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症状と徴候

頭痛や吐き気のように、本人が主観的に感知する心身の不健康感を「症状(Symptom)」という。これに対して発熱や嘔吐のように客観的に検知できる心身の異常を「徴候(Sign)」という。
多くの場合、症状と徴候は同時に現れる。たとえば頭痛を訴える人の体温を測ると39℃を示すとか、嘔気を訴えているうちに実際に嘔吐するとかだ。
しかし、症状と徴候は必ずしも手を携えて現れるわけではない。症状はあるのに兆候は見られない、またこれとは逆に症状は出ていないのに兆候だけが現われるということは決して珍しくない。
自覚的な症状だけでそれを裏付ける兆候がなかなか認められない例としては頭痛がある。痛みはおうおうにして本人が感じるだけで客観的に測定できない場合が多い。したがってその程度も他人と比較することができないし、己の過去の体験と比較することも難しい。「痛みに二番なし」という諺が生まれる所以だ。
一方、自覚症状がないのに徴候だけが現れる病態もある。この手の病気は痛くもかゆくもないために病気の存在がなかなか気づかれない。気づいた時には手遅れということが少なくない。
このタイプの病気の好例は糖尿病だろう。糖尿病は血糖値が高くなっていても、病状がそうとう進行して種々の合併症が出るまではなかなか自覚症状がない。定期的に健康診断をしないと早期発見が難しい病気の一つだ。
さて、徴候を発見する技術はここ数十年の間に急速な進歩を遂げた。昔は徴候を見つける手段は見て(視診)、触って(触診)、聞いて(聴診)が主なものだった。補助的な道具といっても聴診器、打鍵槌、拡大鏡程度のもので、五感を研ぎ澄まして僅かな徴候を見つけ出さねばならなかった。多くの内臓の病気は皮膚の変化を伴わないから、当時の診断は神業に近かったといえよう。
並みの人間でも内臓の診断を可能にしたのがX線写真による画像診断の発明だ。X線撮影によって体の内部の様子を映像としてとらえることが可能となった。また、心電図、脳波などの電気生理的な診断法が開発され、目や耳ではわからない病態生理をとらえることができるようになった。
画像診断はその後、CT,MRI,SPECT、PETとさらに急速な進歩をとげた。また内視鏡や超音波エコーなども加わって、今やほとんどの臓器の内部を手術しないでも、無侵襲で覗けるようになった。さらに、生化学の分野の進歩もすさまじいものがある。その結果、血液から得られる情報も倍増した。その結果、それまで見つけることができなかった微細な徴候がこういった高度の医療機器の発達によって検出可能になった。
大変喜ばしいことではあるが、一面、あまりにも徴候を重視しすぎて症状を軽視するようになってしまった。患者さんは明らかに苦痛の症状を訴えていても、検査で異常が発見されないと病気とは認めず「気のせいです」と片づけてしまう風潮が根付いている。その説明に納得せず、症状を訴え続けるとどうなるか。そういう方の大半は私たちの科に回されてくるのである。
徴候偏重主義はさらに進んで、最近は検査一辺倒の医療になってきている。私の知人(医師)が腹痛で母校の大学病院を受診した。外来の担当医は「この辺りが差し込むように痛いのですが」と説明する先輩の姿を見もせず、たくさんの検査伝票に次々とペンを走らせたそうだ。
お腹が痛いと訴える患者さんを前にしたならば、検査をする前にまずはお腹を露出させて、その部分に手を当ててみるのが基本中の基本ではないかと、その医師は憤って帰ってきた。
たとえ検査をした方が手っ取り早く病変を見つけられるとしても、まずは手を当てることが血の通った医療の原点、「手当て」なのではないだろうか。「手当て」を怠って、ただ検査をして、出てきた結果の正常、異常の組み合わせだけから診断をするのであれば、やがて医師は必要なくなる。コンピュータの自動診断の方が正確な診断をするからだ。検査偏重主義は医師が自らの存在価値を否定している行為であることにどうして気付かないのだろう。
私が精神科に進む決心をしたきっかけの一つは恩師、新福教授の臨床講義の中の一言だ。
「この患者さんは頭が重いと訴えている。しかし、これまで彼の苦痛は気のせいとされてきた。こういう症状をないがしろにしてはいけない。症状ともっと真剣に向き合いなさい。」

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