急速進行性糸球体腎炎 キュウソクシンコウセイシキュウタイジンエン

急速進行性糸球体腎炎はどんな病気?

急速進行性糸球体腎炎とは、腎臓のろ過装置である糸球体に炎症がおこる疾患で、糸球体腎炎のうちで数週から数カ月の短い期間に急速に腎機能が低下するものを指します。
糸球体は小さな穴が開いた血管でできた球状の腎組織です。
穴を通して血液をろ過する役割を果たしているため、糸球体に炎症が起きると体内に水分が蓄積した状態に陥ります。
糸球体腎炎のうち、急性と慢性のタイプに分類されますが、急性糸球体腎炎の場合、小児で1%、成人では10%程度の割合で急速進行性糸球体腎炎の状態に移行します。
平均発症年齢は65~70歳とされています。

糸球体腎炎は初期の代表的な症状としてはむくみ、尿量の減少、尿に血が混じるなどが挙げられます。
急速進行性糸球体腎炎の場合、進行が速く大半の糸球体が破壊されていき、その後腎不全に至るリスクが高い疾患です。
全体の約20%は死に至るとされる疾患で、回復した場合でも透析治療が必要になる場合が多いとされています。

原因としては細菌や真菌、ウイルスに感染する感染症や、血管の炎症、免疫疾患、薬剤、遺伝的な要因なども関係している場合があります。

主な症状

急速進行性糸球体腎炎は、初期段階ではむくみ、血尿が出現することや尿量が減少するなどの症状があります。
体内に水分が蓄積するためむくみは特によく見られますが、顔面やまぶたからはじまり、徐々に足のむくみが目立つようになります。
微熱、だるさ、食欲がないなどの全身の症状も初期に見られる症状のひとつです。
病気が進行すると、吐き気、息苦しさ、痰や便に血液が混じる、皮膚の出血、意識の低下なども出現します。
進行性でない、急性糸球体腎炎の場合は約半数の人が無症状とされています。

急速進行性糸球体腎炎に発展してすぐに現れるのが筋力低下、疲労、発熱の症状です。
食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、関節痛もよく見られます。
急速進行性糸球体腎炎は急激に進行して腎不全に至るケースが多いですが、腎不全を発症する以前にインフルエンザにような症状を経験していることが多いです。この段階では尿がほとんど出なくなります。急速進行性糸球体腎炎の場合、高血圧になるケースはまれだとされています。

主な原因

急速進行性糸球体腎炎を発症する原因は、腎臓から発生する原発性のものか、様々な病気から発生する二次性のものかによっても分けられますが、感染症の合併症として発症するケースが最も多いとされています。
細菌の一種であるレンサ球菌が咽頭、皮膚から感染し、伴って急性糸球体腎炎を発症するケースが最も多いです。
レンサ球菌を原因とする場合、2~10歳の小児に多く見られ、ほとんどはレンサ球菌に感染して回復した後に発症が見られます。
レンサ球菌の以外の原因としては肺炎球菌などの感染症、水痘などのウイルス感染症、マラリアなどの寄生虫感染症などが挙げられます。
これらのような何らかの感染から急性糸球体腎炎を発症した場合、感染後糸球体腎炎とも呼ばれます。

また急速進行性糸球体腎炎に発展する急性糸球体腎炎に限定してみると、異常な免疫反応に関係して発症するとされています。
特に血液の細胞である好中球が所有している酵素に対する抗体や、糸球体の基底膜に対する抗体(抗糸球体基底膜抗体)などとの関連性が明らかとなってきています。

主な検査と診断

急速進行性糸球体腎炎の診断には問診、血液検査、尿検査、腎生検などが行われます。
問診によって自覚症状を確認し、現れている症状から急性糸球体腎炎が疑われます。
尿検査では、血尿、蛋白尿、尿円柱などが見られます。
さらに血液検査では、腎機能が悪化することでクレアチニンの数値に上昇が見られ、血管に炎症を起こしていることから炎症反応は陽性を示し、貧血も見られます。ANCA、抗基底膜抗体など、自己抗体も多くの場合は陽性を示します。急速進行性糸球体腎炎を診断する際には、主に腎機能障害と尿検査から得られた結果を重視します。

進行した段階ではあまり行われないものの、必要に応じて腎生検が行われることもあります。腎臓の組織を採取して詳しく検査する方法で、主に半月体形成性腎炎を確認するために行われます。

血管炎以外に腎臓以外に広がっている場合は胸部レントゲン検査、CT検査なども行われます。これらの検査で肺炎や肺出血が見つかることもあります。

主な治療方法

急速進行性糸球体腎炎の治療は、腎臓だけではなく全身の強い炎症を治療するために、副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬などを使うことがあります。
病勢が強い場合にはステロイドを大量に使用する場合もあります。
また、腎機能が高度に低下している場合、透析治療も検討されます。透析治療は腎機能が回復すれば離脱できる可能性もあります。自己抗体やサイトカインを除去した他人の血漿と交換する治療も検討されます。基本的に急速進行性糸球体腎炎の治療を行っている場合は免疫力が低下する傾向にあるため、感染症の予防や治療を徹底することが重要です。

食事療法としては、初期の段階でタンパクや塩分の制限、カロリーの摂取が必要です。尿量が減少しているときには水分の制限も必要となります。

急速進行性糸球体腎炎の患者さん全体の約30%は透析治療が不可欠な状態になり、約20%は死亡します。
治療中の免疫力低下によって感染症を発症して死に至るケースも死因の半数に及びます。