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新型インフルエンザ対策―逆転の発想―

メキシコでの流行が発表されてから2週間ほどで新型インフルエンザの感染者は世界で29カ国・地域、4,353名に達しました。わが国でも5月9日にカナ ダから帰国した高校生2名と付き添いの教諭1名が新型インフルエンザに感染していたことが判明しました。ついに新型ウイルスが日本国に上陸したのです。
また、彼らと同じ飛行機に乗っていた乗客の中に感染の疑いが濃厚な人もおり、今後は水際作戦に加えて国内での感染拡大への対策にも本腰を入れなければならなくなりました。
この間、厚労省、検疫所、国立感染症センター、地方自治体などの関係者の方々の努力にはもっと評価するべきでしょう。一般の人が能天気に遊び呆けていた ゴールデンウィークの期間、こういった関係者は不眠不休で防疫に努めてきました。と言うか、一般の人が大挙して海外に遊びに行ったお陰で、彼らの業務は数 倍増しました。
日頃、厚労省の悪口ばかり書いていますが、今回ばかりは心から感謝して「御苦労さま」と申し上げなければなりません。彼らの活躍のお陰でWHOがフェーズ4を宣言してから10日以上の時間を稼ぐことができたからです。
前回説明したようにウイルスは生物とも非生物とも言えない不死身の粒子です。したがって、永久にこのウイルスの国内侵入を阻止し続けることは不可能です。 だからこそ、時間稼ぎがとても重要になってきます。ウイルス対策は戦争と非常によく似ているので、勝利するためには敵を知り、備えを固め、敵の弱点を攻め ることが肝心と言えます。実際に本格的に国内での感染が始まる前に敵の状態を詳しく知り、それに応じた防御態勢を築いておけるか否かによって、その後の感 染被害の大きさが格段に違ってきます。
実際、今回稼げた10日余の時間の間に新型インフルエンザウイルスについていろいろなことが分かってきました。判明した事実には吉報も凶報もあります。
好ましくない事実の一つ目は、このウイルスの感染力が高いということです。つまりヒト-ヒト感染能力を十分に確立してしまっており、通常のインフルエンザと同じように飛沫によって周囲数メートルの人々に感染するのです。
二つ目の残念な情報はこのインフルエンザが分類上はAソ連型ウイルスと同じ、H1N1ウイルスであるにも関わらず、遺伝子配列が相当に違っているために、 Aソ連型ウイルスに対する免疫が無効だということです。つまり、去年Aソ連型インフルエンザにかかったり、ワクチンを接種していたとしても、このウイルス の防御には役に立たないのです。
一方、喜ばしい情報も3つ入ってきました。一つは、このインフルエンザウイルスが今のところ弱毒性だということです。すなわち、世界中がここ数年、人での 流行に戦々恐々としてきた鳥インフルエンザウイルス(H5N1)と違って、全身の細胞を侵すことは無く、季節性のインフルエンザと同様に呼吸器系の細胞に しか侵入しないのです。
二つ目は鳥インフルエンザウイルスのように若い人に過剰な免疫反応(サイトカインストーム*)を引き起こす遺伝子を有していないということです。したがって、若年層を中心に累々と死者の山を築く恐れがありません。
最後の吉報は、予想したとおりタミフルとリレンザが有効であるということです。ですから、感染してから発症後48時間までの間にこれらの抗ウイルス薬を適用すれば軽症で治ります。
要するに、今回のインフルエンザウイルスは新型なので感染を防御することは困難ですが、毒性については新型とは言っても従来の季節性インフルエンザと対して変わらないし、治療も可能だということです。

こういった情報は今後の国内対策に何らかの影響を与えるのでしょうか。私は大きく方針変更すべきだと思います。なぜならば、従来政府が策定していた新型イ ンフルエンザ対策は強毒性のH5N1型インフルエンザがヒト―ヒト感染性を獲得して人間世界に流行した場合を想定したものでした。ところが、今現実に流行 の兆しが見られるインフルエンザはこのタイプではなく、弱毒性のH1N1型であったのですから、対応策も変更するのが当然と言えます。敵が違えば戦略、戦 術も変えなければなりません。
まずはあまり過剰に反応しないことです。まだ水際での検疫で一人の感染者も出ていないこの1週間に、海外旅行もしていない発熱患者が医療機関での診察を断 られるケースが何件も起こりました。本当に医学を学んだのか疑わしくなるような医師の過剰反応には、同じ医師として慙愧に堪えません。国内にウイルスが 入った現在、このような過剰反応がさらに増えることが予想されます。医師会などを通じて各医療機関が足並みを揃えて、沈着冷静な行動を取ることが肝要で す。
厚労省は新型インフルエンザに対するワクチン製造を急ぎ、また2次感染者が出ないように、感染者と接触した可能性のある人たちの追跡に力を注ぐと思いま す。こういった地道な努力はとても大切だとは思いますが、人数に限りがある保健関係者は今でさえ過労を強いられています。世界の感染地域が拡大して感染者 が次々と入国してきた時に、この作業をどれだけ続けることができるでしょうか。
そこで、国内での感染者が増えて、2次感染も出現した場合には、戦略を大きく転換してみてはどうでしょう。いつまでも水際作戦だ2次感染対策だと言っていないで、いっそみんなで感染してしまうなんていう作戦はどんなものでしょうか。
繰り返して述べますが、このウイルスは今のところ弱毒です。ただし、いつまでも大人しくしている保証はありません。ヒト―ヒト感染を繰り返しているうちに 変異して強毒型に変わる可能性があります。完全遂行が不可能な感染防止を続けているうちに時間が経って強毒化してしまってはかえって厄介です。敵は今のと ころ威勢はよいが兵力の弱い部隊だと分かったのですから、塹壕に立て籠って防御ばかりしていないで、強力支援部隊が現れる前にこちらから撃って出るのも妙 手ではないでしょうか。
弱毒だけでなく抗ウイルス薬も有効なのですから、免疫不全の病気の人や重篤な心肺疾患のある人を除いて、健康な国民はさっさと感染してしまうのです。丈夫な人は2,3日苦しむだけで済みますし、重症になりそうな人は抗ウイルス薬で直ちに治療すればよいのです。
感染すれば数日の間にこのインフルエンザに対する免疫を獲得します。そうすれば、このインフルエンザはもはや新型でも何でもなく、ごくありふれたインフル エンザに格落ちしてしまいます。ワクチン完成を何ヶ月も首を長くして待つ必要もありませんし、経済的にも大助かりです。しかも、こうして国民の大多数がこ のウイルスに対する免疫を持っておけば、その後ウイルスが強毒型に変異しても、もう心配することはありません。
とは言っても、やはり不幸にして亡くなる方もでますので、医師の立場でこの提案をあまり大声で言うと、顰蹙をかうこと間違いなしです。ましてや、来るべき選挙で頭が一杯の舛添さんや麻生さんが賛成するはずもありません。
本当は最も効率よく、しかも被害者を最小限に食い止められる対応策だと思うのですが、恐らく日の目を見ることは無いでしょう。

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*サイトカインストーム:サイトカインは細胞間の情報伝達の ために分泌されるタンパク質である。免疫や炎症に関連するものが多い。通常ウイルスなどが侵入すると免疫系の防御反応の一つとして産生されるが、それが過 剰になると気道閉塞や多臓器不全を引き起こし、かえって生体を死に至らしめる。このサイトカインの過剰産生状態をサイトカインストームと言う。スペイン風 邪や鳥インフルエンザによって若くて健康な人ほど死に至った例が多かったことの原因と考えられている。

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