出血性乳房
出血性乳房はどんな病気?
出血性乳房とは、妊娠中や授乳中ではない場合に乳頭の一方か両方から血液や茶褐色の液体が分泌される疾患を指します。このような分泌物は血液に限らず黄色や白の場合もあり、透明、混濁しているものなどさまざまです。
このように乳頭から何らかの分泌物が出ているものを乳頭異常分泌と呼びます。自然に分泌物が漏れ出てくるケースもあれば、乳頭をつまむと分泌される場合もあります。
多くは下着に付着した分泌物を発見して受診し、診断に至るケースが多いです。
原因となる疾患としては乳管内乳頭腫、乳腺症、催乳ホルモンであるプロラクチンの異常分泌、乳がんなどが挙げられます。
まれなケースでは薬剤の副作用を原因にするものもあります。
特に血性、血液性の分泌物が特徴である出血性乳房の場合、乳癌から起きている場合も多いとされています。
乳癌の可能性が疑われる場合には細胞や、組織を採取して詳しく検査が行われます。
原因となる疾患を治療することで出血性乳房の症状も改善していく場合が多いです。
主な症状
出血性乳房の症状としては、赤や茶褐色の分泌物が乳頭から分泌されます。これは血性、血液性の場合が多いです。分泌物は透明であったり混濁している場合もあります。
乳房には15~20の乳管があるとされていますが、分泌物はこの中の1本、もしくは複数から出るとされています。
乳頭からの分泌物は出血性乳房のような血液性のもの以外にも多くあり、特に疾患などの可能性が低い分泌物もあります。
女性の場合には、特に生殖可能年齢であれば、衣服がすれる、性的に興奮するなどの要因で分泌物が乳頭から生じることは正常な場合がほとんどです。
サラサラした液体状のものや、混濁した白色、透明な分泌物はほぼ異常がないと考えられます。
一方異常な分泌物の場合、乳頭の陥没や皮膚の腫れが見られたり、自然に片方の乳房のみから分泌物が生じる場合などが挙げられます。
また男性が乳頭から分泌物を生じた場合は、分泌物がどのような状態のものであっても何らかの異常を示している場合が多いです。
主な原因
出血性乳房は、乳管内乳頭腫、乳腺症、プロラクチンの異常分泌、薬剤の副作用、乳癌などを原因としている可能性があります。特に血液やそれに似た分泌物を生じる場合、乳腺症、乳管内乳頭腫、乳癌によるものが多いとされています。
出血性乳房が疑われる症状が現れた場合、元となっている疾患を特定することが重要です。
乳腺症はホルモンバランスの変化などによって乳房に痛みが生じたり乳房内にしこりができるものです。
女性ホルモンが過剰に分泌されることで症状が現れます。特に30〜40歳代の女性に多くみられます。
乳管内乳頭腫とは乳汁の通り道である乳管内に腫瘍ができる疾患です。
良性腫瘍であるものの、血性分泌物が生じたり乳癌に似た症状が現れるのが特徴です。30〜50歳代の女性に多くみられます。
乳癌とは乳腺の組織にできる悪性腫瘍を指します。乳管から発症することが多く、乳房にえくぼやただれなどの変化が見られ、乳頭から分泌物が出ることがあります。
女性のがんの中では最も多いがんで、40〜60歳代後半の女性に多く見られます。
主な検査と診断
出血性乳房の診断は、主に問診、血液検査や細胞診、X線検査などの結果から判断される場合が多いです。薬の副作用を原因とする可能性もあるため、問診によって精神安定薬、高血圧や胃潰瘍の治療薬を服用していないかも確認することも重要です。
血液検査では血液中のプロラクチンの量を測定します。プロラクチンの値が異常に高い場合には、脳下垂体などの異常が疑われます。
また分泌液の潜血反応や細胞診の検査を行い、がん細胞がないかを確認します。
乳頭から造影剤を注入して乳管内のしこりの有無を確認する検査も行われます。
このX線検査によってしこりが確認できた場合には、乳管を一部採取して顕微鏡でより詳しく確認します。
この検査で見つかる小さな乳がんの場合、適切な治療を行えば問題なく治癒する場合がほとんどとされています。
出血性乳房の検査は、原因となる疾患を特定する目的で行われます。
分泌物が1回の月経周期よりも長く続く場合や、発赤、腫れ、膿の排出などの症状が見られた場合には早期に医療機関を受診することが大切です。
主な治療方法
出血性乳房は、原因となる疾患の治療によって改善することが多いです。40歳以上の女性で特に分泌物が片側の乳房のみから生じ、血が混じっている場合、乳癌の可能性が疑われます。
出血性乳房の原因が乳癌であった場合には、がんの進行の程度を確認し病期に適した治療が行われます。
主に乳房全切除術、放射線治療、薬物療法などの方法があります。中心となるのは手術による切除です。
また出血性乳房の原因として挙げられることが多い乳腺症の場合、対症療法を中心に経過観察となる場合が多いです。
乳房にしこりを生じている場合にはしこりから水を抜く処置などが行われます。
乳管内乳頭腫が原因となっている場合には、基本的に良性の腫瘍であるため経過観察となることも多いです。乳癌との判別を確実に行うことが重要です。
分泌物を生じている乳管の切除も検討されます。乳管の切除は局所麻酔で行うことができる比較的簡易な手術で、日帰りで行うことが可能です。