髄膜炎(小児) ズイマクエン ショウニ

初診に適した診療科目

髄膜炎(小児)はどんな病気?

髄膜炎とは脳や脊髄にある髄膜に炎症が起きる病気のことです。髄膜とは脳を保護する役割を持ち、脳や脊髄を覆っている3層の膜です。この髄膜に細菌やウィルスが入り込んで炎症を起こしたり、がんや免疫異常による病気が原因で髄膜炎を発症することがあります。

髄膜炎には細菌感染による細菌性髄膜炎と、細菌以外を原因とする無菌性髄膜炎の2種類があります。死亡率が高く重症になりやすいとされているのが細菌性髄膜炎です。

髄膜炎にかかると代表的な症状として発熱、頭痛、吐き気、首の硬直などが挙げられます。重症化した場合には意識を失ったり、けいれんなどを引き起こす場合もあります。一方で子供や高齢の患者の場合、このような代表的な症状が見られないことも多く、早期発見が難しいとされています。髄膜炎は一般的に小さな子供もかかりやすいことから、日頃の体調変化に注意する必要があります。月齢の高い乳児や小児では呼吸から侵入した細菌による感染が多く、新生児の場合はまれに血流の細菌感染が原因となることもあります。

主な症状

髄膜炎で最も多い症状は発熱、頭痛、嘔吐、首が硬くなるなどがあります。年齢や重症度によっても症状は異なり、大抵は発熱など風邪とよく似た初期症状が現れ、数日かけて進行するケースが多いです。炎症が脳にまで影響する段階になると意識障害やけいれん、麻痺など神経に関わる症状も現れます。また、細菌性髄膜炎は進行するのが早く、無菌性髄膜炎は神経に関わる症状がほぼ見られないことも特徴です。

新生児や乳児の髄膜炎では、発熱、嗜眠傾向(しみんけいこう)、呼吸障害、黄疸(おうだん)、哺乳不良、嘔吐、下痢などの症状が多く、診断が難しい場合があります。また大泉門(だいせんもん)の開いている乳児では大泉門がふくらんでいることがあります。また、乳幼児に関しては細菌性髄膜炎、無菌性髄膜炎のどちらでもまれに典型的な症状が現れないこともあります。乳幼児に関しては機嫌が悪い、ミルクを飲まない、元気がないなど日常と比較して体調の変化を慎重に観察する必要があります。

主な原因

髄膜炎はウイルスや細菌による感染で炎症が起こります。髄膜と脳や脊髄の間には髄液が流れており、その中に病原体やがん細胞などが入り込むことで髄膜炎が発症します。まず臓器器官で感染し、血液を通して髄膜に炎症を起こすことが多いです。

新生児の髄膜炎に多いのが敗血症によるものです。出産時に母親の産道を通る過程で最近に感染してしまう場合があるとされています。B型連鎖球菌、大腸菌、リステリアなどの感染が多い傾向があります。

一方、乳児期や幼児期の髄膜炎には髄膜炎菌、インフルエンザ菌や肺炎球菌による感染が多いです。これらの菌を含む唾液や鼻水などと接触することで感染する場合が多いとされています。以前はインフルエンザ菌による感染が多い傾向にありましたが、予防接種が普及したことで現在では割合は少なくなっています。

無菌性髄膜炎においてはエンテロウイルス、アデノウイルス、マイコプラズマ、寄生虫、がんなどが原因となります。ウイルスや寄生虫が原因の場合、接触感染、飛沫感染、食べ物、動物との接触など感染経路は様々です。

主な検査と診断

髄膜炎の検査は、まず診察において脈拍や呼吸などの全身状態と、代表的な症状である首の後ろの硬直がないかなどを確認します。さらに血液検査と髄液検査を行うことで、原因を特定します。

また細菌性髄膜炎が疑われていても、脳の炎症や細菌以外の原因で症状が現れている可能性があります。他の原因で症状が起きているかどうかも、これらの検査を行うことによってそれらの可能性を否定することができます。

髄液検査では、腰の背骨の間に針を入れて髄液を取り出し、髄液に含まれる細胞の数や成分を調べます。髄膜に炎症が起きているかどうかも確認でき、さらに細菌が含まれていた場合にはその種類を特定することができます。細菌性、結核性、真菌性、ウイルス性いずれかが分かることでその後適切な治療を行うことができます。

脳浮腫や脳に損傷があったり、出血性の疾患が見られる場合には髄液の採取ができないため、事前に頭部のCT検査やMRI検査を行うことも多いです。髄液の検査ができない場合にはまず血液の培養検査が行われます。

主な治療方法

細菌が原因となっている髄膜炎の治療には抗菌薬が使用されます。ウイルス性の場合、抗ウイルス薬が効果を発揮するHIVウイルス、ヘルペスウイルスなどには薬物療法を行うのが一般的です。水分を補給しながら体力の回復を促して症状の軽減を待つ場合もあります。

結核性の髄膜炎には抗結核薬、真菌性の髄膜炎には菌の種類に合わせた薬を使用します。がんを原因とする髄膜炎はがん治療と並行して薬で症状を緩和させることが多いです。また、免疫疾患による髄膜炎には免疫を抑制するステロイドホルモンや免疫抑制剤を使用します。

髄膜炎は進行が早いことが多いため、特に子どもで症状が重いとされる場合には髄液を採取する前に抗菌薬を投与し、原因となる菌の種類が判別出来次第、適した抗菌薬に変更するなどの対応も少なくありません。

また髄膜炎を原因とする難聴を防ぐためにコルチコステロイドを使用する場合もあります。患者が生後6週間以上で、医師が必要と判断した場合に投与されます。