涙液分泌能低下

初診に適した診療科目

涙液分泌能低下はどんな病気?

涙液分泌能低下とは、涙腺の機能の低下により、角膜や結膜が乾燥する状態を指します。
初期の段階ではゴロゴロするなどの軽い異物感、粘り気のある目やに、目がかすむなどの症状が現れます。
進行すると徐々に角膜の表面が荒れ、細かい混濁が生じ視力の低下などを引き起こします。
この状態に至ると乾性角結膜炎、いわゆるドライアイとなります。中年以後の女性に多く見られる傾向があります。

乾性角結膜炎以外には自己免疫疾患の一種であるシェーグレン症候群が原因として挙げられます。
これは唾液腺、上気道粘膜の分泌の減少が症状として現れる疾患です。
シェーグレン症候群を原因とする涙液分泌能低下の場合、発症は男女比で見ると約1:30とされており女性の発症が特に多いとされています。

治療は主に人工涙液や角膜保護薬の点眼を用いて行われ、乾燥を防ぐことが優先されます。
また原因となる疾患がある場合はその治療を行うことで涙液分泌能低下の症状も改善するケースが多いです。

主な症状

涙液分泌能低下では、主に目の異物感、目やに、目のかすみが初期に見られる典型的な症状と言えます。
乾性角結膜炎の状態に至ると涙の分泌量が減ることで光の乱反射が起こり、視界がぼやける、ものが見えにくくなる、視力が落ちるなどの症状も見られます。
乾燥によって目の表面が傷つきやすくなり、感染症にを生じるケースもあります。

シェーグレン症候群を原因とする涙液分泌能低下の場合、目の乾燥以外に口の乾燥も代表的な症状と言えます。
涙腺や唾液腺が血液細胞に攻撃を受けて機能低下し、涙や唾液の分泌が減少します。
目の痛みや充血などの他にも口臭、虫歯、歯周病などの症状が現れます。
症状が軽度の場合、症状は口や目の症状に限られますが、重症の場合に全身の臓器にさまざまな症状を引き起こします。
過剰に増えた免疫グロブリンによって生じるもので、関節炎、甲状腺炎、間質性肺炎、慢性気管支炎、皮疹などが挙げられます。
まれに悪性リンパ腫を合併する場合もあります。

主な原因

涙液分泌能低下は目の表面にある涙の層のバランスが崩れたり、シェーグレン症候群などの免疫疾患、涙嚢炎などが原因として挙げられます。

目の表面は涙によっておおわれていますが、その涙自体も油層・涙液層・ムチン層の3層構造を呈しています。
この層のバランスが崩れることで目に涙が密着しにくくなります。この状態が継続して続くことで乾性角結膜炎と呼ばれるようになります。

シェーグレン症候群は涙液分泌能低下の原因として挙げられることが多い疾患です。
免疫のバランスが崩れることで目や口の乾燥を引き起こしますが、何をきっかけに免疫のバランスが崩れるのかは明らかになっていません。
同一家系内での発症が見られることから遺伝できな要因も関連しているとされています。

涙嚢炎は涙を溜める涙嚢に炎症を生じている疾患で、涙の通り道である鼻涙管の閉塞、狭窄によって生じるとされています。
先天的な要因で発症している場合と、結膜炎や蓄膿症、ポリープなどを要因に発症している後天的なものとがあります。

主な検査と診断

涙液分泌能低下の診断は問診、涙の量や質の検査、角結膜上皮障害の確認などによって行われます。
原因となる疾患としてシェーグレン症候群が疑われる場合には口や目の乾燥の程度を評価する検査や血液検査なども必要に応じて行われます。

涙の量や質を調べる検査としてはシルマーテストと呼ばれる方法が一般的です。
まぶたのふちに試験紙を付着させて、涙の量を測定し、乾くまでの時間によって涙の質を確認できます。
また、角結膜の上皮細胞が障害されているかどうかは、染色液を用いて涙が目の表面に均等に広がっているかを調べることができます。
主に問診による自覚症状や臨床症状、これらの検査の結果から診断がくだされることが多いです。

シェーグレン症候群の疑いがあればガムテスト、サクソンテストによって唾液の量を計測したり、特有の自己抗体や全身の炎症の程度を調べるために血液検査なども行われます。
涙腺、唾液腺生検は組織の一部を顕微鏡で調べる検査で、特徴的な痕跡を確認できるため重要な検査です。

涙嚢炎が疑われる場合には涙道通水試験をはじめ、眼科的な検査と耳鼻科的な検査が両方行われます。

主な治療方法

涙液分泌能低下の治療は原因となる疾患が特定されていれば、その治療を行いながら目の乾燥に対する対症療法が行われます。
人工涙液や角膜保護薬の点眼によって目の乾燥を防ぐことが重要です。
点眼薬以外に涙を増やす方法としては涙点プラグと呼ばれる治療法があります。
これは目頭にある涙点をプラグで塞ぐことで、少ない涙を目の表面に保つ方法です。
症状が進行して乾性角結膜炎を生じている場合に検討される治療法です。

原因がシェーグレン症候群である場合、根本的な治療法はありません。目の乾きには涙点プラグの他、涙点焼灼術などの治療法が選択されます。
どちらも涙が鼻に降りていかないようにする方法です。

涙嚢炎が原因となっている場合には抗生物質によって炎症を抑えたり、手術による治療が行われます。
鼻涙管が閉塞、狭窄した部分にブジーを挿入し、鼻涙管の通りを改善させる治療などがあります。涙嚢鼻腔吻合術と呼ばれる方法では、涙の通りをよくする効果が期待できます。