではありません。むしろ、失望、落胆に陥ります。なぜならば、病気のひどい時には笑窪に見えていたものがあばたであったことに気付くからです。病状が重症であった人ほど、病期と回復期とで、パートナーに対する評価のギャップが大きいので、より辛い半生を送ることになるでしょう。
病気の時の方が治った時よりも幸せであるということが、他の精神障害と決定的に異なる点です。

この精神障害は思春期が好発年齢です。「老いらくの恋」とは言いますが、残念ながらこの病気は加齢とともにかかりにくくなります。胸がキューンと締め付けられ、その相手以外この世のすべてが見えなくなってしまう、あの病気に是非とももう一度かかってみたいものです。

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