毛皮炎(毛嚢炎) モウヒエン モウノウエン

初診に適した診療科目

毛皮炎(毛嚢炎)はどんな病気?

毛皮炎は毛嚢炎、毛包炎とも呼ばれ、毛穴の奥の毛根を包んでいる毛嚢と呼ばれる部分に炎症を生じる細菌感染症の一種です。
毛嚢に小さなキズができたことで細菌が入り込み感染によって炎症を引き起こします。
湿気や摩擦が生じやすい部位に発症することが多いとされています。

赤みのある発疹や周囲が赤い膿が溜まった発疹などが代表的な症状です。
単体で現れることもあれば複数の発疹が多発する場合もあります。首の後ろや太もも、臀部、陰部付近で多く認められますが、全身のどの場所でも生じる可能性があります。
初期の段階で軽い痛みを伴う場合がありますが、特に進行して重症になると隣り合う複数の毛嚢に炎症が広がって強い痛みや発熱など全身に関わる症状があらわれたり、膿疱が固いしこりとなり、強い赤みや痛み、圧痛、熱感を生じるケースがあります。

初期の段階であれば皮膚を清潔に保つことで回復が期待できます。1週間ほどで回復することが多いです。

主な症状

毛皮炎を発症すると、丘疹と呼ばれる赤みを帯びた発疹や膿疱と呼ばれる膿をもった発疹が現れます。
赤または白い吹き出物のような見た目が特徴です。これらは毛穴の位置と一致して現れ、単体でできる場合もあれば数個~数十個など多発する場合もあります。
毛穴が存在する場所であれば全身のどこにでもできる可能性があります。
症状が軽い場合には軽い痛みやかゆみを伴うことがありますが、その他に症状は現れません。首の後ろや太もも、臀部、陰部付近は特によく発症が見られる部位です。

毛嚢炎は悪化すると膿疱が固さのあるしこりとなります。これは以前せつとも呼ばれていました。このしこりははっきりとした痛みを生じ、圧痛や熱感も伴います。強い赤みも生じるようになります。さらに悪化すると複数の毛嚢が連結して炎症を起こし、強い痛みや発熱、体調不良などが症状として現れます。

感染部の毛は抜け落ちやすくなります。また一度毛皮炎を発症した毛穴は新しい吹き出物もできやすくなります。

主な原因

毛皮炎は小さな掻き傷や刺し傷が毛嚢にでき、そこから皮膚に細菌が入るこむことが原因で発症します。
代表的な原因菌には黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などがあります。
緑膿菌による感染もまれに見られますが、この場合は塩素処理が不十分な浴槽やジェットバス、などでの感染が多いとされています。
緑膿菌の感染による場合、温浴毛包炎や、温浴皮膚炎などとも呼ばれます。これらの場合入浴後6時間から5日以内に発症することがほとんどです。
また皮膚に日常的に存在する真菌であるマラセチアが毛嚢の中で増殖して炎症を起こすマラセチア毛包炎と呼ばれる種類もあります。

男性の場合、髭剃りの傷などが原因となる場合もあります。髭剃りの後に固い毛が丸まった状態で皮膚に入り込み、炎症を起こします。
このケースは細菌感染によるものではなく須毛部仮性毛包炎と呼ばれます。

まれな原因としては免疫を抑制する作用があるステロイド外用薬などを使用したことで肌のバリア機能が低下して細菌感染を起こすケースや、皮膚の不衛生を原因として細菌感染を起こすケースなどが挙げられます。

主な検査と診断

毛皮炎は、軽度の場合は特別な検査は行わずに医師が病変部位を確認することで診断される場合が多いです。
検査が行われるケースとしては重症であると判断された場合や、何度も再発を繰り返す場合などが挙げられます。このような場合には細菌培養検査が行われます。
膿疱の膿を採取して、培地に入れて培養して増殖させ原因菌を特定する検査です。
発疹に膿がたまっている場合は皮膚を切開して膿を出す処置が必要になる場合があり、それと同時にこの検査を行う場合もあります。

原因菌が明らかになれば、治療のための抗菌薬を選択するために薬剤感受性検査を必要に応じて行います。
細菌に対して効果のある抗生物質を調べる検査で、特定された細菌を抗生物質を含ませた培地で培養したりすることでその効き目について確認することができます。
抗生物質の効果が見られれば細菌の発育が阻止され、効果がなければ細菌が増殖します。この検査によって原因菌に効果のある抗菌薬を適切に選択できます。

主な治療方法

毛皮炎は症状が軽度であれば特別な治療は行わず経過を観察していれば自然に回復するケースが多いです。
その際皮膚を清潔に保つことが重要です。1週間程度で回復する傾向がありますが、それまでの間は抗菌成分配合の市販薬を使用してもよいでしょう。
ひげの生えている部分に生じた毛皮炎の場合、髭剃りを一度中止して様子を見ることも回復を早めるために効果的です。

医療機関を受診した方が良いケースとしては赤み、痛みが強い場合や軽快せず悪化していく場合などが挙げられます。
原因菌を特定し、それに適した抗菌薬の外用や内服による治療が行われます。1種類の抗菌薬で効果が認められない場合は薬剤感受性検査などを元に抗菌薬を変更する場合もあります。
近年ではかつて効果が認められていた抗菌薬に対し、耐性をもつ細菌なども多く見られます。ブドウ球菌はその代表的なものです。

また毛嚢に膿が溜まっている場合には、皮膚を切って膿を出す処置も必要に応じて行われます。