むち打ち症
むち打ち症はどんな病気?
むち打ち症とは、頚部外傷の局所的な症状の総称です。外傷性頚部症候群(頚椎捻挫・頚部挫傷)、神経根症(頚椎椎間板ヘルニア・頚椎症性神経根症)、脊髄損傷などを幅広く表しており、医学的にむち打ち症という疾患はありません。
交通事故や転倒などの衝撃によって頭部が大きく振られることで、肩こりや首の痛みなどの症状が現れます。
これは首に踏ん張ろうとする大きな力がかかり、突発的に強い力が加わるためです。
またこのような衝撃によって脳にまで影響が及び、痛みの感じ方、姿勢や眼球の調節などが変化することも発症の要因となる可能性があります。
交通事故以外では、ラグビーなどのスポーツ中の事故でも発症するケースが多く見られます。
むちうち症を発症した場合、2~4週間は安静を保つことで自然治癒が期待できますが、痛みが慢性化して長く続く場合もあります。
また安静を保つ期間が長すぎるとかえって回復を妨げるケースもあるため、2~4週間の安静の後は普段通りの生活を心がけることも大切です。
主な症状
むち打ち症の代表的な症状には首や肩の痛み、首や肩が動かしにくくなる、腕の知覚異常、顔の違和感、脚のしびれや知覚異常、後頭部やうなじの痛み、めまい、耳鳴り、難聴、視力障害、目の痛み、声枯れなど、その病型によって幅広く症状が現れます。首の骨である頚椎の関節の損傷にはいくつかの種類があります。
捻挫型と呼ばれるタイプは頸椎捻挫の7割以上を占めます。椎間板に入った小さなヒビや、じん帯に小さな断裂ができることで首や肩の痛みや動かしにくさを生じます。
神経根型の場合、上下の頸椎に神経が挟まれることで首の痛みや腕の知覚に異常を生じます。
この場合、咳やくしゃみによって症状を強く感じます。後頭部や顔面に違和感や痛みを生じることもあります。
脊髄が損傷される脊髄型では、首よりも脚の症状が目立ち、歩きにくくなる、尿や便が出にくくなるなどの症状が現れます。自律神経系の働きに異常を来すバレ・リーウー型では、めまい、耳鳴り、難聴、視力障害、目の痛み、声枯れなど自律神経に関連する多彩な症状を呈します。
主な原因
むち打ち症は自動車による追突事故、ラグビーなどの接触の激しいスポーツ中の事故などを原因に発症します。まれなケースでは整体やヨガ、ストレッチなどによって適切でない動作によって生じることもあります。
強い衝撃を受けて頭を大きく振られ、首が鞭にようにしなることからむち打ち症と呼ばれています。
頸椎周囲の筋肉や靱帯、神経や血管などの組織に損傷を受けた状態をまとめてむち打ち症と呼ばれています。
症状の程度や現れ方は追突された方向や速度によっても異なりますが、頚椎の関節の損傷やときに頚椎骨折などを生じるものです。
むち打ち症はレントゲンなどの画像診断で異常が認められない場合も多く、さらに患者自身が原因に心当たりがないというケースもあります。
上記のようなアクシデントを原因として発症する以外にも慢性的な疲労症や難治性の頭痛、めまいなどが要因となっているのではないかとする説もあります。
頸椎椎間板ヘルニアや脳脊髄液が漏れ出したことでむちうち症の症状が現れた例もあります。
主な検査と診断
むち打ち症の診断には問診、レントゲン検査、CT検査、MRI検査などが行われます。問診では自覚症状に加えてむち打ち症の原因となるような事故や、首に強い衝撃が加わるようなできごとがあったかについて確認します。
確定診断のためにはレントゲン検査、CT検査、MRI検査などによる画像検査が重要です。骨折や脱臼、ヘルニアなどを生じていないかを確認することができます。
一方椎間板やじん帯に小さな損傷ができたことで症状が現れているケースでは、これらの画像診断では頸椎に異常が確認できない場合もあります。
また症状が1ヶ月以上継続しているような場合には再度頚椎の検査を行う場合もあります。その際椎間板の脱出などが発見されるケースもあります。
むちうち症の中でも外傷性頚部症候群、神経根症、脊髄損傷などいずれの疾患に該当するのか専門的に診断を受ける必要があります。むち打ち症が疑われる症状がある場合は整形外科で検査を受けるのが一般的です。
主な治療方法
むち打ち症の場合、初期段階であるかある程度時間が経過した段階かによっても治療方法が異なります。初期の段階では患部で炎症が起きている可能性が高いためまずは安静を保つことが優先されます。
この時マッサージなどは行いません。患部を冷やす、消炎鎮痛剤などを使用するなど痛みを和らげる方法も効果的です。
コルセットのような頸椎カラーを使用するとより首を安定させることができます。
数週間経過して症状が落ち着いた頃には温めて血行を促す方法も効果的です。簡単な首の運動などによっても血行の改善が期待できます。
この時安静にしている時間が長すぎると回復の機会を逃してしまったり慢性化してしまう可能性があるため、徐々に日常生活に復帰していくことが重要です。
回復期になれば残った痛みを取り除くために適度な運動も効果的です。ウォーキング、ストレッチなどで柔軟性や可動性を取り戻します。
根本治療が必要な疾患が原因となっている場合には、それぞれに適した治療が行われます。