医療法人社団杏優会ハート歯科クリニック

歯科医師になろうと思い始めたきっかけは、進路選択で悩んでいた頃でした。サラリーマンであった父親が悩んでいた私に対して、「会社対会社の付き合いより個人対個人の付き合い（自分が行った行為に対して直接感謝されるような職業）が良いのではないか」とアドバイスをくれたことが、私の将来の職業を決める上で大きな影響を与えることとなりました。

国立歯科大学・大学院卒業後はに、医局の関連病院として茨城県日立市の病院歯科に1年間勤務する機会がありました。そこでご高齢の患者様もたくさん来院されていたのですが、皆様付き添いの方と必ず一緒に来院していました。次回の予約を取る際も付き添いの方の都合や予定に合わせて、何とか苦労して来院日を決めるという形となっておりました。色々な都合を合わせて来院する患者様とご家族の方、そして、それ以上に多くいるであろう、治療はしたいが都合が付かず来院できない方々。

「私たち歯科医師が患者様宅へ訪問する治療（訪問診療）をもっと推進していかなければならない」
当時は、まだほとんど普及していなかった訪問歯科診療ですが、そのとき私は初めて訪問診療についての必要性を強く感じました。同時に、訪問歯科診療についてもっと勉強をしなければいけないと思い、東京の歯科医院に勤務しながら訪問診療に携わりました。入れ歯の調整や作製、むし歯の治療などを行っていけば良いと思っていたのですが、さらに嚥下（飲み込むこと）障害に対しての診断やリハビリを行うことも歯科医師が行う大事なことであることを学びました。

さらに、ただ訪問して歯科治療をしていれば良いのではないとも考えております。お話をする機会が少なかったり、またなかったりする高齢者の方たちが増えてきていて、近年報道されている孤独死の問題。こうした方々に私たちがお伺いすることで歯科診療以外にも「生きる元気」を与えることが出来れば、それは歯科医師として以上に一人の人間として何にも代え難い喜びだと考えております。それは本当に何気ない話として、天気のこと、家族のこと、自分自身のこと、良いことや悪いこと等かもしれません。患者様の昔の懐かしいお話を聞かせていただくことかもしれません。

しかし、そうしたコミュニケーションを通じて、

患者様やご家族の方に、「（先生）出会えてよかった」
実は、それこそがかつて父親が私にかけた言葉である「個人と個人の付き合い」ができる仕事の喜びなのではないかと最近思います。最後に、今まで長い間この地域を支えてくださっていた方々に、精一杯の恩返しをしていきたい！そのように思い、これから訪問診療をしていきたいと思います。