放射性膀胱炎

初診に適した診療科目

放射性膀胱炎はどんな病気?

放射性膀胱炎とは、骨盤内の放射線治療を原因として発症する出血性膀胱炎を指します。
一般的に知られる膀胱炎は細菌やウイルスの感染が原因となるもので、放射性膀胱炎とは発症の原因が異なります。
放射線治療の合併症の一種で、多くは骨盤内への放射線照射をしてから6カ月〜10年の間に発症します。
放射性膀胱炎を発症すると血尿、尿の回数が増える、排尿時の痛み、残尿感などの膀胱刺激症状が現れます。
重症の場合は血尿をコントロールできなくなり、尿路変更術と呼ばれる手術が必要になるケースもあります。また重症化すると命に関わる危険性のある疾患です。

骨盤内の放射線治療を行う原因となる疾患としては子宮頸癌、直腸癌,膀胱癌,前立腺癌などが挙げられます。中でも放射性膀胱炎を発症する要因として最も多いのが子宮頸癌の放射線治療と言われています。

放射線治療中の合併症で発症した場合、自然治癒するケースも多いです。しかし改善が見られない場合には高圧酸素療法と呼ばれる方法で治療が行われます。

主な症状

放射性膀胱炎を発症すると一般的な細菌性の膀胱炎と同様に頻尿や残尿感、排尿時の痛みや尿が白く濁る、血尿などの症状が現れます。

膀胱は尿をためるための袋状の臓器で、膀胱炎は膀胱の粘膜に何らかの原因に
よる炎症が生じることで発症します。
放射性膀胱炎は出血を伴う出血性膀胱炎の一種で、尿が赤くなる血尿が典型的な症状と言えます。
膀胱粘膜の一部から出血しているのではなく、全体から出血している点が特徴と言えます。軽度の出血の場合、実際に尿を見ても確認できない場合もあります。
中等症に進行すると目で見て分かる血尿となります。
重症になると尿の中に血の塊が混じるようになります。細菌性の膀胱炎に多い発熱の症状は現れない場合が多いです。

早期発見のためには血尿、頻尿、排尿痛が現れた場合に早期に医療機関を受診することです。
その際に放射線治療を受けたことがある場合には医師に伝えるとよいでしょう。このようなケースに限らず、治療歴を医師に伝えることは診断のために役立ちます。

主な原因

放射性膀胱炎を発症する原因は過去に行われた骨盤内の放射線治療です。
主に子宮頸癌、直腸癌、膀胱癌、前立腺癌などの治療が原因となって発症します。最も多いとされるのは子宮頸癌の治療によるものです。
発症には照射線量も関係しているとされており、照射線量が50Gy以下の場合、発症頻度は約3%です。照射線量80Gyを越えて行われた場合、その発症頻度は約12%にまで上がります。
また照射線量が90Gy以上の治療が行われた場合には、より症状が重い放射線性膀胱炎を発症する可能性がより高くなるとされています。

放射性によって生じる障害は基本的には組織が傍血管性、低細胞性、低酸素状態になることです。
このことから長期的には膀胱の線維化が見られる場合もあります。

放射性膀胱炎は放射線治療を受けた後に発症しますが、長いものでは照射から10年経過して発症する場合もあります。
そのため検査を行ってもすぐには原因が特定できない場合もあります。

主な検査と診断

放射性膀胱炎の診断は、問診、診察、尿検査によって一般的な膀胱炎の同様の検査を行い、問診によって放射線治療を受けたことがあるということから判断される場合が多いです。
尿検査では、主に白血球や細菌の有無を確認します。これらの特徴がみられる場合は細菌性の膀胱炎である可能性が高いと言えます。
膀胱鏡で膀胱の内部を観察する検査も行われます。膀胱粘膜面に存在する網目状の血管が異常に拡張している点などが特徴的です。

放射線治療の結果として血管の内面を覆っている細胞がダメージを受け、膀胱組織に血液を届けにくくなり、膀胱粘膜面にある血管が異常に拡張します。
拡張した血管はわずかな刺激で出血し、放射線が照射された組織は治癒しにくい状態になっているため自然に止血されない場合があります。
これによって血尿の症状が続く場合もあります。

放射線膀胱炎の検査では、血尿などの症状から放射線膀胱炎を疑いながら、その他の疾患が原因である可能性を排除していく必要があります。
そのために必要に応じて超音波検査、CT検査なども行われます。

主な治療方法

放射性膀胱炎の治療は、近年では高圧酸素療法が行われるようになっています。
これは気圧より高い2~2.5気圧ほどの高気圧にした酸素タンクに1.5~2時間ほど入り、これを30~60回ほど繰り返します。
高圧酸素療法では、大量の酸素が血中に取り込まれることで血流の悪い組織に多くの酸素が供給されます。
それによって組織の治りが早まる効果が期待できます。また放射線治療によって血流が悪くなり弱くなっている膀胱内の血管も修復され、再発を防ぐ効果も期待できます。
高圧酸素療法は2019年に有効性と安全性が示された比較的新しい治療法です。

この治療は基本的に経尿道的凝固術などを用いた止血を行った上で、第二段階の治療として行われます。
輸血や止血手術などを必要とする重症な放射性膀胱炎は割合としてそれほど多くなく、高圧酸素療法は重症な患者や再発を繰り返す患者を対象に行われる治療と言えます。
軽症の場合には自然治癒するケースもあります。