馬蹄腎 バテイジン

初診に適した診療科目

馬蹄腎はどんな病気?

馬蹄腎とは、両側の腎臓の下方が中央で融合して、U字型で馬の蹄のような形をしている腎臓の先天的な形態異常を指します。
腎癒合異常の中で最もよくみられるものです。男女比は2:1となっており、男性に発症が多い傾向があります。

馬蹄腎であっても特に症状が現れない場合もありますが、感染症や腎臓の機能が低下する原因となる場合があります。
多くは胎生期の腎臓の発生過程で生じるものと考えられています。馬蹄腎の発生頻度は約2,000人に1人の割合で発症するきわめてまれな疾患と言えます。
また18トリソミー症候群やターナー症候群の患者には、馬蹄腎がみられる頻度が高いとされています。

馬蹄腎を発症している場合、尿路結石や水腎症、尿路感染症などを合併するケースも多く見られます。
男児には特に尿道下裂や停留精巣、女児には双角子宮や重複腟を合併するケースも多いです。

症状が現れた場合には左右の腎臓がつながった部分を手術で切り離す治療が必要です。
 

主な症状

馬蹄腎を発症していても小児の半数以上では症状がみられず、一生無症状のまま過ごす人が多いとされています。
症状が現れるケースでは、体を過度に伸展させたときに痛みを感じる場合があります。これは馬蹄腎を発症すると腎臓の融合部は背骨の上をまたがるために痛みが生じます。
また、尿の流れが悪くなる尿流通過障害によって水腎症や尿路結石、重複尿管を起こしやすいという特徴があります。
これらの症状は、腎臓の融合部が大動脈と大静脈分岐部周辺の神経や尿管などを圧迫するために発症すると考えられています。

合併症を発症した場合、その他にも血尿、腹痛、腰痛などの症状が現れることが多いです。特に尿の流れの停滞や結石、感染に注意する必要があります。

これまでに挙げたような合併症がある場合には、手術で融合部を両側に離す手術が行われます。合併症や症状が無ければ特別な処置は必要ありません。

馬蹄腎を発症している場合、その他の先天異常も認められるケースが多い点も特徴です。

主な原因

馬蹄腎は先天的な形態異常が原因となって起こります。
胎生期の腎臓の発生過程で起こりますが、多くは胎生4~6週で尿管芽が造後腎組織に入る頃に異常が発生する場合が多いと考えられています。
腎臓が回転、上昇する前に、左右腎下極が腸骨動脈前面で癒合することで、癒合部が上昇しなくなりU字のような形をした馬蹄腎が発生します。
癒合部位は峡部と呼ばれ、大動脈や下大静脈の前面に位置しています。
水腎症を合併することが多いのは、通常、尿管は峡部の前面を走行するためです。

馬蹄腎の発症には遺伝的な要素も関連していると考えられています。
しかし特定の遺伝的素因は現在のところ明らかになっていません。

また、先天異常と合併している割合は約30%、神経管閉鎖障害の小児の約3%,Turner症候群の患者の約60%で馬蹄腎が認められるという報告もあります。
膀胱尿管逆流、停留精巣、尿道下裂、双角子宮、中隔腟、一側多嚢腎などの合併症は成人よりも小児に多く見られます。

主な検査と診断

馬蹄腎の診断には、造影検査(静脈性腎盂撮影)をはじめとする画像診断によって行われます。
尿路系だけでなくほかの器官の先天的異常を合併していることがあるため、それらを調べる検査も必要です。
画像検査では腹部超音波検査、CT検査、排泄性尿路造影検査などが行われます。
馬蹄腎の約半数の症例は無症状であるため、別の疾患の検査で行われた腹部超音波検査やCT検査などで偶然に発見されることも多いです。

これらの検査によって馬蹄腎と診断された場合には、さらに状態を詳しく確認するための検査が行われます。
MRI検査、血管造影検査、腎シンチグラフィなどが挙げられます。これによって合併症を発症するリスクがあるかなども確認できます。

馬蹄腎の合併症に多く見られる水腎症、尿路感染、尿路結石に伴い発生する症状から医療機関を受診し、診断に至るケースも多いです。
また、馬蹄腎は胎児の段階で形成されるため、出生前超音波検査で腎臓部分に峡部が検出されて発見に至る場合もあります。

主な治療方法

馬蹄腎の治療は、症状がなく合併症も見られなければ特別な治療は行われない場合がほとんどです。
そのため半数近くは経過観察になり、治療が必要なケースは半数以下となります。
主に合併症が頻発したり、痛みや合併症による症状の影響が大きい場合には手術による治療が検討されます。
特に水腎症や尿路結石などを頻繁に発症する場合には注意が必要です。

手術の方法としては腎臓の繋がっている部分を切り離す頬部離断術や、尿の通り道を修復する腎盂形成術などがあります。
頬部離断術による方法が一般的で、融合部を切断し,左右の腎臓を正常な位置に戻すことができる方法です。
また、症状が軽度な場合には対症療法も検討されます。

腎臓の先天異常によって腎臓の機能が低い小児には腎移植や透析が必要になるケースがありますが、馬蹄腎の場合そのような重症なケースはまれと言えます。
馬蹄腎の疑いがある場合にはまず泌尿器科を受診し、治療の必要があるかを診断してもらうことが大切です。