子宮発育不全 シキュウハツイクフゼン

初診に適した診療科目

子宮発育不全はどんな病気?

子宮発育不全とは、子宮の大きさが年齢に応じた正常な子宮と比べ、小さい状態を指します。
診断基準は明確にされておらず、正式な病名ではありません。
先天的な要因によって生じる場合と後天的な場合があります。先天的な場合、生まれつき子宮の形態異常があり子宮の働きが十分に果たされていないというものです。
後天的な場合、卵巣機能が低下し女性ホルモンが十分に産生されないために起こる発育不全が原因となっていることが多いです。
化学療法や自己免疫疾患に伴う場合もあります。
自覚症状が現れることは少なく、月経がはじまらないために発見されるケースが多いです。
子宮発育不全症を発症している場合、不妊症や流産の原因となることがあります。

先天的な要因による場合、薬物治療の効果は期待できない場合が多く、症状によって手術が検討されます。
後天的な要因の場合はホルモン療法が行われますが、早期に開始することで発育不全に陥らないよう予防する効果も期待できます。

主な症状

子宮発育不全の状態であっても症状が何も現れないケースも多く、長い間発見されずにいることも少なくありません。
現れる主な症状としては過少月経、生理不順、無月経、重い生理痛などが挙げられます。18歳までに初潮がはじまらない原発性無月経も症状のひとつです。
特に重い月経痛は子宮の形状に先天的な異常がある場合によくみられます。

子宮の本来の役割として妊娠と出産があります。
正常周期の月経はそのために不可欠ですが子宮発育不全の状態は正常周期の月経が起こりにくく、それによって妊娠や出産にも大きな影響を及ぼします。
主に子宮が正常に比べて小さく、子宮内膜に充分な厚さが足りないことで不妊症や流産を引き起こすケースが多いです。
また分娩の際に胎位の異常、微弱陣痛、胎盤残留などの異常をきたしやすいという特徴もあります。
しかし生まれつきの子宮奇形を持つ人でも妊娠や出産が問題なくできるケースもあり、個人差によるところも大きいです。

主な原因

子宮発育不全は先天的な原因から生じるものと、後天的な原因から生じるものとに分けられます。
主に先天的な子宮発育不全としては、胎児期の子宮ができあがる過程に問題が生じることで起こりやすいとされています。
女性の約5%に何らかの先天的な子宮発育不全がみられるため、特に珍しいものではありません。ミュラー管の発育不全が原因であることが多くあります。
その他にも形の異常にはさまざまな種類があります。

後天的な子宮発育不全の場合、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの産生不足によるものが最も多いとされています。
何らかの原因で卵巣機能が低下することによってエストロゲンの産生が妨げられ、低エストロゲン状態が長くつづ子ことで子宮発育不全となります。
また、女性ホルモンは脳と卵巣から分泌されるホルモンに働きによって産生されるため、脳や卵巣に何らかの異常を来しているケースも多いです。

子宮発育不全は不妊症の原因となる可能性があると知られていますが、妊娠の成立には子宮内膜症の機能が重要です。子宮の大きさはそれに次ぐものと言えます。

主な検査と診断

子宮発育不全は主に内診と経腟超音波検査の結果から判断されます。
必要に応じて骨盤MRI検査、子宮卵管造影検査、子宮鏡検査が行われる場合がありますが、多くの場合内診と経腟超音波検査のみで子宮奇形や子宮内膜異常が確認できるため、比較的容易に発見することができます。

またエストロゲンなどの女性ホルモンの数値を調べるために血液検査が行われる場合もあります。
また、MRI検査で詳細の確認が困難な場合に行われるのがソノヒステログラフィーと呼ばれる検査です。
これは子宮内に薬剤を注入して行うレントゲン検査で、MRI検査とは異なるアプローチで子宮内の形状などを確認できます。
また先天性の子宮奇形の場合には、腎臓や尿管の異常を伴うケースが多いです。主に造影検査ではこれらの異常も発見することができます。

子宮発育不全は正式な病名ではなく、明確な診断基準もありません。
そのため確定診断と呼ぶことはできませんが、多くの場合、上記の検査によって見られる特徴的な所見と、問診の結果などから総合的に判断されます。

主な治療方法

子宮発育不全の中でも先天的な要因による子宮発育不全の場合は、現在のところ根本的な治療は不可能とされています。
そのため妊娠することが困難であるケースも多いものの、子宮奇形の種類によっては問題なく妊娠、出産に至るケースもあります。
また、手術によって子宮の形を正常な形に近づける方法も存在します。
具体的な方法としては、腟腔を形成して拡張するフランク法、皮膚移植により腟壁を形成するマッキンドー法、骨盤腹膜から腟壁を形成ダビドフ法、S状結腸を腟管として用いるルーゲ法などが挙げられます。これらの手術を行った後は腟管の状態を維持する必要があり、その方法としては定期的な性交渉、筒状の拡張器具であるプロテーゼを用いた管理方法があります。

後天的な要因による子宮発育不全の場合は、治療としてホルモン療法が検討されます。
不足しているホルモンを補充する治療法で、この治療法は思春期以前などの早い段階で治療が開始できれば子宮の発育不全を最小限におさえる効果も期待できます。