私は波の穏やかなことで知られる瀬戸内海に面した広島県の歯医者の一族に生まれました。学生時代はラグビー部に所属し、公私共あまり優秀な学生ではありませんでした。しかし、本当に多くの方の支援を頂き歯科医師として大変貴重な経験を積ませて頂きました。そんな私が歯科医師を志すきっかけとなったのは、祖父で先代の川本尚志先生の生き様にありました。
祖父尚志は第二次世界大戦の最中、単身上京し歯学の道に進みます。その後、終戦を迎え原爆で荒廃した広島に向かい、「歯科医療で世の中のお役に立つ」ことを願い、その信念を晩年まで貫いた人物でありました。
「自分よりも人の役に立つことに徹する生き方をしなさい。」
祖父は繰り返し私にそう教え、私の心の中にいつも響く言葉となっていました。開業してしばらく、目も回る様な忙しさの中で生き方や考え方に悩む時期がありました。そんな時、祖父の考え方が「忘己利他」という古いことわざであることを知りました。
「己(おのれ)を忘(わす)れ他(た)を利(り)するは慈悲(じひ)の極みである。」
自分が多くの方の支えの上で、何のために歯科医師を受け継がせて頂けることになったのか。なぜ祖父は、自分にくらべ明らかに素行の悪い孫の私に幸寛(しあわせをひろめる)という名前を与えてくれたのか。それは唯一つ、「忘己利他に歯科で生きよ」と人生の役割を託したかったのであろうと考えるようになりました。
2017年、大切な祖父の一文字を頂き医療法人社団桜尚会を設立させて頂きました。われわれ桜尚会は、「忘己利他の精神」のもと、従来の歯科診療の枠にとらわれず、歯科口腔外科の診療を通じてより多くの食事に満足のいかない人々を支える医療を自ら創ることを理念に掲げております。同時に、そのような理念を共感する社員の幸福を追求することを目指しております。