傍尿道腫瘤

初診に適した診療科目

傍尿道腫瘤はどんな病気?

傍尿道腫瘤とは、膣から尿道付近に生じる非上皮性腫瘍の一種を指します。
尿道粘膜下腫瘍、膣壁腫瘍などと呼ばれることもあります。腫瘤とは体や臓器の一部に生じた塊を指し、腫瘍性のものや炎症性のものが存在します。
また良性のものと悪性のものがありますが、症状がない限り治療は特に行われない場合が多いです。
傍尿道腫瘤は非常にまれな疾患と言えます。

尿道と膣は密接しているため、発生部位を明確にすることは難しいとされていますが、腫瘤の発生部位としては尿道前壁が最も多く、次いで尿道膣中隔、尿道側壁などに生じます。
腫瘤の種類としては平滑筋腫、線維筋腫、線維腫、血管腫、神経線維腫などが挙げられます。最も多いとされているのは平滑筋腫です。

膣内に自身が触れて分かるような腫瘤が生じることもあります。進行し、腫瘤が増大すると排尿困難などの症状が現れるケースもあります。

治療には外科手術による切除が検討され、発症部位によっては膀胱全摘除なども選択肢となります。

主な症状

傍尿道腫瘤を発症していても、特に自覚症状が現れないことも多いです。
腫瘤が経過とともに増大すると、それによって排尿に関わる部位を圧迫することで排尿障害を生じたり、腫瘤が悪性のものである場合は血尿、尿道からの不正出血、疼痛などが現れる場合もあります。
ただ高齢女性の場合、排尿障害は健康な人にもよくみられる症状で、早期に発症に気が付くのは困難なケースも多いとされています。
その他にも腟がんであった場合には閉経後の出血やおりもの、腟内のしこり、便秘、排尿時の痛みなどが現れる場合もあります。
自覚症状によって発見に至るケースもありますが、子宮頸がんの検診や、他の疾患の検査を目的とした内診や細胞診などから発見に至るケースも多いとされています。

傍尿道腫瘤は、局所再発も頻繁にみられる点が特徴です。治療後時間が経ってからの再発も多いため長期間の経過観察が重要です。また他の悪性腫瘍からの転移として発症している場合もあります。

主な原因

傍尿道腫瘤が発症する原因やメカニズムは現在のところ明らかになっていませんが、子宮や膣などの周囲臓器における平滑筋肉腫と何らかの関連があると考える説もあります。
また女性ホルモンとの関連性を指摘する説もあります。
発症する危険性が高まる因子としては、高齢であることやウイルス感染、脂肪や糖分の多い食生活などが挙げられます。
平滑筋肉腫の場合は間葉系細胞から発生するとされています。また腟がんの場合、通常表面をおおう粘膜から発生し、進行すると粘膜表面に広がる点が特徴です。

傍尿道腫瘤は基本的に希少疾患であり、個々の腫瘍の予後についても正確なデータはありません。
良性であるか、悪性であるか、どんな種類の腫瘤であるかは検査を行うことで診断に至ります。
傍尿道腫瘤は現状では症例も少ない疾患ですが、今後症例が蓄積していくことで臨床的背景が明らかになり発生母地について基礎的検討がされていくことが予想されます。それが有効な治療法の確立にも繋がると期待されています。

主な検査と診断

傍尿道腫瘤の診断には、問診、診察、超音波検査、CT検査、MRI検査、PETCT検査、病理検査などが行われます。
超音波検査やCT検査では主に腫瘤の有無を確認できます。MRI検査はさらに腫瘤について詳しく大きさや位置を把握するために行われます。
また同時に腟壁や尿道への浸潤の範囲なども確認できます。
MRI検査は特に平滑筋肉腫の診断にも有用とされていますが、変性を伴った筋腫との鑑別が困難な場合もあります。
PETCT検査は、他の臓器への転移の有無などを調べるのに有用です。
腫瘤の細胞を一部採取して、顕微鏡で詳しく確認する病理組織診断も行われますが、この検査は手術によって腫瘤の摘出を行った後に行われるケースも多いです。
必要に応じて血液検査、尿検査、腫瘍マーカーなども行われます。

検診などで細胞診を受けた結果、悪性であると疑われた場合には内診、コルポスコープ診、組織診などを追加で行い診断に至ることが多いです。

主な治療方法

傍尿道腫瘤の治療は、基本的には手術療法が中心となります。
傍尿道平滑筋肉腫の場合、放射線などの化学療法に対しては効果が期待できない場合が多いとされています。
手術では可能な限り切除縁を確保して摘除行うことが原則と言えます。
そのため膀胱尿道子宮全摘除術なども選択肢のひとつとなります。
これは悪性の軟部腫瘍は周囲の組織を圧排するように増大し偽被膜を形成しますが、偽被膜外にも悪性細胞が存在する可能性があるためです。
ただ膀胱温存などは本人の希望も反映されるため、経腟的な腫瘍摘除術などが選択される場合もありますが、腫瘍の残存や再発、転移のリスクなどを含めて慎重に検討する必要があります。

限局がんであった場合には手術療法や化学療法などが行われます。手術では同じく腫瘍の切除が基本となります。進行がんの場合、手術療法は有用ではないため抗がん剤による化学療法と放射線療法を併用する場合もあります。がんの病期や組織型、年齢、全身状態などを加味して治療方法が検討されます。