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老人の不思議な会話(加齢による思考障害)

私の所属するゴルフクラブは会員の平均年齢がかなり高い。最近若い方も入会されてきたが、それでも65歳の私などまだ小僧っ子の方に属する。
時として風呂の脱衣場はさながらデイサービスの風呂場の様相を呈する。先日もご老人お二人の会話に笑いをかみ殺してしまった。
お一人が相方に「君は若いからパワーがあるね」と話されている。相手の方も「いや、○○さんもまだまだ相当なもんですよ」。
私から見るとどちらが年上かわからない。お二人とも甲乙つけがたい超高齢者にしか見えないのだが、10代の頃には30歳以上の女性は皆おばさんに見えたのに、自分が30歳になると30歳と35歳の違いが分かるようになったことから考えると、彼らの目から見ると82歳と86歳の違いが一目瞭然なのかもしれない。
それはともかく、皺や白髪はいかんともしがたいが、皆さんとてもお元気だ。まあ、元気だからこそゴルフをしていられるのだが、当クラブはカートではなく歩いてのラウンドが原則なのだが、みなさん颯爽とした足取りで18ホールを回って来られる。しかもハーフ2時間半を超える方は少ない。ワンハーフ(27ホール)回る方も少なくないし、90歳を超えて毎日のようにラウンドされているご婦人もいらっしゃる。
こんなクラブの昼食の風景がまた面白い。一緒にラウンドしている仲良しの4人で食事をしているのだが、聞こえてくる4人の会話がしばしば噛みあっていないのだ。一人が孫の話をしているのに、別の人はマンション売却の話をしている。もう一人は持病の話といった具合。自分勝手にそれぞれが思いついた話をしているのだが、どういうわけかうまいタイミングで「そうだね」といった相槌を打つのだ。
声さえ聞こえなければ、皆で一つのテーマについて談笑しているとしか見えない。きわめて和やかな会話風景が成り立っている。なんでこんな奇妙な会話になってしまうのだろう。
私は加齢とともに脳に対する入力系の機能が低下することによるものだと思う。

ヒトの場合、情報の入力の大半は視覚と聴覚による。この両者とも加齢によって例外なく機能が低下する。奇妙な会話の場合には聴力の低下が大きく関係しているだろう。相手の話がよく聞き取れないから、話題に興味がわかないし、細部に対してコメントが出しにくい。
だが、聴力低下だけでは説明がつかない。相手が執拗に同意を求めると、案外適切な応答をする。まったく聞こえていないわけではないのだ。だから、音として聞こえていても、それを必要な情報として入力処理をする能力も低下していると考えられる。
ある出来事に対処する際、新しく入ってきた多くの情報を論理過程で組み立てていくのは相当のエネルギーを必要とする。それに比べて過去の経験に基づいてパターン化した反応をするとかなり効率が良い。
高齢者は多くの経験を持っているので、様々な事象に対するパターン化された行動様式も豊富だ。したがって、若い人と比べて、その都度新しい情報を吟味して論理思考をするのではなく、パターン化された反応をする傾向が強くなる。こうして新しい情報を取り込む機能が低下してくるのだ。だから、高齢者は過去の経験に似た状況に対する対応する能力は若い人よりも優れているが、未知の出来事への対応力は劣っている。高齢者は相当に知能が高い人でも新しいことを学んで取り入れることが苦手なのだ。
先ほどの会話の場合にも、相手が孫の話をしていても、それを興味深い新たな情報としては捉えずに、自分の孫との経験の中から似たような記憶を取り出してきて、「ああ、あの時と同じようなことだな」と入り口で処理してしまう。だから、相手の話を思考の奥深くへ入力しないために孫の話題に思考が連動しないのだと考える。

入力機能の低下のほかに、私は思考過程の機能低下も加わっているような気がする。
2008年のコラム「統合失調症あれこれ(3)思路障害」で解説したが、思考障害は大きく「思考内容の障害」と「思考過程の障害」と「思考体験様式の障害」とに分けられる。このうち思考内容の障害と思考体験様式の障害は統合失調症などの重篤な精神病にしか見られないが、思考過程の障害は広く様々な病態においてみられる。
脳が老化すると迂遠化、冗長化、保続化が起きてくる。その結果、同じ観念が繰り返して現れて話がそこから進まなかったり、言わんとすること以外の観念が浮かんできてそれを切り捨てることができなかったり、細かい枝葉の説明に捉われてなかなか結論にたどり着かなくなる。
結果として、話が回りくどくて同じことばかりしゃべるようになる。マンション売却の話をし始めると、その話題から転換できなくなる。しかもマンション売却に纏わる枝葉末節のことにも話題が跳んでしまって、延々とその話をし続けることになる。とても相手の孫のことにまでかまっていられなくなるのではないだろうか。

老人の奇妙な会話は決して相手のことなど考えない、自己中心的な我がままによるものではないのだと思う。加齢による脳の機能低下の結果なのだろう。こうして話題が噛み合わないまま、仲良し4人の和やかな語らいが続いていく。

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