アンジェルマン症候群

初診に適した診療科目

アンジェルマン症候群はどんな病気?

アンジェルマン症候群とは神経系に関連する遺伝子疾患の一種です。
現れる症状は幅広く、重度の運動発達遅滞、精神遅滞、重篤な言語障害、歩行失調や四肢の振戦、頻繁に笑ったり、微笑んだり興奮したりといった場にそぐわない愉快なふるまいが典型的な特徴です。
1歳くらいから症状があらわれはじめ、アンジェルマン症候群を発症している子供は特有の顔つきをしています。
約15,000に1人に発症がみられるとされており、難病にも指定されている疾患です。特定の遺伝子の働きが失われることで発症します。
また、遺伝的な要因も一部関係しているとされています。

先天性の疾患であるため、症状は小児の時期から現れます。一人歩きは5歳頃に習得するケースが多く、言葉の理解も徐々に進みます。
しかし発語は困難であるケースも多いです。また成人になると活動性が低くなり運動量が減るため肥満になりやすい傾向があります。

治療は基本的に現れる症状に対しての対症療法となり、抗てんかん薬、睡眠薬など必要に応じて薬が用いられます。

主な症状

アンジェルマン症候群の場合、重い知的障害、てんかん、ぎこちない動きなどが典型的な症状です。
また、ささいなことでよく笑うなども特徴のひとつです。また顔つきにも特徴があり、顎が尖っている、口が大きいなども特徴と言えます。
小頭症と、熱性けいれんのような痙攣発作などもよくみらる症状です。てんかんの症状はアンジェルマン症候群の患者の約8割に見られます。

発達遅滞はおおよそ生後6か月ごろに最初に発見されることが多いものの、特徴的な所見は1歳を過ぎるまでは出現しないため正確な診断までに数年を要するケースも珍しくありません。
成長していくにつれ、理解は進みますが発語は現れないことも多いです。

行動の面では水やビニールなどのキラキラしたものを好んだり、好奇心旺盛な一面が見られます。落ち着きがないとされる場合もあります。
成人以降ではこれらの症状が落ち着き、反対にあまり動かなくなるため肥満になりやすいという傾向があります。また乳児期や幼児期では睡眠障害を合併することも多いです。

主な原因

アンジェルマン症候群は先天的な神経系の遺伝子変異を原因として発症します。
この変異は一般的に、遺伝によるものより突然変異によるものが多いとされています。
具体的には15番染色体のq11-q13と呼ばれる場所にあるUBE3A遺伝子の働きが関係しています。
UBE3A遺伝子が正常に働かなくなる要因としては15q11-q13の母性染色体微細欠失、15番染色体父性片親性ダイソミー、ゲノムインプリンティングの障害である刷り込み変異、UBE3Aの変異などが挙げられます。異常の原因が明確でないケースも全体の約1割ほど存在します。
この中では、15番染色体の機能が欠ける15q11-q13の母性染色体微細欠失に母親からの遺伝性がみられるとされています。

またこの中で15q11-q13の母性染色体微細欠失、15番染色体父性片親性ダイソミーの場合は次子への遺伝性は見られませんが、刷り込み変異、UBE3Aの変異には次子への遺伝性が見られます。

主な検査と診断

アンジェルマン症候群は主に症状の診察と分子遺伝学的検査、細胞遺伝学的検査によって診断されます。
診断のための基準となる典型的な症状を示したものがあり、それを元にアンジェルマン症候群が疑われます。
分子遺伝学的検査には具体的にメチル化試験、UBE3A遺伝子の配列解析などの方法が含まれ、この検査によって全体の約9割の異常を特定することができるとされています。

片親特異的DNAメチル化試験と呼ばれる検査では、15q11-q13の母性染色体微細欠失、15番染色体父性片親性ダイソミー、刷り込み変異を発見することができます。
また染色体の転座や逆位などを調べるために細胞遺伝学的検査が行われますが、これらの特徴が発見されるケースはごくまれです。
UBE3A遺伝子の配列解析を行うと、UBE3Aの変異を見つけることができます。

上記の検査で原因を特定できなかった場合は、現時点では遺伝学的機序が解明されていないケースと言えます。

主な治療方法

アンジェルマン症候群の治療は、主に現れる症状に対しての対症療法や包括的な療育が中心となります。
先天性の遺伝子疾患であるため、根本的な治療法はありません。
新生児の哺乳障害に対しては特殊な乳首を用いたり、胃食道逆流に対応しては直立姿勢の維持や蠕動運動促進剤を用いることもあります。

アンジェルマン症候群の患者にはてんかんや睡眠障害がよく見られ、それに対して抗てんかん薬や睡眠薬などが用いられます。
痙攣発作がコントロールできない患者に対してはケトン食などの食事療法が検討されるケースも多いです。
多動などの症状に対しては環境を整えることに加え、薬物療法でも効果が期待できます。
破壊的行動や自傷行為などに対する行動修正、教育的訓練、修養プログラムなどは周囲のサポートも不可欠です。
同様に、発達遅延に対しては療育などによって成長をサポートしていくことが重要です。
発語に至らないケースが多いですが、言語などの理解は進むため、日常生活の質を高めることにも繋がります。