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医療法人社団 博雅会
大江医院

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C型、副作用少ない新薬 耐性ウイルス出現には注意

「2014年10月24日(金)日経新聞らいふプラスより抜粋」
肝臓は沈黙の臓器といわれ、病気になっても気づきにくいことが多いです。慢性肝炎の大半を占めるウイルス感染によって起こるC型やB型の肝炎も同様で、肝硬変や肝臓がんと進行する危険があります。今年、肝炎の新薬が登場しました。副作用の抑制や高い薬効などが期待されており、治療法も変わりつつあります。 肝炎治療の最前線を2回にわたり紹介いたします。
C型肝炎の新治療薬が9月に発売されました。「ダクラタスビル塩酸塩(一般名)」と「アスナプレビル(同)」という2つの飲み薬で、一緒に服用します。通常使われる「インターフェロン」は効果が期待できる半面、副作用の懸念も強いです。新薬は体力のない高齢者やインターフェロンが効かない患者でも投与できるメリットがあります。
C型肝炎はウイルス(HCV)が引き起こす肝炎です。感染した人の血液を介してうつりますが、感染力が弱く日常生活ではほとんどうつりません。昔は輸血や注射器の使い回しなどが感染の原因でしたが、今は薬物乱用などで起こる注射器の使い回しや、ピアス、入れ墨などが感染の原因と考えられています。

【感染の症状は軽く】
感染すると、発熱や体のだるさ、食欲不振など急性肝炎の症状が現れますが、程度は軽く肝炎に気づかないケースが大半です。感染者の約7割が慢性肝炎に移行します。その後、感染が持続すると高い確率で肝硬変になり、さらに肝臓がんを発症します。C型肝炎の国内患者数は推定150万人程度ですが、治療しているのは約40万人にとどまっています。
治療では通常、インターフェロンを使います。ウイルスの増殖を抑えるために体内で分泌されるたんぱく質で、これを人工的に作り投与します。他の薬との併用が基本です。かつて週3回だった注射は、持続型のペグインターフェロンにより週1回で済むようになりまた。治療期間も最短で半年になるなど治療法は進化しており、ウイルス排除の成功率も9割近くに達しています。
インターフェロンは治療の中心ですが、副作用の懸念も強いです。だるさや発熱、筋肉痛などが起き、長く続けると髪の毛が抜けることもあります。東京都内に住む50代男性のAさんは治療でだるさを覚え、仕事を休まざるを得ませんでした。「二度とインターフェロン治療はしたくない」と思いましたが、主治医と相談し、完治を目指して投与を続けています。
数は少ないですが、うつや間質性肺炎になり、治療を中断せざるを得ない患者も中にはいます。特に体力のない高齢者やうつ症状が現れた患者は、C型肝炎治療を中止する例もあります。また、いったん治ったと判断された場合でも、ウイルスが再び増えて肝炎をぶり返してしまう患者がいます。

【学会も指針を改訂】
今回の新薬はこうしたインターフェロン治療が難しい患者にとって朗報になっています。2剤を半年間飲み続けることで、それぞれ細胞内でHCVが増える際に 利用するたんぱく質の働きを妨げます。標的とするたんぱく質は別なので、一緒に使えば相乗効果が期待できます。臨床試験(治験)では8~9割の患者でウイルスを排除できたとのことです。
飲み薬で副作用が少ないと良いことずくめのようですが、注意点もあります。それは薬が効きにくいように変化してしまう耐性ウイルスの問題です。インターフェロンは体の免疫機能を利用するため耐性が出にくいです。一方、ウイルスを直接に攻撃する薬はウイルスが変異して耐性を持ちやすくなります。これまでの治療法はインターフェロンが中心にあることで耐性ウイルスの出現を抑えていたと言われています。
2種類の新薬はこうしたインターフェロンの作用を期待できず、耐性ウイルスが出現しやすい状況にあります。このためインターフェロン治療が可能な人はできる限り従来の治療法を受けたほうが良いとされています。
肝臓の専門医らで構成する日本肝臓学会も注意喚起や医師への周知に乗り出しました。新薬の発売に合わせてC型肝炎の治療ガイドラインを改訂し、9月に発表しました。
この中で、新薬による治療はインターフェロンの治療ができない患者に限ることにしました。ガイドライン作成者の一人は「今まで治療をあきらめていた人にも 広がる意味で、新薬は非常に価値があります。しかし、その使い方については議論が多かったです。」と話しています。
治療でウイルスを排除できれば、肝炎の進行を抑えて肝硬変や肝臓がんの発症リスクも大幅に下がります。厚生労働省はC型肝炎の治療費を補助しており、新薬も対象になっています。血液検査などで肝炎ウイルスの感染が疑われたら、早めに肝臓の専門医を受診したいですね。リスクも含めて医師と十分に話し 合いながら治療を進めることも重要です。